□義姉と妹の作戦会議

 歴史の立役者、悪漢にして英雄と呼ばれた男―――ゼロの正体が女であるという事実を知る人物は少ない。
 そしてさらにその女がまだ少女で、元ブリタニアの皇族で今は親子ほど年の離れた藤堂鏡志朗と結婚したなどと知る人物はもっと少ない。
 そんな数少ない真実を知る者の一人、ゼロことルルーシュの妹であるナナリー・ランペルージはある決意を持って一本の電話をある人物に掛けた。
『久しぶりだな、ナナリー。元気にしていたか?』
 声しか聞こえてこないはずなのにぴっと背を伸ばしている姿が思い浮かぶ凛とした声の主。
 それは現ブリタニア軍事統括のコーネリア・リ・ブリタニア第二皇女であった。
「お久しぶりです、コーネリアお姉様。はい、私は元気です。ですが、お姉さまが……それで連絡したんですけど」
 にっこりと微笑み、ナナリーは簡単に挨拶の後に近況を告げてすぐに話を切り出した。
『ルルーシュが?どうかしたのか?』
 心配そうに問うコーネリアもルルーシュをよく知る一人である。
 結婚する時猛反対するシュナイゼルに唯一対抗してルルーシュを応援してくれたのが彼女であり、真実を知ってルルーシュを許したルルーシュにとても甘い姉である。
 そんな彼女だからこそナナリーはコーネリアを頼って連絡したのだ。
「実は最近溜息をつくことが多くて」
『まさか藤堂が!?』
 あいつに限ってそんなことはないだろうと敵対していたからこそ藤堂と言う男を理解しているコーネリアは驚く。
「いえ、鏡志朗お兄様はとてもお姉様を大切にしてくれています。それは私も保証しますわ」
『ならば、何故?』
「多分、愛されているからこそ不安なんです。お姉様は愛され続けることに不安を覚えてるんだと思います……また奪われるんじゃないかって。もう皇帝はいないのに……。鏡志朗お兄様も様子のおかしいお兄様を心配しているみたいですけど、お互い気を遣いすぎていて……それに鏡志朗お兄様はお忙しくて夫婦の時間がとっても短いんです。だから私がおせっかいを焼かないとって思うんですけど、どう切り出していいか分からなくて……それでコーネリアお姉様に連絡したんです」
『そうか……』
 画面の向こうでコーネリアは目を伏せた。
 日本での空白の七年はルルーシュとナナリーの口から聞いた程度しか知らないが、ルルーシュが奪われることに過剰になっているのは確かだ。
 すべての基因はあのブリタニア時代のトラウマ―――
『ナナリー』
「はい、コーネリアお姉様」
『ルルーシュに気分転換をさせてみようと思うのだが、いいだろうか』
「気分転換、ですか?」
『一応形式上皇女として装っては貰うことにはなるが、視察と称して軍事施設を訪れてもらう。そこでルルーシュにとって悪くない存在の男を紹介したい』
「男だなんて……鏡志朗お兄様が嫉妬してしまいますわ」
 不安ですとナナリーは首を横に振る。
『いや、あいつはルルーシュを慕いこそすれ恋情は抱かないだろう。なぜならあいつはお前たちの母―――マリアンヌ様に忠誠を誓った男。お前たちが亡くなったと聞かされた後、あいつはマリアンヌ様への忠誠を示すよう自ら日本への配属を志願したのだ』
「そんな方がいらっしゃったのですか?」
『ああ、きっとルルーシュの良い騎士になってくれると思う』
「騎士……でもいいのですか?お姉様は一度皇族復帰していますが降嫁していますのに……」
『藤堂がいない間もルルーシュを守れる存在がいても悪くないだろう?篠崎咲世子の腕を心配しているわけではなく、本当に気分転換のようなものに思ってくれて構わない。あいつには私から事前に話も通しておく』
「……そうですね」
『視察団の形を兼ねて会わせるから、行先は藤堂の配属している基地にでも行けるよう皇代表に私から掛けあっておこう。たまには外で会うのもいい気分転換になるだろう』
「まぁ、それは面白そうですね」
『藤堂は職場で結婚を隠しているようだがこの機会に公表させ日本に藤堂はルルーシュのものだと主張するもよし、だ』
「コーネリアお姉様に相談してよかったです。私も二人の関係をそろそろ公表してもいいと思ってたんです!」
『まったく、年の差など気にしおって……後日改めて私からルルーシュに連絡しよう。その時は協力してくれるな?ナナリー』
「はい、コーネリアお姉様」
 沈んでいた顔が嘘のように花咲くような笑顔でナナリーは頷いた。



⇒あとがき
 ボツになったナナリーとコーネリアの会話シーン。
 ついでだから上げときます。
20080727 カズイ
20080825 加筆修正
res

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