□智将を感じる悪漢

 ルルーシュはゼロの仮面を外し、一人鍵の掛かった私室で椅子に深く座り込み考える。
 長い足を組み、物憂げに視線を落としながら。
(おかしい)
 眉間に皺を寄せゆっくりと目を閉じる。
 諜報に関してはディートハルトに一任していた。使っていくうちにあの男がどれくらい優秀かは判る。そのゼロに対する異常なまでの崇拝は抜きに考えても集まる情報の詳しさに若干の影が落ちる。
 恐らくはまだ誰も気づいていないとても小さな針のような影だ。
 机の上の書類に視線を這わせ、その一枚を手に取る。
「まるで誰かの意図が絡んでいるようだな」
 ルルーシュはなんとなくその"誰か"に辿りつきそうな気がしたが、頭を横に振った。
 だが確かに脳裏に過った。
 穏やかな笑みの仮面に隠した、眠っていた獣。
「まさかな」
 必死に言い聞かせる。

 たとえ一瞬でも、誰よりも厚い仮面を被った自分を一番のお気に入りの弟だと言った兄―――オデュッセウス・ウ・ブリタニアがルルーシュをゼロだと気づき、遠まわしに手をまわし手伝っているなど……
「……有りえない幻想だ」

「何がだ」

「っ」
 独り言だったはずの言葉に質問が返ってき、ルルーシュは一瞬目を見張った。
「……CCか」
 どうやらシャワー室に居たらしいCCは髪に水気を帯びたままシャツ一枚だけ羽織った状態でルルーシュの視界に写った。
 もう何度注意しても聞かないCCにルルーシュは髪はちゃんと拭け、服はきちんと着ろと言う言葉を紡ぐことをやめていた。
「また何か問題でもあったか?」
 その言葉に心配する気配はなく、ただ興味で聞いていることは確かだった。
「大した問題じゃない」
「だろうな。言葉の割に楽しそうな表情をしている」
「楽しそうな?……ああ、そうかもしれないな」
 幻想だと言いながら、心のどこかでは確実にそれは核心へと変わっていた。
「知っているかCC。ブリタニアには目覚めさせてはいけない獣がいる」
「ほう……初耳だな」
「普段はナマケモノを装ったその獣はとても獰猛だ。……どうやら私は8年前、それを目覚めさせていたらしい」
 CCはにやりと笑っていた表情を穏やかな笑みに変えた。
「そうか」
 ソファの上のチーズ君を拾い上げ、その腕に抱く。
「その獣はお前の味方と言うわけか」

「すまない、ルルーシュ。必ず私は―――」

「……恐らく、な」
 そっと指を額に這わせ、目を細めた。
 かつて触れた唇を思い出すようにどこか遠くを見つめながら―――



⇒あとがき
 ちょっと閑話休題的なお話を書いてみました。
 続き書ける日はいつだろう(´・ω・`)
20090123 カズイ
res

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