□静かなる智将

「―――と言うことで残念ですが、皇帝には私がつかせてもらいます」
 シュナイゼルがやんわりと笑みを浮かべて言った言葉にいつもなら畏怖を覚えていた自分より本来継承順位が上であるはずの兄、オデュッセウスはただ微笑んでいた。
 ただほんの少し悲しさそうに眼を細めているだけなのだが、纏う雰囲気がいつものものとは違う。
 その様子に若干の緊張を覚えながらシュナイゼルはオデュッセウスの言葉を待った。
 隣に立つコーネリアもその緊張故か腰に差していた剣に手を当てている。
「そうか……あの子は結局復讐に取り憑かれてしまったのだね」
「……どういう意味ですか?皇帝を撃ったのは私ですよ」
「違うだろうシュナイゼル。陛下を撃ったのは君じゃない……ゼロ―――ルルーシュだ」
「!?」
 コーネリアはその指摘に目を大きく開く。
 叫んでは即座に肯定していたようなものだったかもしれないが、それでも十分肯定したことになる。
「どうしてそう思われるのですか?」
「大国ブリタニアと対等に渡り合えるテロリスト集団を作りまとめ上げられる知性を持ちながら、誰よりもブリタニアを憎み、陛下を……父上を憎んでいる人物を私は彼しか知らない」
「ですがルルーシュは七年前日本で死んだと……」
「私もギネヴィアもそんなこと信じてはいなかったよ」
「ギネヴィア姉上?何故そこでギネヴィア姉上が出てくるのです。それに」
「それに何故そこまでルルーシュを判っているか、かい?気になることは」
 表情は優しく微笑んでいるようで瞳は剣呑な光を宿している気がして、コーネリアは身体を強張らせた。
 シュナイゼル相手になら覚えたことのある恐怖をまさかオデュッセウスから受けるとは思っていなかったコーネリアは眼を見張る。
 シュナイゼル自身は眼を細め、その姿を黙って見つめるだけだ。
「私とギネヴィアがルルーシュと出会ったのはほんの偶然だよ。君たちのように逢いに行ったわけではないし、向こうから逢いに来たわけでもない……そう、本当に偶然だったんだよ。一度目は月に導かれるよう外に出た庭園でギネヴィアと共に幼いルルーシュと出会った。そして二度、三度と偶然は続いた」
 オデュッセウスは思い出すように眼を伏せてしばらく黙りこんだ後、シュナイゼルをもう一度見た。
「さて、シュナイゼルが皇帝位につくことに異存はないが、その場合私はどうなるのかな?」
「継承権の放棄を……あなたは政治に向かない、そう思っていましたので」
「私、オデュッセウス・ウ・ブリタニアは第一皇子と言う地位にありながら凡庸な皇子だった……それでいいじゃないか。第一、皇帝にシュナイゼルが立つのは周りも想像してきたこと、私は特に未練もないからね。かまわないだろう?」
「ですがあなたはその力を確かに隠している―――今初めて確信しましたよ。こうして対峙するまで気づかなかったなんて……私も意外に凡庸な人間だったようです」
「私をあまり高く見てはいけないよ、シュナイゼル」
 いつものような穏やかな笑みを浮かべオデュッセウスはゆっくりと立ち上がった。
「どこへ?」
「ルルーシュのところにね。きっと今頃虚しさにあの子は泣いているだろうから」
 歩きだしたオデュッセウスにシュナイゼルとコーネリアは目を合わせる。
「兄上、ルルーシュは行方を晦ましたんですよ?」
「―――大丈夫だよ」
 扉を開けようとした背中に掛けられた声に、オデュッセウスは振り返って言った。
「偶然も三回続けば必然になるのだから」
「はぁ?」
「それはどういう……」
「私とルルーシュには切っても切れない縁があるということだよ。兄弟と言う意味だけでなくね。……皇帝の職務を十分にまっとうしなさい、シュナイゼル。コーネリアもちゃんと支えてあげるんだよ」
 それじゃあとオデュッセウスは二人に背を向けた。


「ねぇ、可愛いコニー。私たちは体よく皇帝の地位と言う逃れられぬ立場を押しつけられたということかな?」
「……そんな気がしてなりませんね。と言うかその呼び方はやつあたりですか?」
「ちょっとね」
 あながちその考えは間違っていないのだと気づくのは微笑むルルーシュを隣に写した写真をオデュッセウスがメールでシュナイゼルに初めて送ってきた日だった。



⇒あとがき
 これむしろ本来書くべきは偶然に出会った話でしょうが、そこはさくっと無視です。
 ただオデュッセウス兄ちゃんに踊らされるシュナ様とネリ様が書きたかっただけwww
 そして微妙にシュナ様とネリ様を仲良くさせたかっただけなんです。本当すべて出来心です。イエイ☆←反省の色なし
 そう言えば書きながら新の智将はルルちゃんで偶然の出会いすらルルちゃんに図られたものだったらいいのにとか妄想しました。ごめんなさいorz
20080730 カズイ
20080803 加筆修正
res

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