□魔法使いルル 前編

※注意※
・某魔法が使える夢野さんパロ
・一期時間軸と融合した不思議世界
・ルルが外見年齢7歳児
・藤堂がうっかりロリコン
・ゼロ≠ルル
・一部R2キャラが魔法の国の住人
・微妙に星刻→天子要素有
―――OK?



 魔法界にルルと言う魔法の国の王女として生を受けて約七年。
 ルルはその高い知能と魔力で周りに一目置かれる存在となっていた。
 そもそも魔法の国一の大樹に咲いた紫色のそれはそれは美しい大輪の花から生まれたのからそれは当然の話であった。
 だがルルが特別なのはそれだけではない。
 ルルには他の魔法使いと違う点がある。
 それは彼女には前世の記憶があるということである。
「ナナリーは無事だろうか」
 ぽつりと彼女が溜息と共に零した言葉に小さな光がぽんとはじけて現れる。
 それは幼い外見のルルの体よりももっと小さな体を持つ少年だった。
 身の丈は大人の手のひらほどだろうか。背中には四つの輝く羽が生えている。
 彼は魔法の国に暮らす妖精族の少年、ロロである。
「また前世の妹姫の心配?姉さんはいっつもそればっかりだ」
 ぷくっと頬を膨らましてロロはルルを見上げる。
 彼・ロロは元々妖精族であるのだから魔法族であるルルと兄弟関係ではない。
 出会った日にルルは妹のナナリーとロロの姿が似ていることからロロを気に入り、ロロはルルの美しさと初めて触れた愛情と言う優しさにルルを気に入ったのだった。
 互いに気に入った同士ではあるのだが、ルルとロロの間では抱く感情の差は大きく違う。
 だが生前よりどうも色恋に関して完全に疎いルルはロロの嫉妬に気づくこともない。
「しょうがないだろうロロ。あの子は私が死んでからたった一人で生きなくちゃいけなくなったんだ……きっと寂しい思いをしているんだと思うと胸がぎゅうっと締め付けられるんだ。ロロにもその気持ちはわかるだろう?」
「……うん」
 うなづいた後で、ロロはまたルルのペースに乗せられてしまったと気付いた。
 だがその時にはルルは別のことを思い出していたため話は変わっていた。
「そうだロロ、ミーヤが望みの鏡を譲ってくれたんだ!」
 ミーヤと言うのはルルよりも年上の魔法使いの少女である。
 一応ルルとは親族にあたるのだが、ロロはルル以外の魔法使いの前にはほとんど姿を現さないので顔は見たことない。
 だがミーヤに関しては特に興味もわかなかったのでロロはそこは聞き流すことにした。
「望みの鏡?何なの姉さん」
 まだまだ知らないことの多い魔法界の道具は何事も新しいことだらけのロロにとっては驚きの連続のとんでも道具まであるものだが、やはりそこは男の子、興味はある。
「名前の通り望んだものを見せてくれる鏡だ。強く願いすぎると鏡が虚像を映してしまったりそれ以上見せてくれなくなったりするから気をつけなきゃいけないんだけど、一回くらいならナナリーの姿を見ることができると思ってミーヤに強請ったんだ」
 そう言うルルの瞳はきらきらと輝いている。
「もうすぐローマイヤーやコルチャックが来るし、今のうちに覗いてしまうか」
 もう自分の中で決定事項なのだろう、ルルは引出しの中から小箱に仕舞っておいた望みの鏡を取り出した。
 二人の家庭教師が来るまでまだまだ時間はあるのでゆっくり見る時間はありそうだが、うっかりそれが見つかったらコルチャックはいいとしてもローマイヤーは絶対に没収するだろう。
 ロロは少し扉の外に警戒しながらルルの行動を見守ることにした。

 しゅるりと更に包んでいた布を外すと持ち手のある楕円の手鏡がその姿を現した。
 ルルはそれを手に取り、魔力を込める。
「---人間界、ナナリー・ヴィ・ブリタニアの姿を映し出して」
 そっと優しく祈る声に鏡が答えて光出す。
 鏡面部分をルルが恐る恐る覗き込むと、そこには確かにルルが望んだナナリーの姿があった。
 ただし、ルルの記憶にあるナナリーとは随分と違っていた。
 七年前のあの日、ナナリーの目の前でルルの前世、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが死んだ日。ナナリーはまだ7歳にも満たなかった。
 記憶の中のナナリーは髪が肩まででリボンで髪を左右二つ少しずつ取って結んでいた幼い笑顔の似合う少女だった。
 だが鏡に映るナナリーはどうだろう。7年の間に大人びて綺麗になったのはいいのだ。問題は長い髪を編んでまとめ、黒い装束に身を包み、怪しげな仮面を両手で抱えて苦悩した表情を浮かべていることである。
「……ナナリー?」
 様子のおかしいルルに気づいたロロはルルの顔を心配そうに見た後、同じように鏡を覗きこんだ。
 その時鏡の中のナナリーは再び仮面を被り、誰かを部屋へと招き入れた。
 入って来たのは少女が一人と男が一人だった。
 少女の方は明るい黄緑色の長い髪を持っていて顔立ちも整っているのだがその服装はどう見ても普通ではなくブリタニアの拘束衣だと、前世の記憶を持つルルは気づいた。
 男の方は明らかに人種が異なる男であり、アジア系の顔立ちをしている。服装からは簡単に判断はできないが、おそらく日本人ではないだろうかと推測した。
 ナナリーの心配をしていたルルだったが、彼の姿を見た瞬間心臓が異様にどくりと跳ねたのに気づいた。
「この黄緑色の髪の子がナナリー……じゃ、ないよね?」
 ロロが眉間に皺をよせルルの顔を見る。
「……姉さん?」
 さっきまでの青い顔が180度変わって真っ赤に染まっている。
 ロロは慌てて男の顔を見る。
「ちょ、え?ええ?」
 首を上下に振り、真っ赤な顔のルルと男を見比べる。
 まだ前世の死んだときの年齢に身体が追こうとしている途中のルルと男の年齢差は明らかだった。
 男は青年と呼べる年齢ではなく、壮年に片足を突っ込み始めたおっさんだとロロは叫びたくなった。
 だがそれよりも早くルルが「ど、どうしよう!」と焦った声音で声を発した。
「か、鏡越しなのに盗られた!」
 涙目で言うルルにロロは慌てた。
「盗られるはずないよ姉さん。人間と魔女の間に縁があるはずなんてないって家庭教師の二人も言ってたじゃないか」
「でもないんだ!」
 ルルはごそごそとローブの下に隠していたブローチを取り出した。
 いつもはルルが生まれた大輪の花のように艶やかな紫の花の形をしていたそれは形はそのままに色だけが失われていた。
「……嘘」
 ロロは信じられないものを見るようにまじまじとブローチを見詰めた。
「姉さんはこの国を継ぐのに人間と一緒になるなんてできないよね。僕が殺してくるから待ってて」
「駄目だ!」
 早計に動き出したロロを止めようとしたルルだったが、ロロはすでに姿を消した後だった。
「くそっ」
 妖精にしか使えない・見えない道を使って人間界に向かったのだろう。
 ルルは慌てて壁に立てかけていた箒を掴むと、窓を開けて箒にまたがった。
「ルル姫様、お勉強の時間で……って、何をなさってるんですか!?」
「ロロが人間界にっ……残念ですが時間がありません!後はその鏡を使いなさい!」
 丁寧に命令する王女としての口調でルルは扉を開けたローマイヤーとその後ろのコルチャックの二人にそう言って窓の外へと飛び出した。
「ルル姫様!?」
「くくっ、うちのお姫様はいつからあんなにお転婆娘になったんでしょうね。ローマイヤー女史」
「ロロが人間界にと言っていました。これはお転婆で済む問題ではありません。今すぐ王の元へ行きますよ」
 鏡を拾い上げるとローマイヤーは眼鏡をすっと上げ、コルチャックを睨むように見つめた。
「おお怖い。かしこまりました、ローマイヤー女史」
 先ほどよりも冷ややかな眼差しをコルチャックに向け、ローマイヤーは無言で歩きだした。

  *  *  *

 魔法界は人間界の雲の向こうにある。
 一筋の切れ間で繋がる二つの世界の狭間、それを管理している男がいる。
 彼の名は星刻。彼もまたルルと同じく前世の記憶を持ち、その未練から地上を唯一見下ろせる狭間の管理人を名乗り出た男である。
 しかし彼はルルと違い魔力に秀でていないために自力で人間界へ降りることはできない。今日もまた雲の間に見える地上を目を細めてじっと見つめるのだった。
「星刻!」
 呼び声に魔法界の方を振り返った星刻はぎょっと目を見開く。
 まだ幼い姿ながら自分と同じく前世の記憶を持つ魔法の国の王女・ルルーシュが箒に乗って勢いよくこちらに飛んで来たのだから。
「星刻!時間がありません道を開きなさい!!」
「しかしっ」
 王の許可は下りていない。
「王には私から許可を出します。早く、今スグに!でないとっ……」
 ルルの表情に星刻は覚えがあった。
 前世―――人間界で黎星刻生きていた頃、約束を守れず守るため無茶をしようとした自分と同じだ。
 今自分が道を開けばルルは自分のようになることはないだろう。
 この世界で生を受けた時、星刻はルルによってこの役職に就くことを許された。この役職を受け継ぐことで星刻はある程度の年齢まで肉体を成長させ維持させるペンダントを受け取った。それがなければ星刻はまだルルよりも小さい子どもの姿をしていただろう。
 本来まっさらな状態で魔法の国の子どもは花から生まれる。だが時折ルルや星刻のような例外が生まれる。
 その大半が人間界で志半ばに倒れた純粋な未練を持つ魂の者らしい。
 死したときわずか10歳だったルルは一体何の未練があるのだろうと推測した時もあった。だがそれを結局星刻は聞いていない。
 人間界へ行くことはきっとルルにとって第二の苦悩を生み出すだけにすぎないだろう。
 だがそれでも今行かせてやらねば魔法の国の将来を担う彼女の心が死んでしまう。そんな気がして、星刻は腰に下げていた剣をすらりと抜き放った。
 鈍い銀のきらめきを持つ剣を切れ間に差し込み、星刻は刃の向きを変える。
 生前は人を斬るための道具だったそれは今は世界と世界を繋ぐ鍵となっていた。
 それもやはりルルのおかげかと思うと例外によって受ける罰は不思議と恐ろしくなかった。
「少しですが時間をずらして開きました。あまり余裕はありませんが、急ぐのでしょう?」
「ありがとう、星刻!」
 ぱっと精いっぱいではあろうが華やぐ笑顔を浮かべ、ルルは人間界へとさらに箒を加速させていった。
「どうかご武運を―――ルル姫……幼い王女よ」
 誰もいなくなったその場所で、星刻は剣を収めて膝をつき礼の形をとった。
 それは生前の国の礼であり、約束をしたルルとそう年の変わらない少女にだけ心を込めて行っていた礼だった―――



⇒あとがき
 無駄に星刻→天子を入れつつ半分にしゃっきーん。
 ブログ用の小話として書き始めたのですが、予想以上に長くなりすぎましたorz
20080810 カズイ
res

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -