04.サド兄貴

 増子は自分では対応できないからと、栄純を保健室のベッドの上に置き去りにし、グラウンドへと戻っていってしまった。
 倉持がくるまで大人しくしているかと、栄純は肩の力を抜いた。
 幸いなことに保健室の先生は外出中であった。

 運動をしていれば可笑しくはないのだ。何故それくらい自覚していなかったんだろう。
 栄純はため息をつき、胸元を押さえる。
 じっとりと汗ばんだ包帯が中で取れてしまい、気持ちが悪い。
 胸を締め付けていたことでランニングの間は何時もより息が上がりやすく、春市や降谷にそれと気づかれないよう必死だった。
「くそっ」
 今日はまだクリスが帰りに言い残したメニューも残っていると言うのに、なんて自分は中途半端なんだろう。

「沢村ー」

 倉持が保健室に入ってきたことで、栄純は握り締めた拳をゆっくりと解いた。
「こっち」
 仕切りの間から顔を出し、倉持を招く。
「お前なぁ……頑張るのは良いけど気をつけろよなぁ」
「うっ……すんません」
 いつもはひどいが、こう言うとき倉持は妙に優しい。
「ほら、背ぇ向けろ」
「っす」
 栄純は倉持に背を向けて上着を脱いだ。
「汗かいてんな」
「気持ち悪かったっすけど、我慢してたんすよ。けど……」
「落ちたと」
「はい」
 倉持はため息をつき、新しい包帯とタオルを取ってそれで栄純の汗を拭いてやってから両手を伸ばした。
「ちょっ、ん、さわんな」
「さわんなきゃできねぇだろうが」
「うっ。でも、手つきがやらしい気が……」「役得だつってんだろ。そのくらい我慢しやがれ」
「役得?」
「……気のせいだ」
「言った」
「気のせいだ」
 栄純と倉持は朝と同じ問答を繰り返した。

  *  *  *

「はい、終わり」
 ぽんと背中を叩かれ、栄純は上着を着なおした。
「で、どうする?」
「へ?」
「今のままじゃ不味いだろ。練習に支障が出たし……お前まだ練習するんだろ?」
 栄純は俯いた。
「そう何度も誤魔化せねぇんだぞ?」
「けど、練習しなきゃ、俺……」
 クリスが引退する前に、成長した姿を見せたい。
 そのために練習は必要だ。 なによりクリスがせっかく与えてくれたメニューを無駄になどしたくなかった。
「……はぁ。わかった。その代わり、次同じ事になったら一人でどうにかしろよ」
「え?」
 ぽんと突き放すように言った倉持は、ベッドから離れると、そのまま出て行こうとした。
 栄純は思わず倉持のユニフォームを掴み、泣きじゃくる。
「ったく、お前は……ホント泣き虫だな」
「だっで〜」
 ぐずぐずと泣く栄純の頭を、倉持はぽんぽんと叩いた。
「その代わり後二回でアウトな」
「ぐらもぢ〜」
「先輩だ」
「先輩〜」
「あ〜うざってぇ!!」
 抱きつくなと倉持は栄純を引き離す。


酷いけど優しい先輩。



⇒あとがき
 この話一応クリス×栄純だからぁぁぁ!!!
 書いてる本人が一番やっべーってわかってます。
 倉持は栄純の兄貴です。その上に純さんがいればなお良し!
 っていうか、タイトル『エロ持さん』でも良くね?
20070419 カズイ


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