□七夕の日
「おい、これはなんだ」
イカルガにある自室に戻るなり机の上に飾られた小ぶりな笹とその飾りを目にし、ルルーシュは眉間に皺を寄せた。
「七夕飾りだ。見てわからんか」
「もうじき七夕だということと、その笹と飾りで理解はしたが何故笹の天辺に星を飾る」
「ん?違ったか?」
「それはクリスマスだろうが」
「だが星は飾るんじゃないのか?飾りつけたのは私だが私にくれたのはあの三人娘だぞ?」
「三人、娘?……ああ、双葉綾芽と日向いちじくと水無瀬むつきのことか」
「おー、えらいな。ちゃんと名前を覚えてやっているのか」
「指揮官として当然のことだろう。彼女たちは幹部ではないとはいえ中核に関わっている……覚えていないお前の方がおかしいんだ」
ルルーシュはため息をつきながらもゼロの仮面を外した。
「お前も書くか?」
そう言ってCCはルルーシュに短冊を一枚差し出した。
「時間がないが……まぁ、少しくらいいいだろう」
ルルーシュはそれを受け取るとCCがさっきまで使っていたペンをとった。
ちなみにCCの願い事、『巨大ピザを一人で食べたい』は無視である。
優雅に走るペンをCCは自分の短冊のこよりを指でいじりながら見つめる。
「これでいいだろう。……飾りつけは任せた。俺は学園に戻る」
言うが早いかルルーシュはペンを置いて立ち上がった。
颯爽と扉の向こうに消えていったルルーシュを見送ったCCはルルーシュの短冊を手にくすりと微笑んだ。
「本当、成長したじゃないか」
"皆と共に優しい世界を"
名前のない短冊を手にCCは格納庫へと向かった。
扇が去年も許可をもらえたしと言うことで用意した笹には質素ではあるが可愛らしく折り紙で飾り付けがなされていた。
「ん?何か用か?」
短冊のこよりを笹に結びつけていた杉山が振り返る。
「ゼロの短冊だ。貰った自室の笹に飾るのは少々勿体ないと思って持ってきてやった」
「ゼロが書いてくれたのか!?」
「ああ。時間がないとかいいながらも書いてくれたぞ」
くつくつと笑いながら、CCは驚く南を横目に短冊を笹に飾りつけた。
「あいつに優しいところがあるのは天子のことでもう理解しているだろうし、いいだろう?」
「そうだな」
「ま、予想外だったけど」
「ゼロはまだまだ"坊や"だが、それでも成長した」
CCは穏やかなまなざしで短冊を見つめる。
「私にとってはゼロがいれば騎士団なんてどうでもいい。だがあいつには騎士団がいなくてはいけない。本来ゼロが優しい世界を与えたかったのは一人の少女だ。それが今はお前たち騎士団も含めたあいつの世界の"皆"だ。それほどここはあいつにとって居心地がよくなっているんだろう……まぁもちろん本来の目的も忘れてはいないだろうが」
「本来の目的?」
「日本の独立、そしてどうじにブリタニアの崩壊。あいつにとっての本来の目的は後者だが、前者はお前たちのために必要だろう?だからあいつはそれも望む。誰よりも強く願い、為そうと努力する。結局七夕なんて祈るだけで為すのは自分だとあいつは考える。だから去年のあいつの短冊は"健康第一・家内安全・安全無事故"だ。そう言う書くものだろう?ととぼけて見せていたが、あいつはそう言う考えの持ち主だ。それがお前たちのおかげで変わっていっている」
CCは短冊を一撫でし、いつの間にか耳を傾けていた全員をぐるりと一瞥する。
会議が終わったこともあり戻ってきたであろう藤堂やラクシャータ、二人になった四聖剣や星刻たちの姿もあった。
「ゼロだって人間だ。冷酷な作戦を口にしようと、悔やむことだってあるし、泣くことだってある。あいつは優しいから、あの見かけではわからないほど意外に脆くて傷つきやすい。お前たちはそれを忘れてあいつを傷つけるな。これ以上あいつの精神を崩壊させるな」
「それはどういう意味か聞いても?」
「聞けば後悔するほどの言葉を過去、あいつは投げかけられた。たった一人の肉親以外を信頼できなくなったあいつが認めたお前たちに私はそれだけを願うよ。さすがにこれは短冊に書けないからな。書いたらあいつに怒られる」
くつくつと笑い、CCは結局答えぬままその場を立ち去った。
残されたのは沈黙と謎とゼロを守るには心も守るべきなのだろうという思考であった。
⇒あとがき
(七夕当日ブログにての)突発なんで20分つらつら書いただけです。
うん、まとまりないね!
20080707 カズイ