07.節操なし医師

 病院で下された結果は"原因不明"。
 染色体の異常でもなんでもないらしく、もしかしたら心理的なものかもしれないと言う。
 確かな証拠など何一つ見つからないので、最終的に再びカウンセリングをと言う診察に落ち着いた。
 栄純の主治医として礼に紹介されたのは須藤明史という細身の男性医師であった。
 出会い頭に栄純に「可愛いね、今からお茶でも行く?」と仕事中にも関わらずナンパを始める見事な節操なしと言うことが判明している。
 礼の言う腕だけはと言うのはこの性格からのようだった。
 実はこの須藤、身体は細身ではあるのだがかつて青道高校でキャッチャーを務めていた男である。
 しかも当時のキャプテンだったと言うのだからこれまた驚きである。
 どう考えても結城のようなキャプテンでないことは確かだろうことだけは栄純でも解った。
 正直その事実を疑いたいところなのだが、礼がそうだと言うのだからそこは間違いではないのだろう。

「とりあえず、今日の帰りに青道に寄るからね」
 爽やかな笑顔で「診察はこれで終わり」と締めくくると、須藤はカルテを机の上に置いた。
「……学校にまで来なくていいわ」
「そこは礼ちゃんが判断すっとこじゃないでしょー?」
 頬を膨らませる須藤に礼は今にも掴みかかりそうになる自分を必死に抑えた。
「だってさ、唯一の可能性は心理的なもの。栄純くんみたいな子の場合知らず知らずのうちにストレスを溜めてしまった可能性があるからその検分ー」
「とか何とか言って本当は片岡監督に絡むつもりでしょう」
「えへ☆バレた?」
「キモち悪いわ!」
 礼はぴしゃりと須藤を切り捨てた。
「ま、俺の仕事の時間の関係部活の時間帯に顔を出させてもらうのも確かだし、片岡監督をからかって遊びたいのも確かだ」
「グラサンをどうやってからかうって言うんだ?……じゃないや、言うんすか?」
「それはね……」
「やめなさい沢村くん。明史の話にまともに耳を傾けたら耳が腐るわ」
「礼ちゃんそれ言い過ぎ〜」
 けらけらと須藤は笑い飛ばした。
「ま、普段通りにしてるのが一番だよ。俺が来ても気にせずいるように。いいね?」
「うっす!」
 栄純はそれに素直に、かつ元気に返事をした。
 須藤はそれに優しく微笑んで頭を撫でた。
「明史、あなたそのうちセクハラで訴えられるわよ」
 礼がじとっと須藤を睨む。
 従兄の将来を心配すると言うよりも、自分の人生に関わるようなことをしてくれるなとでも言うような目である。
「俺節操なしだけどまだ訴えられたことないなー」
 へらりと須藤は笑う。
 そんな対照的な二人の睨み合いに挟まれ、栄純はしばらく生きた心地がしなかった。

誰か助けてくれ!!



⇒あとがき
 今回はあらかじめ携帯でポチポチと内容決めつつ打っていたので早く書きあがりました。
 さて、次こそクリス先輩を出そう。クリス先輩出番少なさすぎだ。
 ※染色体の検査等がどれ位で終わるのか僕知りません。と言い訳しときます。
20080326 カズイ


res

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