□シャボン玉

 シャボン玉飛んだ
 屋根まで飛んだ
 屋根まで飛んで
 こはれて消えた

 シャボン玉消えた
 飛ばずに消えた
 産まれてすぐに
 こはれて消えた

 風、風、吹くな
 シャボン玉飛ばそ



 まどろみから目覚めると聞こえてきた朝比奈の鼻歌に、ルルーシュはその歌詞を思い出した。
 スザクが昔歌っていたことがあった気がする。
「あ、起こした?」
 ごめんねーと謝る朝比奈にルルーシュは「いや」と答えてもぞりと布団の中で身を攀じた。
「……野口雨情か」
「へ?」
 零した言葉に朝比奈は首を傾げた。
「今なんて言ったの?」
「野口雨情だ。その曲の作詞家だろう?」
「へ〜、知らなかったなぁ。詳しいんだね、ルルーシュは」
「たまたまだ。俺が知っている日本の知識は所詮一部だ。俺は日本人じゃないからな」
「日本人の俺だってなにもかも詳細に知ってる〜なんてことはないんだから、十分だよ」
「私は知識はあるが曲までは知らない。今のシャボン玉は聞いたことあるがな」
「ほかにどんな曲があるか知ってる?」
「彼の作品であれば、十五夜お月さん、七つの子、赤い靴、青い眼の人形、こがね虫等が代表作か。まだあるが聞くか?」
「いい。だって俺タイトル聞いてわかったの最初のひとつだけだし」
 朝比奈は悔しいなぁと苦笑し、手を打った。
「そうだ!藤堂さんなら知ってるかも」
「藤堂より扇か井上辺りに聞いた方がいいんじゃないか?藤堂が童謡を知ってるとは思わないが」
「……うーん、まぁ、確かに」
 朝比奈は苦笑し、頬を掻く。
「お前が知ってる曲はほかにあるか?」
「俺?そうだなぁ……さくらさくらに、ゆきに、さっきのシャボン玉。荒城の月に……」
 ほかに何があったかなぁとぽんぽんと上げていく朝比奈は「そうだ、カラス」と言った。
「カラス?それは聞いたことがないな」
「え?知らない?」
 朝比奈は少し誇らしげに笑い、曲を口ずさむ。
 だがその途中でルルーシュはくすくすと笑い始めた。
「朝比奈、それが野口雨情の七つの子だ」
「え!そうなの!?」
 知らなかったと朝比奈は仰々しく驚く。
「じゃあ、これも知らないか。シャボン玉にはな、シャボン玉で子どもたちが遊んでいる様子を描いたように見える裏でな、彼が彼のわずか七日で死んだ長女を悼んで描いたものだと言われている」
「我が子の死か……それは悲しいね」
「悲しくないと思う親もいるがな」
「こらこら、自分を貶めて行かないの」
 ぎゅっと朝比奈がルルーシュの身体を抱きしめる。
「少なくともルルーシュはお母さんに愛されていたんでしょう?ルルーシュが死んだら絶対悲しんでくれたよ。俺はルルーシュが死んだら気が狂っちゃいそうだけど」
「それは困ったな」
「うん。だからルルーシュは死んじゃだめ」
 ちゅっとこめかみにキスをして、闇を優しく撫でる。
「死ぬときは絶対一緒。できたら老衰希望」
「どれだけ生きるつもりだお前」
「三桁の大台」
 えっへんと威張って言う朝比奈にルルーシュはぷっと吹き出した。
「馬鹿か」

 笑うルルーシュの顔は穏やかで、朝比奈の笑みも柔らかいものへと変わる。
 例え死と隣り合わせの現実でもルルーシュには笑っていてほしい、朝比奈はそう思うのだった。

 皆、つつがなく生きられますように。
 風よ吹かないで、命を散らさせないで―――



⇒あとがき
 シャボン玉ってタイトルだけ決めて書いてみました。
 ぶっちゃけ唱歌の方じゃなくてJ-POPの方で書くつもりだったのに……ま、いっか。
 このネタなんか他の作品でも書いた気がする私はきっと雨情ファン。
 好きな曲は青い眼の人形と赤い靴が大好きです。でも歌うなら波浮の港ですがね。
20080502 カズイ
res

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