□Lelouch

※AMAKUSAパロと見せかけた何か。
C.C.ポジションが夢主なので夢として楽しみたい方は名前をこちらで登録してお読みください。


「……似ているな」
 ふと、教科書を見下ろ男の声に同じ生徒会室に居たルルは作業していた書類から顔を上げた。
「どうしたんだ?突然」
 長机の反対側から男を見れば苦笑を浮かべ、教科書をルルに見せるようにひっくり返した。
「悪逆皇帝ルルーシュだ」
「ああ、それか」
 微笑むカラー写真は確かにルルによく似ていた。
 長い年月を経たこの時代であっても知らないものはいないであろうほど有名な名前とその代名詞である。
 彼の本当の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 先代のシャルル・ジィ・ブリタニアを殺害し皇帝となった後、彼は数々の無謀な革命を起こし、世界を支配した。
 だがそれはたった二か月の出来事―――彼は英雄ゼロによって殺されたからだ。
 世界は悪逆皇帝ルルーシュから解放され今の平和な世界が今も続いている。

「当然だろう、遠縁とは言え私はブリタニア皇家の血を引いているんだから」
「そうだったな」
「それを言ったらお前だって似てるだろう。藤堂鏡志朗に」
「それも仕方ないことだな」
 苦笑する男は名を藤堂鏡と言い、名前すら類似していた。
 ただし、写真に写る姿よりは若干幼さを残している。
 それは彼がこの生徒会の会長でありルルとはとても見えないだろうが同級生だからである。
 鏡の老け顔はどうやら遺伝のようなものなので、鏡自身も少し気にはしているらしい。
 ちなみに顔が似ているのはルルと同じく藤堂鏡志朗の末裔だからだ。

―――ズッ……

「「!?」」
 不意に遠くから聞こえるような音に二人はまたかと言う顔で慌てて椅子から立ち上がり、椅子を崩して床に倒す。
―――ゴゴゴゴッ
 動作の遅いルルを先に長机の下に隠れた鏡が引っ張った。
 ぐらぐらと揺れる建物自体にあわせるように資料保管庫として使っているロッカーがガタゴトと揺れる。
「今日のは揺れが酷いな」
 ルルの身体を守るように抱え込むような姿勢を取った鏡はふぅとため息を吐いた。
「っ、そうだな」
 生徒会室に居る時は大抵同じ姿勢になるため流石に叫ぶことはなかったが、ルルは平静を装うことで精いっぱいだった。

 三か月ほど前から続くこの謎の地震はいつ起きるかは不規則だったが、一行にやむ気配を見せない異常気象として今世界中が注目している。
 震源地は合衆国日本、和歌山県だ。
 ルルたちが通うこのAF学園分校はその和歌山にあり、震源地故の被害は甚大だった。
 生徒会役員の一人、不破朱雀は一人で古いアパートに住んでいたのだがその古さゆえに一番最初の地震で家が崩れた。
 現在は近所のみかん農園で居候がてら作業を手伝って生活しているらしい。たまにみかんの差し入れがある。
 室内の家具や荷物は地震対策が取られ、部屋の隅には非常用の荷物も備えてある。
 校舎の作りがいくら頑丈とはいえ、余談は許さない状況である。

「いずれは俺たちも疎開しなくちゃいけないんだろうな……」
「……ああ」
 元々東京にある本校から来ている朱雀や、その幼馴染の紅月夏鈴等は本校へ戻れば良いだけだろうが、ルルや鏡は親戚を頼りバラバラになるのは必須と言っていいだろう。
 三か月前の生徒数と今の生徒数ではすでに数が半分に激減しているのが現状だった。
 もともとAF学園は学園敷地内に寮を有しており、生徒たちは特別な理由がない限りそこで暮らしている。
 朱雀がどんな特別な理由を持っているかは本人が語らないので知らないが、夏鈴の場合は身体があまり丈夫ではないため医者を招いた別邸で暮らしているからだ。
「……鏡っ」
「なんだ?」
 いずれ離れ離れになってしまうのなら、今言えるときに言ってしまおう。
 折角貴重な二人きりなのだから。

 だがルルの言葉はその後続くことはなかった。
 不意に開いた生徒会室の扉から入ってきた生徒の所為だ。
「ルル姉!」
 切羽詰まった声が呼ぶのはルルだ。
 ルルの黒髪と違い、淡い茶色の髪をした少年―――千寿ロロはルルと鏡の一つ下の学年の一年生で、ルルの従弟だ。
 その後ろには涼しい顔で笑みを浮かべる女子生徒―――篠崎加奈子が立っている。
 だが恐らくは彼女もロロと共に慌ててこの生徒会室にやってきた口だろう。
 彼女は常に笑みを絶やさず、機械人形(マシンドール)と言うあだ名を付けられているほどだ。
 二人ともこの生徒会の役員で、加奈子に至ってはルルのクラスメートでもある。

「おや、また鏡様に助けていただいたのですか?」
 加奈子が人に様をつけて呼ぶのはごく普通のことだ。
 そして敬語であることも。
「心配して損した気分だよ。鏡先輩は相変わらずルル姉を抱きしめるのが好きですね」
「ルルは動作が一々遅いから咄嗟にな。それに長机の下は意外に狭いんだ」
 肩をすくめたロロは、後半厭味のように言ったのだが鏡には通じなかったようだ。
「鏡先輩の図体がでかいからですよ」
「遺伝だからしょうがないだろう」
 苦笑する鏡はルルを解放し、長机の下から抜けだす。
 鏡の手をかり抜け出たルルは加奈子の後ろ、開けられたままの扉の向こうにいた少女を見た。

 同じ学年の冴島絵里加。中・高と一緒の学校だから名前くらいは知っている。
 いじめられているのだと言う噂を耳に挟んだような気もするが同じクラスであるはずの朱雀や夏鈴から詳しい話を聞いてはいない。
 それに二人も絵里加の話をしたことはなかった。
 同じ学年に居ながらもほぼ知ることのない少女にルルはなんとなく声を掛けた。
「どうかした?」

「―――呼んでる」

 眼鏡の奥の瞳が仄暗く光った気がした。
「え?」
 晴れていたはずの空が突然曇り、強い稲光が走った。
「な、なんだ!?」
 眩しい金色の光。
 薄暗い世界に絵里加の瞳が同じ金色に輝いたように見えた。
「"行こう―――愛しき私の魔王"」
 差し出された手。
―――ズッ……
 不吉な音がまた響いた。
「ルル姉!!」
「ルル様!?」
 かつてない激しい揺れが生徒会室を襲う。
 廊下に立つ絵里加の身体が崩れ落ちて行くのがルルの視界の端に写った。
「鏡っ」
「ルル!」
 近かったはずなのに、伸ばした手が届くことはなかった。

  *  *  *

「……最後の地震が終わったな」
 揺れが治まった校舎の中、激しく乱れた机から夏鈴を抱き抱えて庇っていた朱雀はぽつりと呟いた。
「最後?」
 夏鈴は不思議そうに朱雀の顔を仰ぎ見る。
 夏鈴の赤い髪をくしゃりとかきまぜ、朱雀は笑う。
「ああ。最後だ」
「どうしてわかるの?」
「知ってたからさ。小さい頃からずーっと……今日の日のことをさ」

 遠い目をした朱雀に、夏鈴は視線を落とした。
 幼い頃から―――それこそ生まれたときから傍に居たと言うのに、自分は彼を理解していないのだと叩きつけられた気がしていた。

「どこから話せばいいかな……」
「話してくれるの?」
「ああ。これ以上夏鈴に嘘つくの嫌だし、それに……」
 朱雀は夏鈴の身体を強く抱きしめた。


「ルルたちはもう帰ってこないから」


⇒あとがき
 オリキャラだらけ〜気にしない〜♪←Σ気にしろ
 とりあえずAMAKUSAパロと見せかけたただのオリジナルストーリーです。
 藤ルルで、それでいてルルーシュに優しい世界を作る!!!が目標だったはずです(苦笑)
20081124 カズイ
res

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