□不要な存在の排除
平和な箱庭―――アッシュフォード学園。
久しぶりに生徒会で会ったルルーシュは、今目の前で膝の上に座るアーサーの毛並みを撫でている。
「……なんでかなぁ」
ルルーシュとアーサーを見ながら、スザクは唇を尖らせた。
その顔はアーサーに引っかかれて薄い蚯蚓腫れが出来ている。
「嫌われているんだ。いい加減自覚しろ」
嘲笑うように言うルルーシュにスザクは目を見開いた。
その笑みはあまりにも冷たく、同席していた他の生徒会メンバーもきっと驚いたはずだ。
だがいつもの笑みを崩さず、ルルーシュの奥にいるミレイとカレンは優雅に紅茶を口にしているし、リヴァルはシャーリーと楽しく談笑している。
振り返った先にいたニーナはパソコンに夢中できっと気付かなかったんだ。
きっと気のせいだったんだろう。
そう思ってスザクはルルーシュをもう一度見た。
「お前、馬鹿か?」
笑みすら消えたルルーシュがスザクを睨んでいた。
僕は何かしただろうか?
不安に駆られていると、部屋の空気が急に変わった気がした。
「やっぱりスザクっていらないよな」
「馬鹿だし。全然わかってない!」
「わかるはずないよ。だってずっとわかってなかったんだもん」
「あ〜あ、ユーフェミアさまが口出さなきゃ入学拒否できたのに」
皆一様にスザクを睨んでいた。
幻聴などでなく、しっかりとそれは聞こえた。
間違いなく、彼らが口にしたのだ。
「まだ気付いてないの?」
カチリッと米神に銃口が当てられる。
いつの間に横に移動したのか、それはカレンによるものだった。
「私たちは殿下の騎士よ」
病弱な仮面を綺麗に剥ぎ取り、野性的な少女の視線がスザクを見下す。
「あんたと違って始めから殿下だけに忠誠を誓う純粋な僕」
「ま、カレンが一番新参者だけどねー」
「でもリヴァルよりディバイサーの才能あるから殿下のお気に入りだよ」
「ぐっさー!ニーナ〜頼むから痛いところつかないでくれる〜?」
「でも事実じゃない」
「会長まで〜」
とほほとリヴァルは肩を落とす。
変わらないやり取り。
だけど自分は始めから枠の外だった。
「スザク、お前はいらない」
ルルーシュは淡々と言葉を紡ぐ。
「お前が跪くのはユフィだしな。俺には必要ない」
「さっすが私の殿下!」
「"私の"じゃなくて"私たちの"ですよ、会長」
「いいじゃない」
ぶーとミレイは頬を膨らませる。
そしてルルーシュの傍に歩み寄ったかと思うと、猫のように足元に近づいた。
「で、どうします?殿下」
「白兜……いや、ランスロットの新しいパーツはロイドに許可を貰ったし、殺しても構わないだろう」
「じゃあ私やるー!」
「だめ、私が……」
「シャーリーもニーナも駄目よ。私が聞いたんだから私が殺すのよ」
「たまには俺にかっこいいところ持って行かせてほしいなーなんて……」
「「「「駄目!」」」」
「……ですよねー」
「まぁ待て。そう簡単に殺したらつまらないだろう」
ルルーシュはやんわりと微笑む。
「学園から追い出してしまえば十分だ。一応第三皇女の騎士だからな、殺したら騒ぎになる」
「「「「「「えー!?」」」」」
「殺すなとは言わないさ。殺るなら戦場で殺れ」
「ってことは、ついに俺らも黒の騎士団デビュー!?」
きゃいきゃいとはしゃぐ友人らにスザクは困惑するしかなかった。
「黒の騎士団って……ゼロはっ」
「ゼロは悪だと?それはあなたの主観。私たちにとってゼロは正義よ」
「ゼロに敵対し、正義を振りかざすだけで何もできないお前とは違うの!」
ねぇ、殿下。そうでしょう?と皆がほほ笑む。
「ああ、そうだな。お飾りの皇女の騎士になってもなにも出来ないお前とは違う」
「でもゼロは!」
「ゼロにとっての悪はお前だよ、スザク。ならばお前は俺の敵だ。そうだろう?」
「ルルーシュはゼロを味方するの!?あんなやつを」
「最悪!相手は戦場でしてあげるからさっさとどこか消えてよ!」
「そうね、あんなやつって君が言うゼロは今目の前にいるんだから」
「え?」
「もうこれ以上は言わない。……さようならだ、スザク。お前はもういらない」
冷たく見下ろす視線で言われた言葉が別れの言葉だった。
翌日、アッシュフォード学園に入ることをスザクは許されなかった。
⇒あとがき
リク消化しなきゃーと書いてたら間違った方向に走りました。
うう、この癖直さなきゃorz
20080415 カズイ