□おかしな奴ら☆

 ゼロみたいなのをなんて言うんだっけ……
 こう喉の手前まできてるんだけどはっきり言葉が出てこない。
 朝比奈はうーんと唸った。
「何を唸ってるんだ」
 若干引き気味に卜部が朝比奈に聞いた。
「言葉が出かかってるのに出てこないんですよ」
「はっはっ、まだボケるには若いぞ」
 仙波さんじゃあるまいし。
「なんか言ったかの?」
「いいえー」
 地獄耳だしと思いながらも、朝比奈は余計な言葉は口にしないようにした。

「朝比奈!」

 それにしてもと再び考えようとしていた朝比奈は突然大きな声で呼ばれ、顔を上げた。
 声の主は珍しいことにゼロだった。
 だがそうすると今の大きな声もゼロだ。
 奇妙な違和感に俺は首を傾げた。
「どうかしました?」
「持ち場は他のヤツに任せて今すぐ隠れろ」
「はぁ……何かありました?」
「来る……奴が来る!」
 背筋に悪寒でも走ったのか、ゼロは身震いをする。
 もしやC.C.が言っていた最大の難所が来たというのだろうか。それにしてはゼロの様子がおかしい。
 様子のおかしいゼロに周りもなんだなんだと集まりだす。

「やぁ、呼んだかい?」

 にっこり。
 爽やかな空気を纏って、その男は現われた。
 見まごうはずもないブリタニアの第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニア。
 何で居るの!?
「出たー!!!」
 ゼロはいつもでは考えられないくらいのすばやい動きでゼロは朝比奈の後ろに隠れた。
 まるで猫がフシュー!と毛を逆立ててるようで可愛いが、そんな場合じゃないと朝比奈はシュナイゼルに向き直る。
「なんでお前がここに来るんだ!!」
 皆も慌てて警戒する。
 護衛らしき人物の姿はなく、爽やかな笑みを称えたままシュナイゼルは両手を広げる。
「もちろん、ゼロに愛を囁くためにきまってるじゃないか☆」
「貴様が語る愛など耳が腐るわ!!大体最後の☆はなんだ!いい年して!!」
「連れないね……幼い頃は大きくなったら私のお嫁になってくれるとまで言ってくれたのに」
「勝手に記憶を生み出すな!さっさと国に帰れ!いやもう俺の平穏のため、世界の平和のために即刻死ね!」
「うふふふふ……口の悪い君も可愛」
―――ガスッ!!
 近づこうとしたシュナイゼルの横っ腹にかるーく肘鉄。
 だがシュナイゼルは明らかに悶絶している。
 その細腕にどれほどの力を秘めているのだろう。
 とても大人しい皇女とは思えない力を発揮した第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアの姿がそこにあった。
「まったく(何勝手に独りで抜け駆けしようとしてるんですか。死ねばいいのに)、お兄さまったら♪」
「なんか今言葉の間に……」
「全力で聞かなかったフリだ!!」
「あー、うん」
 とりあえずそこは素直に頷いておこうと朝比奈は頷いておいた。
「ゼロ!私、(お兄さまの毒牙に掛かって……いえ、まず掛からないとは思いますけど)心配で来てしまいました」
「来なくていい!」
「ああ酷い!私たち愛を誓い合った仲じゃありませんか!」
「ごっこ遊びでな」
「例え形はおままごとであっても私たちの愛は真実!!」
「今すぐ精神科の世話になって来い!!!」

「「「「「「「「「「おままごと?」」」」」」」」」」

 仮面姿の幼いゼロがおままごとをする姿を想像したのか、黒の騎士団のメンバーは微妙な顔を浮かべた。
「お前らは要らんところを想像するな!!!」
 びしっとメンバー達を指差しながら叫ぶゼロに朝比奈は苦笑を浮かべる。
 朝比奈は素顔を知っている自分ならまだしも、他のメンバーはゼロがどんな顔をしているのか知らないのだから無理はないと思うとも同時に思うのだった。

「ゼロォ!!」

 と叫びながら全力で兄を踏み潰した第二皇女コーネリア・リ・ブリタニア。
 微妙に蛙が潰れたような声が聞こえたのは多分気のせいではないと思う。
「兄上(の毒牙に掛かって……いや、まず掛からないだろうが)……は、どうでもいい。無事か!?」
「どうでもいいのか」
「お前が一番だからな!」
「そうですわ!」
 胸を張るコーネリアに賛同し、ユーフェミアはさすがお姉さまですわと両手で拍手を送る。
「……もうこの姉妹イヤ!!」
 ゼロが若干悲観に暮れようとしたとき、ドガーンッと盛大な音を立てて白いナイトメアが表れる。
 突然の襲来に誰もが慌てるが、白兜ことランスロットは膝を突いてディバイサーを外の世界へと連れ出した。
「ゼロ!君が……君がゼロだったなんて……」
 ふるふると肩を震わせてスザクは叫ぶ。
「愛してるー!!!」
「脈略なさすぎだー!!!!」
『あ、ずるいよスザクくーん』
 ランスロットのオープンチャンネルを使って、どこからか声が聞こえる。
『僕も愛してますからね〜♪』
『あ、ずるいですよロイドさん。私も愛してますからねー!』
 それに便乗してもう誰が誰やらわからない声がわいわいとゼロへの愛を叫びつづける。
 おそらく特派の連中だろう。

 もう何がなんだかよくわからない展開に誰もが視線をゼロに向ける。
 ゼロはワナワナと肩を揺らし、次の瞬間叫んだ。
「俺を愛してると言うんならブリタニアの一つぶっ壊して日本を解放でもしてみやがれぇ!!!」
 あ、切れた。
 でも絶対仮面の奥は涙目だ。
 しんと静まり返った空気の中、朝比奈は暢気にそう考えていた。
 だが突然来訪してきたブリタニアの面々は別の思考を巡らせていた。

「「「「『『『『『その手があったかー(ありましたわー)!!!』』』』』」」」」

 そしてゼロを私(僕)のものに〜♪
 という共通の考えまで読めてしまう辺り、ブリタニアの面々は結構単純かもしれない。
 朝比奈はぜぇはぁと息を荒くするゼロの背を撫でる。
 善は急げと引き返していく面々をちらっと見た後、朝比奈はゼロの手を取ってそこにキスをした。
「はうあ!?」
 突然の朝比奈の行動に思わず奇声を上げたゼロ。
 皆の視線を一心に集め、朝比奈はにっこりと微笑む。
「ゼロ、俺も人並みに嫉妬するみたい」
「なっ……馬鹿か!」
 あはははと笑う朝比奈にゼロはいつもの対して痛くないパンチを繰り出した。

 喧嘩をしているようで、甘い空気は垂れ流しな二人にブリタニアの面々は硬直した。
「やっぱりその男邪魔ですわ。ね、お姉さま」
「先に殺していくか……」
「いいアイディアだね」
「僕もお手伝いします」
『バックアップは任せて〜♪』

「お前ら邪魔だから帰れ!!」
「それって今すぐ俺と二人っきりになりたい合図!?」
「お前もなんでそこまで妄想できる!?……………たしかに二人きりにはなりたいが」
「「「「「「「「「「なりたいの!?」」」」」」」」」」
 驚くメンバーたちの中、唯一さして動じていなかったラクシャータがぼそと呟く。

「……ゼロってツンデレ」

「それだ!」
「な、何がだ」
「なんでもなーい。さ、部屋行くよ、ゼロ。いろんなもやもやが晴れたからたーっぷり愛してあげるね!」
「あ、朝比奈!?そんな宣言いらない!!」
 ひょいっとゼロを抱えた朝比奈はすたすたとその場を後にした。
 あまりの空気にしばらく誰も(いろんな意味で)動けなかったのは言うまでもない。



⇒あとがき
 おまけで書いてみたが、こんなに突っ走った内容書くのいつ以来かしら(遠い目)
 一応もう一つのリクエスト(※)『アジトまで押し寄せてゼロ(ルル)を口説くブリタニア皇族たちに独占欲を見せる朝比奈』にも答えるつもりで書いたのですが、書いたというより書いちゃったよorz って感じですね。
 独占欲というより微妙な嫉妬。そして特派とスザクも+αでしっかりくっつけてみました☆
 ……勢いって怖いなぁ(再び遠い目)
20071225 カズイ
※本館企画のリクエスト
res

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