□夕闇色

※LOVELESSパロ

「……ただいま」
 ゆらりと僅かに紫がかった黒い尻尾が動いた。
「ルルーシュ?」
 声を掛けると、ばっと振りかえる。
 綺麗な透き通るような紫色を目一杯見開き、驚いたように、帰ってきた藤堂を見る。
 ぴんと伸びた尻尾と同色の耳。
 尻尾は構えと言うように揺れているが、視線は目があってどうしようという感じがある。
 ルルーシュという少年は元々隣の家に預けられている少年だ。
 隣人夫妻が一週間旅行に出ると言うので預けられているだけであり、本来彼はこの家の住人でも、隣の家の住人でもない。
 藤堂はどうするかと試案したが、ルルーシュを相手にする良策は生憎と浮かばなかった。
 道場でものを教える立場として沢山の子ども達と触れ合うが、ルルーシュのようなタイプは藤堂にとって初めてだった。
 それでもこの綺麗で愛らしい少年に少し心を開いて欲しいと言う思いはあった。

 とりあえず何をしていたのか聞いてみよう。
 そう思い、藤堂は口を開いた。
「スザクなら"友だち"の家に行った」
 構って貰えないと思ったのか、ぷいっとまた窓の外に視線を向ける。
 ルルーシュはどこか読めない。
 藤堂は吐き出したいため息をぐっと堪えた。
 スザクと言うのは隣人の息子であり、ルルーシュとは親友である。
 藤堂とは道場を通じて師弟の関係でもある。
 友達と言うのだから、ルルーシュは置いていかれたのではなく、自分から遠慮したのだろう。
 この少年は特別だった。
 プライドが高く、甘えるのが苦手。
 誰かと触れ合うことが好きなくせに、どこか遠慮する。
「ルルーシュ、何を見てるんだ?」
 とりあえず隣に胡坐をかいて座り、外を見てみる。
 ちょうど夕陽が沈み始めた頃だった。
 時計をチラッと見れば、そろそろスザクも帰ってくることだろう。
 ルルーシュの答えを待ちながら、じっと夕陽を見る。
「綺麗だな」
 沈んでいく夕陽が徐々に紫色を帯びてくる。
「お前と同じ色だ」
 髪を撫でる。
 柔らかな耳がぺたっとなり、思わず笑った。
 ルルーシュは藤堂の笑みに尻尾をピンと立てた。
 それに気づいた藤堂は慌てて手を離した。
「すまない」
 謝る藤堂に、ルルーシュは寂しそうに表情を歪めた。
「る、ルルーシュ!?」
 やばいと藤堂は瞬時に焦ったが、ルルーシュは焦った藤堂に何故か笑みを向け飛びついた。
「俺の目はあれと一緒なんだ」
「ああ、それを待っていたのか」
「へへっ」
 すりっと頬を寄せるルルーシュ。
 どうやら心を少しは許し、甘えてくれるようだ。
 藤堂はルルーシュの柔らかい髪の毛を優しく撫でた。
 しばらくそうしていると、ルルーシュはことんと眠ってしまった。
 じっと外を見ていただけのようだったが、どうやら疲れていたようだ。

「ただいまー!」

 その時、元気よくスザクが玄関から入ってきた。
 その頬は泥がついて少し汚れていた。
「ただいま藤……!」
 ぱたぱたと走ってきて藤堂に飛びつこうとしたスザクだったが、ぴたっと足を止め、藤堂の膝の上に頭を乗せて眠るルルに気づき、そろそろと近寄った。
「……よかったね、藤堂さん」
 小声で嬉しそうに笑うスザク。
 子どもはどうやら敏感なようだ。
 藤堂は気まずさを覚えながら、スザクから目を逸らした。


⇒あとがき
 LOVELESSからネコ耳の設定のみ拝借。
 戦闘機のネタ引っ張ったら藤堂ルルじゃなくてロイルルかスザルルになると思いましたので……
20070420 カズイ
res

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