□お前に誓う平和

「あのさ……ゼロ」
 ぽつりとライが言葉を零した。
 ルルーシュのままなら「どうした?」と優しく聞くところだが、今の俺はゼロだ。
「どうした、ライ」
 冷たくそう切り出すしかない。
「……ナナリー」
 言いにくそうに続けられた言葉に思わず反応してしまったが、俯いているライはそれに気付かなかったらしい。
 そこにほっとしながらも、ライの言葉を促す。
「その人物がどうしたというんだ」
「あ、いや!違うんだ!えっと、俺の大事な友達の妹のことなんだけど……足と目が不自由なんだ」
 名前を出してしまったことを誤魔化したいのか、ライはしどろもどろに言う。
 とても最初は無表情だった少年とは思えない変化の具合だ。
 思わずそのことに笑みがこぼれそうになるのを堪え、ゼロらしく「ほう?」と呟く。
「ゼロは弱者の味方だろう?だからそう言う子には何もしないよな?」
「何をすると言うんだ。第一私はその少女のことを知らない」
「まぁ、そうだろうけど……」
 困ったように微笑みながら、ライは次の言葉を考える。
「……その子がさ、前に言ってたんだ。ゼロと話がしてみたいって」
「私と?」
 ナナリーが俺……いや、ゼロと話がしたいだなんて言い出すとは思わなかった。
 しかもそれを言ったのが俺ではなくライ。
 やはりライにナナリーの騎士を頼んだ方がいいんだろうか。最近二人は仲がいいみたいだし……
 それを考えるとずきりと胸が痛んだ。
「彼女は静かに生きたい人間なんだ。だから黒の騎士団が日本奪還のために動き出したことをあまりよくは思っていない」
 その言葉に再び胸がずきりと痛む。
 ナナリーは俺にそんな話をしない。俺が話をしないと言うのもあるのだろうが、俺がゼロ肯定派だから言うのを気づいているから言わないんじゃないだろうか……
「彼女はゼロとお茶を飲みながら話をしてみたいんだって言ってた」
「その場を設けたい、と?」
「そう言うわけじゃないんだけど……知っていてほしかったんだ。ゼロに、そう言う子もいるってこと」
「わかっているさ」
「……ゼロ」
 ごめんとでも言うようにライが今の俺の名を呼ぶ。
「でもだからって歩みは止めないでほしい。彼女はゲットーの有様を知っているけど、目が悪いから見たことないと思う。でも俺は見た。今のゲットーの有様を、人々の望みの欠片を……」
 それにとライは言葉を飲み込んだ。
 おそらくそれにに続く言葉は自分自身のことだろう。
 彼は半分は日本人―――しかも貴族の血筋だと判明しているのだから。
 同じハーフのカレンとは波長が合うのか学校でも黒の騎士団でも、俺とナナリーと居る以外はほとんど彼女と一緒にいると言っても過言ではない。
「ゼロ、別に彼女と話をしなくてもいい。と言うか友達が会わせることに反対すると思うし会わせられないだろうけど……それでも一つだけ頼みたいことがある」
「なんだ」
「少しでも早く終わらせてほしいい。君の作戦が以下に犠牲を最小限に抑えているかは君の補佐である俺が一番分かっているつもりだ。だけど早くしないと二人の居場所がなくなってしまう気がするんだ。……上手くは言えないけど」
 苦笑するライにまたちくりと胸が痛んだ。
「ライ、君はその彼女が好きなのか?」
 きょとんとライは目を見開き、首を傾げた。
「……私の口からそう言う話が出るのは意外か?」
 可能性の一つから妥当なものを選んでみる。
「あ、いや……そうじゃなくて……」
 ライは視線をさまよわせ、何事かぶつぶつ呟く。
「……何と言うか、そう言う風には考えたことなかったよ」
 にこりとライは微笑む。
「大切だよ。でも俺の一番は俺の話をいつも親身に聞いてくれる友達の方かな」
 その微笑みは優しくて、純粋な好意の瞳に思わず心臓を押さえた。
 ちくりと痛んでいた胸が、もう痛まない代わりに激しく脈打っていた。
「ゼロ?」
 ライの視界と俺の視界との間に仮面があって本当によかったと思う。
 俺の顔は今、絶対に赤くなっていることだろうから。
「……約束しよう。少しでも早く日本を奪還できるように」
「ありがとう、ゼロ」
(お前に誓うよ、ライ)
 俺の一番はどうあってもナナリーだ。
 だけど、ライのためにも……日本奪還を俺はもう一度ここで誓おう。
 平和な、弱者が虐げらられない国を―――。



⇒あとがき
 R2のスザクのあまりのウザクっぷりに突発的にライルル書きたくなりました。
 ネタとしてはギアス篇と黒の騎士団篇を足して二で割って330度くらいひねった感じでしょうか。←微妙
 まぁ、いいか。ルルが傷つかないならなんでも。
20080516 カズイ
res

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