□日常

 あの日から一週間経つ。
 いままでとさして代わり映えのない日常。
 柾輝にはまだ木田と将のことは話していない。
「……各自その心構えで望んでください」
 玲の声でみんながざわめき始める。
 これで今日の練習は終わり。
「翼、あれあれ」
 柾輝が指差すのは天城の方。
 何かと思っていると、渋沢が声をかけるところだった。
「天……」
「天城!」
 渋沢が声を掛ける前に将が先に声を掛けた。
「一緒に帰ろう!」
「好きにしろ」
「キャプテン!何してるんッスか、ちょっと聞いてくださいよ、鳴海のやろーが……聞いてますか?キャプテン」
 そんな渋沢に藤代が愚痴を零す。
 選手の愚痴に付き合うのもキャプテンの仕事である。
「わかった。それで」
 柾輝と翼は顔を見合わせて噴出した。
「サイコー」
「かわいそー」
「何がだ?」
 話し掛けてきたのは内藤。その後ろに木田が立っていた。
 見るとどうしても聞きたくなってしまう、一週間前のこと。
 翼はいつも向けるはずの視線を再び渋沢のほうへ動かすことで、それを誤魔化した。
「渋沢。天城に話し掛けようとして風祭に遅れをとったんだよ」
「そりゃ可哀相だ」
「さらにあれ」
 柾輝の指差す方を見て、内藤も笑ってしまう。
「サイコー」
「……………」
 木田は何も言わない。
 翼は柾輝に視線を移すと、柾輝は小さく笑みを浮かべた後、内藤に再び向き直った。
「あ、内藤。話あんだけどさぁ」
「話?」
「そう、ちょっとこっち来いよ」
 柾輝は内藤を引っ張っていった。
 少し前の自分なら、必死にそのうれしさを前面に出さぬようにしていたのに、そのうれしさがない。
「……………」
「……………」
 話がない。
「木田って、将と付き合ってるの?」
 口を出た言葉は取り返しがつかない。
「えっ……なんで!?」
 なんで知っているんだ!?とでもいうような口ぶりと動揺に翼は喉が詰まったように感じた。
 それなのに、いつも動く口はいつものように憎まれ口を叩くわけではないが、動いてしまっていた。
「いつから?」
「椎名、……」
「付き合ってどれくらい?」
 次から次へと疑問を口にすれば、口下手で喋ることが僅かに遅い木田は何も言えなかった。
「柾輝ー、翼ー?帰ろうぜ」
 木田が答えるよりも、翼が新たな疑問を口にするよりも先に六助が翼を呼んだ。
 柾輝も戻り、翼は木田を振り返ろうともせず、六助の元へと急いだ。



⇒あとがき
 原作沿いになってみる。
20020414 カズイ
20070306 加筆修正
res

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