□馬鹿

 英士は何を話すわけでもなく、翼の話をただ聞いていてくれた。
 自分が木田のことを好きだと言うこと。
 その木田が将と一緒に仲良さげに喫茶店に入っていくところを見たこと。
 柾輝が実は将を好きだったこと。
 気づかない自分の馬鹿さ。
「……本当、馬鹿だよね」
 自嘲気味に思わず呟く。
「馬鹿でいいんじゃない?」
「……え……」
 目の上のハンカチをのけてみた英士の顔は笑っていた。
「それいったら俺と結人なんて一馬馬鹿だよ」
「なにそれ、笑える」
 木田に失恋したってこと、忘れられられそうだ。
「椎名はえらそうに笑ってるか憎たらしいこといってなきゃね」
「褒めてんの?貶してんの?」
「両方。とりあえず、一馬が心配だしそろそろ帰るよ。今度の練習のときもそんな感じのほうがいいよ」
「……そう?サンキュ」
 英士はそっと立ち上がり、空を見上げた。
「木田と風祭が仲良さそうにしてたからって付き合ってるとは限らないんじゃないかなぁ」
「そんなこと言ったら期待しそうじゃねぇか」
「していいんじゃない?」
 不敵な笑みを浮かべて言い残し、英士は歩き出した。
(本当、そうかも。サンキュ、郭)
「あ、ハンカチ」
 返すのは今度の練習日でいいかなと思い、翼も公園を後にした。



⇒あとがき
 英士活躍。短い(汗)
20020414 カズイ
20070306 加筆修正
res

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