□神楽耶の決意
混乱に乗じ、シュナイゼルがブリタニア皇帝を討った。
それはブリタニア人にとっては衝撃で、日本人も混乱の色を隠せずに居た。
シュナイゼルは黒の騎士団を介して旧日本に同盟を申し立て、エリア11は独立国家である日本へと戻った。
そして今日、日本側の代表をキョウト六家の皇神楽耶が、ブリタニア側の代表をシュナイゼルとした調印式が行われることとなった。
* * *
「このような……なんとっ」
震える神楽耶に、周りの視線が集まる。
悠然と微笑むシュナイゼルに、隣に立つコーネリアも当然という顔をしている。
神楽耶の隣に立ち、その書状を見たゼロもまた、それを受け入れようとしていた。
「なんとブリタニアの愚かなことか!」
「……神楽耶」
ゼロと同じく書状を覗き込んだ桐原が神楽耶を咎めた。
すまぬと桐原が視線を投げかけてきたことで気づいた。
神楽耶はゼロの仮面の下を知っているのだと。
「ゼロ、どうしてあなたも受け入れようとするのです」
「このように寛大な処置など、ありえはしないこと」
「そのためなら己が命をなげうつと!?」
日本側の面々に衝撃が走る。
ゼロの命。それが平和のための対価。
「神楽耶」
親しげに、優しくゼロは神楽耶の名を呼んだ。
「生まれた時から死んでいる命など、今更惜しくないよ」
あまりにも悲しい告白。
だがゼロは淡々と告げていた。
穏やかに、凪いだような微笑さえ見える気がした。
「神楽耶、調印を」
「ひどい人……」
神楽耶は涙を流しながら、ペンを走らせた。
"皇神楽耶"
連盟された名と印。
これでようやく終わるのだ。
震える手で印を押す。
神楽耶はゼロの顔を見上げた。
ゼロはそっと神楽耶の頬に手を伸ばし、涙を拭い取った。
愛しげな手に、神楽耶は一度目を閉じた。
「あなたの守りたいもの、この私―――皇神楽耶がその名に恥じぬよう引き受けましょう」
神楽耶はゼロの手を取り、小指を絡めた。
「7年ぶり」
「そうですね」
「大きな手」
「男ですから」
神楽耶はそっと日本人には聞きなれた約束の唄を紡いだ。
「「ゆびきった」」
それは実に可愛らしく、そして同時に寂しい光景だろう。
ブリタニア側は不思議そうにその光景を見つめていた。
「ブリタニア、実に愚かな親族殺しの一族だこと」
「……そうですね」
寂しそうに苦笑するゼロ。
仮面の奥が泣きそうなのを神楽耶だけが理解していた。
ああ、ここまで言ってもそれでも誰も気づかない。
神楽耶は眉間に皺を寄せ、シュナイゼルを睨んだ。
「日本は二度と屈しませぬ。例えこの命枯れようと、子々孫々までゼロが与えた新たなこの国を平和な国とする!」
「実に勇ましい姫だ」
シュナイゼルが楽しそうに笑う。
「もはや私は姫にあらず。この国を背負う王ぞ!」
凛と神楽耶は宣言した。
「ゼロの願いを継ぎ、平和な国の王となる!」
涙に濡れた瞳はどこへやら、強い決意を秘めた瞳がシュナイゼルを射抜く。
皇神楽耶。
日本返還後最初の王にして歴代最高の王。
誰よりも平和を求めた彼女は、自らの死の間際までゼロへの愛を貫く。
そんな女王の誕生の瞬間であった。
⇒あとがき
うーん、神楽耶が書きたかっただけ。
神楽耶×ゼロ(ルル)良いと思うんですけど、だめ?
20070521 カズイ
20070526 加筆修正