□道化師の見せる夢

 俺にはナナリーしかいない。
 ロロは弟じゃないし、黒の騎士団は駒。
 俺は……


「迎えに来ましたよぉ。我が君ぃ」
 すっかり消沈していたルルーシュの部屋にどこから侵入したのか一人の男が立っていた。
 警戒するカレンや怯えるCCのことも一切気にしていない馬鹿に明るいテンションにルルーシュはゆっくりと顔を上げた。
「ロイ、ド?」
「はぁい。あなたのロイドでぇす♪」
 けらけらと笑いながらロイドはルルーシュに歩み寄る。
「ちょっと」
「君、邪魔だよ」
 ロイドはカレンをすっと目を細めて睨むと、再び笑顔でルルーシュの前に跪いた。
「あっは、ランスのパーツが余計なマネして遅くなっちゃいましたぁ」
「……本当に、ロイド?」
「もっちろんです。我が君との衝撃にして感動的な出会いから詳細に語ってみたいところですけどぉ、あんまり時間ないんですよねぇ」
「ロイド、ナナリーが」
「我が君の宝はちゃぁんと守りましたよ」
「え?」
「んーでもちょっと今面倒なことになってるんでぇ、一緒に誘拐しにいきませんかぁ?」
「生きてる?」
「はぁい♪」
「でもナナリーちゃんはフレイヤで……」
「偽装だよ。そんなこともわかんないの?」
 温度差の激しい蔑むような視線にカレンは唇を噛んだ。
「生きてる……ナナリーがっ」
 嬉しそうに笑うルルーシュにほっとしたが、それを取り戻したのは自分ではなく目の前の道化師のような男だと言うのがカレンの癇に障った。
「実は僕お財布と一緒に来てるんですよねぇ〜」
「お財布……そうか、あいつがナナリーを……」
「はぁい。自分は前に出ずに我が君の宝を我が君との戦いの駒―――盾にしようとしてるんですぅ」
 残念そうに眉尻を下げ、気分が降下したルルーシュの瞳に宿った仄暗い炎を煽る。
「ねぇ、我が君ぃ。こんな騎士団すぐにお財布の手に転がされちゃいますよ?今のうちにいらない尻尾は切っちゃいましょ?」
 ルルーシュはじっとロイドの瞳を見つめ、そして手を差し出した。
「連れて行け」
「御心のままにぃ♪」
 ルルーシュの手に口づけを落とすと、立ち上がってルルーシュの手をそのまま引いた。
 大切に、優しく扱う姿は自分に対する態度と180℃は間違いなく違う。いや、次元すら超えるほどかもしれない。
「……お前たちも、来るか?」
「私はご主人様に着いていきますっ」
「私は……」
 勇気を振り絞るように立ち上がったCCと違い、カレンはロイドに睨まれながら視線を逸らした。
「日本を取り戻してくれるなら」
 ぽつっとそう言った。
 ああ、でもこれでは誤解されてしまうとカレンはロイドの視線を無視してルルーシュを見た。
「ルルーシュの……ゼロの居ない黒の騎士団じゃそれは出来ないから、私はあなたについて行くわ」
「……ありがとう、カレン」
 判ってくれたとカレンはほっと息を吐き、歩きだしたルルーシュの後を追いかけた。
 途中、扇の呼びだしもあったがその時にはすでにカレンは紅蓮聖天八極式の中に居た。

  *  *  *

『この後、どうするの?』
 扇から連絡があったと報告したカレンにルルーシュはくすりと笑った。
「皇帝を討つ。シュナイゼルは後回しで構わない」
『わかったわ。私はあなたを信じる。あなたの力は本当だし……何より後ろが怖いわ』
「後ろ?ロイドのことか?」
『私は彼ほどあなたに忠誠を誓えない。だけど、信じるから……お願い、信じさせて』
「ああ、任せておけ。私には覚悟がある。大丈夫だ」
 カレンはルルーシュの言葉にくすりと笑い、それじゃあと一端通信を切った。
 カレンの後ろにいたおどおどとした様子のCCも
「ラクシャータが作ったものに乗るのは癪なんでぇ、本国に着いたら僕に我が君専用機を作らせてくださいねぇ」
「別に構わないが、お前は私の騎士だろう?」
「ああ我が君のなんとお優しい言葉!それならいっそガウェインと同じにして僕と我が君の専用機にしましょう♪」
「任せるさ」
 くすっとルルーシュは笑い、パネルに指を這わせる。
「さあ、行くか」
 人が集まり始めた格納庫で蜃気楼が動き出した。
「ねぇ我が君ぃ」
「なんだ」
「早く皇帝もお財布も殺しちゃいましょーうね」
「ああ、そうだな」
「あっは〜。大好きでぇす♪」
「おわ!?」
 突然抱きついてきたロイドにルルーシュのコントロールが狂う。
『ルルーシュ、藤堂さんが月下に乗り込む前に急がないと!』
 突然入った通信にルルーシュは慌てて指を走らせる。
 飛び立った蜃気楼が居た場所には複数の遺体が残されていた。
 それが故意によったものなのか、偶然だったのかはロイドにしかわからない。

(僕は我が君が居れば他の人はどうでもいいんですよぉ♪)

 後の世に悪逆皇帝と呼ばれるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの傍らには、優しく、冷たく、世界を見つめる道化師の姿があった。
 それはまだ道化師が見せる夢の序章に過ぎなかったのかもしれない。



⇒あとがき
 狂愛ぃぃぃぃ!!!と頭を抱えながら書かせていただきました。
 と言うか大分時間が空きすぎてTURN19ってどんな話やったっけー(;´д`)ってなりました。
 もう本当仕事が遅くてごめんなさい!
 でもロイルル大好きだ!!書かせてくださってありがとうございます!
20090714 カズイ
※本館のリクエスト
res

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