□愛しながらも
※藤←ルル←?
行けども行けども続く記憶の断片。
気づけば俺はCの世界にいた。
出口の見えないその世界は意識の集合体の一つにすぎない俺が俺として存在できる最後の場所だった。
死んだ俺がここにいるのはおそらくギアスを生前に所持していたからだろう。
俺のようにはっきりと存在はしていないが、この世界にはマオやロロがいる。
ふよふよと俺の近くを時折漂い、甘えるようにすり寄る二人が、俺の唯一の落ち着ける時間だった。
時折話しかけるCCは世界の話をする。
優しげな眼差しで、俺が作れた世界の話を―――
「なぁ、ルルーシュ」
「なんだ」
「……この間テレビを見たんだ」
「それで?」
妙な間に俺は眉間に皺を寄せた。
今、この世界は図書館で固定されている。
なんとなく世界の情勢はこの図書館でも知ることができるが、それはすべて過去のこと。未来は記されていないし、現在はあやふやだ。
CCの言葉を促しながら、俺はページを捲る。
「―――あいつは結婚したそうだよ」
CCの言葉に、俺はページを捲る手を止めた。
思わず止めた息をゆっくりと吐き出し、口元に笑みを浮かべる。
「相手は千葉か?それしか想像できないぞ」
「ルルーシュ」
「大体あいつの周りに彼女以外の女はいないし」
「ルルーシュ!」
CCの悲鳴のような声に、俺は口を噤む。
何かが頬に触れる。
軽い接触を好むのはロロだ。マオはどちらかと言うと全力でぶつかってくる。だからこれはきっとロロだ。
「泣いていいんだよ、ルルーシュ。そこで泣いても誰も気づかない」
「馬鹿か。お前もロロも見ているだろう」
「不老不死の私と、意識のみが残るお前。―――いずれあいつもあの女も私たちを残して先に死ぬ。だから今のうちにと思った私が浅はかだった」
「無用の気遣いだな。私はあの日誓ったんだ」
「それでも―――お前は愛し続けていたんだろう?蓋をしてみたいようにしていただけで。頼むからもう押し殺すな。お前はもう十分やったんだから」
ふっと肩に力を入れていたようで、すとっと落ちる。
喉の奥が熱くなり、本を膝の上に置いて、両手で顔を覆った。
「……何故俺はこうして存在し続けなければならないっ」
「それは……」
CCが目を伏せるのがわかる。
「神はどうしてこんな俺などを愛すんだ。俺は……」
目頭が熱くなり、涙が零れおちる。
「返す愛などないのに」
真綿でくるむように、ロロでもマオでもない何かが俺の意識を抱きしめる。
それでも俺の想いはただ一つ―――愛したとしてもその想いすら気付いてもらえず、別の女と結ばれた男へだけのもの。
知れば苦しむ彼の話でも、俺は彼の話に胸を打つのだ。
たとえそれが別の女と結ばれた話であっても、愛しく思ってしまう。
俺は昔から―――あの日から母のようにおかしくなっていたのかもしれない。
彼の意志など無視してギアスをかけようとは思わなかったけど……それでも俺は彼を愛していたから遠ざけた。
はは……彼は俺を想ってはいなかったけど、まるっきり母と同じことをしているじゃないか。
おかしくて、涙が止まらない。
「それでも神(あなた)は私を愛すんだな」
"そうだ"と返事が返ってきそうな優しく温かなぬくもり。
愛しく思っても冷える想いに、俺はそのぬくもりに今日も意識をゆだねたのだった。
消えることのない意識で、別の男を愛しながら、何年も何十年も何百年も何千年も何億年も―――俺は過ちを繰り返し続けるのだろう。
「藤堂っ」
平穏の幸せの中、貴方が笑っていられるなら……それで十分だと思っていたのに―――こんなにもこの胸は痛んでいます。
さようなら、愛しい人。
⇒あとがき
……なぜ神×ルルーシュにしたのかが分からないwww
20080928 カズイ