□私の王子様

※アンチスザクって言うか……スザクいじめ

『―――アーニャ』

 綺麗な声が私の名を呼んだ。
 ゼロらしからぬとても綺麗な優しい音色。

―――キィィン!

「いやっ!」
 急に痛み出した頭を抱え、私はコックピットの中で蹲った。
『―――アーニャ』
 また優しい声が呼ぶ。
 その瞬間、溢れだすように記憶が次から次へと溢れだした。
「……あ……」
 ルルーシュ。
 音を紡がないまま唇が自然とその名を紡いだ。
『アーニャ!大丈夫か!?』
「……大丈、夫?」
 よく、わからない。
 それでも私はゼロのその優しい音色を知っている。
 愛おしく私の名を呼んでくれるただ一人の私の王子様。
『モルドレッドのディバイサー、アーニャ・アールストレイム卿。君はあの"アーニャ"で間違いないな?』
「っ!?」
『何の話をしている!』
 蜃気楼に向けてスザクがランスロットを向かわせる。
『君の相手は私のはずだ!』
 だけどそれを赤髪のKMFに止められる。
 でもどうして敵対している黒の騎士団から聞こえているの?
 あなたはブリタニアの皇族。
 第十七皇子の貴方がどうして生きていたのにそこにいるの?
 ううん、それ以前に私は学園で貴方とあっている。
 貴方は違うと言った。なのに……
「ゼロ、あなたは本当に?」
『ああ。幼き日、君は一人の少年と出会ったはずだ。君を愛した少年と―――』
『アーニャ、ゼロの言葉に耳を貸してはいけない!ゼロは虚言を並べ立てて君を惑わそうとしているんだ!!』
「……虚言?」
 違う。
 ゼロの言葉は虚言なんかじゃない。
 私は確かに出会った。
 愛しいと言う感情を抱いた。
 とてもお優しくて、汚れない可哀そうなルルーシュ様に。
 でもルルーシュ様の気持ちは知らない。
 私を愛していたと言うのは、本当?
「―――花に囲まれた庭園」
 私は試すようにそう口走ってみた。
『私はそこに立っていた。君はカメラを構えて私を写した』
「……今も残ってる」
『ああ、知っているさ。あの写真が私の記憶を呼び起した。そして今度は私の声が君の記憶を呼び出そうと想いを込めて君の名を呼んでみた。どうやらこの想いは君に届いてくれたようだ。……さあ、私のアーニャ、帰っておいで」
 蜃気楼の手がモルドレッドに伸びる。
『駄目だアーニャ!』
「スザクは黙ってて!」
 私はランスロットに視線も向けず、そう言った。
「私は貴方の剣、絶対の盾」
『私は君の聖杯、絶対の王』
『「互いが互いの永久の幸いであろう(ありましょう)」』
 二人きりで交わした誓いの言葉。
 なんで忘れてたかも思い出したら段々腹が立ってきた。
 差し出された蜃気楼の手を取る前に私はハドロン砲を自軍に向けて構えた。
『おいおいアーニャ……まさか』
「悪いけど、本気」
 躊躇なくハドロン砲を自軍に打ち込み、そして蜃気楼の手を取った。
『アーニャぁぁ!?』
「私の王子様の敵は私の敵」
『王子様……って、ゼロのこと?』
『仮面の男を王子様って……おいおい、趣味悪いぜアーニャ』
「……うるさい」
 蜃気楼の手を取ったままモルドレッドの機体を再び自軍に向けてミサイルを撃った。
『うわぁぁぁ!?』
『何がどうなってんだぁ!?』
「私の王子様はスザクみたいに酷い嘘つかない。第一馬鹿じゃない」
『馬鹿って、それ関係なくない!?』
「関係ある。馬鹿だからわかってないんでしょう?あなたにエリア11……違う、日本は手に入れられない。たとえ手に入れてもそれはただの形。与えられた器」
『日本人とは心なのだよ、枢木スザク。正直、君にはこれ以上失望したくなかったんだが……君にはまだまだ失望する要因があるようだね』
 嘲笑うルルーシュ様。
 昔とは変わってしまった。
 でも、きっと優しいところは変わっていない。
 それに……
「ジノ、訂正して。……私、趣味悪くない」
『はぁ!?』
「私の王子様はすごく綺麗。傾国の美貌の持ち主」
『え?そうなの?へー、アーニャがそんな風に言う美貌の持ち主なら私も見てみたいなぁ♪』
「見せない。私の王子様は私だけのもの」
『だそうだ。残念だな、ジノ・ヴァインベルグ卿』
『ちぇ〜。あ、そうだ!私が黒の騎士団に入ったら見せてくれる!?』
「駄目。私だけ王子様だから」
『アーニャのケチ〜』
『ジノ、そんなこと言ってる場合じゃ……』
「ごちゃごちゃうるさい」
 私はもう一度ハドロン砲を構えて放った。
 ……うまく逃げられたけど。
「行きましょう、王子様」
『そうだな。馬鹿には構うだけ時間の無駄だ』
『僕は馬鹿じゃない!』
「そう言う事はテストの点数どうにかしてから言って」
『え!?なんでアーニャが……』
「リヴァル先輩に聞いた。あんなに馬鹿なラウンズが仲間だったなんて恥」
『うんうん、あれは驚いた。いくら庶民の学校とは言えあの成績はまずすぎるよ。しかも今より学校通えてた時の方はルルーシュ先輩に助けてもらってどうにかなってたんだろう?人の手借りて楽しようなんてラウンズの恥だ。もうちょっと勉強してくれないと一緒にならんでて恥ずかしくなるぞ。それに……』
 ジノが強く同意しめした後の余計な言葉の数々に、ランスロットが動かなくなった。
 ……ジノ、結構きついことたまに言う。それが今。
 ジノがまだ色々リヴァル先輩から聞いたスザクの馬鹿話を暴露してるし、今がチャンス。「黒の騎士団、撤退。退路、開きます」
 ミサイル撃って、ハドロン砲撃って、蜃気楼と共に私は黒の騎士団へと向かった。

 忘れさせられた大切な日々を取り戻すための、それが始まりの一歩。



⇒あとがき
 あー……自分でもよくわからないです。
 仕事の休憩時間に意識朦朧としながらポチポチ打ってたらこんな感じになりました。
 ……疲れてたんだね。うん。
 しかも加筆前は12話見てなかったけど12話見て内容が支離滅裂のまま半分くらい変わってる。
 いやむしろ悪化した?……いや、もうなんでもいいや。
20080627 カズイ
20080704 加筆修正
res

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