□その飴苺味
ころんと口の中で転がる飴玉。
それは信頼できるわけではないがまぁ自分の命など取りはしないと判っている銀髪の男から貰ったものだ。
自分とはあまりにも身分の違う第二皇子の学友で、爵位あるアスプルンド家の長男坊ははじめてあったときからルルーシュ命だと豪語している。
当のルルーシュはただアホだとしか見ていないのが少々かわいそうではある。
「ルルーシュ!」
にこやかに部屋の扉を突然開けて入ってきたのは第三皇子。
ルルーシュはその顔を見た瞬間、甘い至福の笑みを一気に歪めた。
かなり嫌そうな顔に、第三皇子クロヴィスは不服そうに眉を寄せた。
「折角兄が来てやったというのにその顔はなんだ」
「別に……何でも有りませんよ」
内心舌打ちしたいのを堪え、窓際から離れ、チェス板の置いてある小さな机に向かった。
この兄が来るときは決まってチェスの挑戦をしに来るときだ。
ルルーシュはさっさと帰って欲しいがためにさっさと始めようと椅子に座った。
「おや、何か食べているのか?」
「飴ですよ」
「飴?」
首を傾げながら、クロヴィスは部屋の中へと入ってきた。
「ロイドがくれたんです」
「ロイド……ああ、兄上の」
思い出したクロヴィスは、ルルーシュに顔を近づけた。
「な、なんですか」
「苺だな」
「ええ」
にこっと笑うクロヴィスに、ルルーシュは嫌な予感を覚えた。
「兄上?」
平静を装い、ルルーシュは口を開いた。
クロヴィスはじっとルルーシュの瞳を見つめる。
一体なんなのだと思いながら、ルルーシュはその瞳を受け止める。
「隙あり!」
「は?」
クロヴィスはそう言うと、ルルーシュの唇に己の唇を重ねた。
突然の事に、ルルーシュは目を見開いた。
咥内に侵入した舌が中で飴玉を転がして遊ぶ。
「あ、ふ……んんっ」
それがキスだと知っていても、幼いルルーシュに経験があるはずもなく、息苦しさにぎゅうっとクロヴィスの服を掴む。
その手が震えていることに気づき、クロヴィスは目を細めた。
「ん、はっ、ぁ……」
唇を離すと、ルルーシュはずるりと椅子から落ちそうになった。
その身体を支え、クロヴィスは唇を嘗めた。
「甘いな」
「……ぁに、うえ」
息を乱しながら、ルルーシュがクロヴィスを睨む。
「なにを……して……」
「飴を貰っただけだよ」
ほらと舌の上の飴を見せれば、ルルーシュは目を伏せる。
ため息を吐きたいが、息が苦しい。
「キスをするときは鼻で息をするんだ。ルルーシュは無知だなぁ」
優越感に微笑むクロヴィスにルルーシュは殺気を覚えた。
「あ・に・う・え!」
「たまには僕にも花を持たせてくれよルルーシュ」
そしてクロヴィスはルルーシュに唇を重ねた。
アホか。
そう思いながらルルーシュはその口付けを観念して受け入れた。
⇒あとがき
アホは私だぁぁぁ!!!
20070422 カズイ