□闇と桜と罪と罰

 夜の闇に溶けるように咲く狂い咲きの桜。
 気がついたらそこに立っていた。
 何故だろうと考えるが思い出せない。
 ついさっきまで別の場所に居たような感じがする。

 俺は枢木朱雀。
 大学に通う普通の大学生で、両親は健在。

 なのに何でだろう、一人だと思ってしまうのは。


「綺麗だな」
「へ?」
「サクラだ。馬鹿」
 声の方を見ると、艶やかな黒髪の少年が立っていた。
 年は小学生くらいだろうか。
 ほっそりとした身体のシルエットが闇に溶けている。
 街灯の下まで彼が近付いてくると、ようやく彼の顔がはっきりと見えた。
 日本人とはとても思えない色素の薄い肌。
 こんな瞳があるのかと思うほど、綺麗な紫。
 俺はそんな瞳を見たことがない。
「君、日本語上手いね」
「……知っていたからな」
 遠い目をする少年だ。
「どこから来たの?」
「神聖ブリタニア帝国」
 はて、そんな国はあっただろうか。
 一応大学生をしているから外国の名前はある程度知っているつもりだった。
 だけど帝国と名のつく国があっただろうか。
 神聖とつくのだから、何かの宗教国家かもしれない。
「……思い出せないんだな。俺は思い出したのに」
 寂しそうに少年は目を伏せた。
「俺への罰か?枢木スザク」
「罰?」
 彼は俺になにもしていない。
 それよりも、俺は彼の名すら知らない。
 そらば何故、
「どうして俺の名前を?」
 少年は何も言わず、ただじっと俺の瞳を射抜く。
 透き通るような紫は、吸い込まれそうだ。
「俺はお前の大切な人を殺した」
 少年は淡々と言う。
「お前は恨んでいるのだな。だから俺という存在を消した」
「意味がわからないよ。大切な人って……両親は健在だよ?」
 それ以外に大切な人って特に……
 大体、俺の周りで殺された人なんて居ないはずなんだけど。
「……お前がそれで幸せならいい」
 少年は悲しげに顔を歪めた。
『ルルーシュ様〜』
 遠くから誰かを呼ぶ声。
「ああ、時間だ」
 少年はその声に反応して歩き出す。
「待っ……」
『ルルーシュ様ぁ、もう勝手に逃げ出すのやめてくださいよぉ』
『すまない。ちょっとこの桜が気になったんだ』
 流暢な英語。
 その間に聞こえた"桜"という単語。
「君は……何者?」
「その答えはそのうち知れる。そうだな……もしお前があの頃を思い出して、そして俺を許すと言うのなら会いに来い」
「わからない……わからないよ」
「僕はルルーシュ。思い出さなくてもいい。だから―――覚えておけ」
 不敵に笑い、隣に立つ人に声をかける。
『行くぞロイド』
『はいは〜い。じゃあね〜』
 闇に溶けていく、二つの影。
 街灯の下には狂い咲きの桜と俺だけが残った。

「ルルーシュ?」

 音にしてみると、不思議と懐かしくて、胸が苦しくなった。
「あれ?」
 溢れ出す涙はとめどなく
「どうして……」
 激しいほどの憎悪
「苦しいよ」
 そして相反する愛しさ。
「君は誰?」
 少年とは違う、ルルーシュ?

 桜。
 綺麗なピンク。
 それは彼女の色。
 ユフィの―――

「ユフィ?」

 狂い咲き。

「う、あ……ああ……」

 真っ赤な僕の手。
 大事で、守りたくて、愛しくて。
 そんな君を僕が―――


 ねぇ、罰せられるのは、だぁれ〜?



⇒あとがき
 一番混乱しているのは誰でもない、この私だ!!
 スザルルでパロディやりたいなぁって思ったのに、なんか出来上がってみるとルルスザっぽい上にこの世界のルルーシュさんはロイドさんが掻っ攫っていってますぜ!?
 ロイルル好きだね、私。←結論それ!?
20070420 カズイ
res

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