□ALBUM-アルブム-
純白の衣装を身に纏い、漆黒の衣装の騎士と魔女を後ろに、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア第99代皇帝はアリエスの離宮を見上げた。
事件の前と何ら変わりのない美しさを誇り続けるその場所はまるで聖域のようにも見えた。
覚悟を決めたルルーシュには少々眩しく見えた。
「懐かしいのか?」
「いい思い出も悪い思い出も詰まっているからな」
「ルルーシュはここで生まれ育ったんだな」
「いや、生まれたのは後宮だ。ここへ来たのはナナリーが生まれてからだ」
思えばあの頃から、シャルルはマリアンヌを愛していたのだと言うことが顕著に表れていた。
ルルーシュも含め、周りは庶民の出であるマリアンヌを疎ましく思い離宮にマリアンヌを分けて閉じ込めたのだと思っていた。
ブリタニアの騎士候として名を馳せていた女軍人の羽根を切り落とした―――ルルーシュは自分が生まれてきたことが罪だと思ったこともあった。
だがしかし今、シャルルの愛し方を知ったルルーシュにならよくわかる。
あの男は、愛しているからこそヴィ家に離宮を与えたのだ。
結果、マリアンヌはVVに殺されてしまったが―――それもまたVVの愛の表れではないかとルルーシュは感じていた。
「アイツは何度かここに足を運んだ」
白亜の柱に手を触れ、目を伏せる。
脳裏に過るのは優しい笑みを浮かべる二人の姿。
長い髪をマリアンヌが楽しそうに梳き、自分たちはそっとその様子を隠れて見ていた。
だが皇帝と元軍人、気づかれないはずもなかった。
「俺の生を否定したくせに、あの頃は優しくしてくれていた」
黙って部屋に入ったことを怒りはしたが、二人の時間を邪魔したことは怒らなかった。
マリアンヌは細い腕でルルーシュとナナリーを抱きしめ、シャルルはルルーシュとナナリーの髪をあの大きな手で梳いた。
「あの人たちはどうして気づいてはくれなかったんだろう……」
「所詮あいつらは自分たちしか愛せなかったんだ」
「呪われた皇子と言われた……愛してくれていたのに……生きていないと言われた……確かにあの手は優しかったのに……」
「ルルーシュ、両極端な思い出を比べるな。それはお前を思いつめさせる」
「俺はそんなことで弱るルルーシュを見るために騎士になったんじゃないぞ」
「……判ってるさ」
ひやりとしていた柱から手を放し、ルルーシュはアリエスの離宮に背を向けた。
「さあ、息抜きは終わりにして遊戯の続きをするか」
「負けたように見せかけて勝利を手に、か―――」
「実にお前らしいやり方だよ」
「最後まで見届けるんだろう?」
「もちろん。お前が死ぬまで見届けてやるさ」
冷たく笑うスザクに対し、ルルーシュは優しく笑う。
貼りつけた仮面のような笑顔にCCは憐みの表情を浮かべた。
白き王が血に赤くその日もまた、三人は同じ表情を繰り返す。
⇒あとがき
前前からやりたいなぁと思っていたネタに21話を掛けてみました。
本編の最終話が今から恐ろしいです。
ALBUM≫ラテン語で白と言う意味。アルバムの語源となっています。
20080902 カズイ