□遠い日の約束
「あにうえ」
「ん?」
それはまだ本当に幼かった頃。
まだ歩くこともままならない幼いナナリーを抱えたマリアンヌとルルーシュとクロヴィスの三人でテラスでお茶をしていた時のことだ。
その頃のルルーシュはクロヴィスとは出会ったばかりで、優しいクロヴィスと言う兄の存在を純粋に喜んでいた。
チェスもまだ知らなかった自分を相手にしてくれていたクロヴィス。
その目的が庶民の出ながらも美しかった母・マリアンヌを見に来ていたという理由を知らなければ本当にあのまま純粋に好きで居られたことだろう。
「あにうえはえがおすきだとききました」
「おや、誰に?」
「私にです、クロヴィス殿下。ルルーシュが色々聞きたがったものですから……」
苦笑を浮かべるマリアンヌに釣られ、クロヴィスは笑った。
「ぼくあにうえのえをみたいです!」
「うーん。見せてあげたいけど、あまりうまくないんだ」
「ルルーシュ、クロヴィス殿下を困らせてはいけないわ」
「でも……」
しゅんとなったルルーシュにクロヴィスは「すまないね」と謝罪した。
ルルーシュは顔をあげ、譲歩して言葉を紡いだ。
「うまくなったらかいてみせてくださいね」
「ああ」
「そのときはぼくたちさんにんをかいてくれますか?」
「ああ。約束するよ、ルルーシュ」
「ありがとうございます、あにうえ!」
「マリアンヌ皇妃も見てくださいますか?」
「ええ。楽しみにしています。クロヴィス殿下」
「あっあっ」
「ナナリーも楽しみにしていますって」
くすくすと笑うマリアンヌにつられ、二人も微笑んだ。
それは、遠い日の小さな約束。
⇒あとがき
多分ルルーシュの回想。
20070613 カズイ