07.終わりのゼロ

※銃殺シーン有

「チェックメイトですよ。ブリタニア皇帝」
 ゼロの登場に眉一つ動かさず、王座に座ったままのブリタニア皇帝。
「やはりぃシュナイゼルが裏切ったかぁ」
 俺の後ろにいるのは扇、カレン、ディートハルト、藤堂、シュナイゼル、ロイド。
 それから、シュナイゼルが俺の名を出さずに説得したと言うコーネリアとその騎士二人。
「ぶぁっはっはっはっは!アスプルンド伯爵までグルか。……さすがの私もここまでは読めなかったなぁ」
「あなたのシナリオ通りは楽しくなかったので、脚色させていただきましたよ。ラストまでしっかりとね」
 銃口を向けられようと、皇帝はただ愉快そうにこちらを見下ろしている。


 ああ、つまらない。
 物心ついたころから俺は既に己を悟っていた。
 だから必要なことはすべて身に付けようとした。
 女であることを隠し、皇子として暮らした。
 そして母が死んだ時にようやく悟った。

 この男は自分を殺す子どもに自分を選んだのだと。
 しかもそれは母を選んだ時からのシナリオだ。
 俺のプライドがそのシナリオを許さなかった。

 だから人身御供と見せかけた傀儡として日本へ送られたとき、俺は桐原に接触した。
 わずか10の子どもの言葉など桐原は当然耳を貸さなかった。だが俺は僅かな言葉で巧みに彼を導いた。
 会戦の折には、厳島へ向かった藤堂にどうにかKMFの弱点を告げた。
 日本に希望の"奇跡"を起こさせるために。

 一体誰が考える?
 エリア11と呼ばれることになった日本で行われたすべての殺戮はこの男と俺の命を賭けた遊戯だったなどと。


「あの女を選んで正解だったな」
「あなたなどに目をつけられて母上は大迷惑ですよ」
「だぁがそのお陰で高い地位を手に入れた」
「だが自由が奪われた。箱庭での永遠を強要され、テロリストと言う名のあなたの私兵に殺された」
 これはロイドを通じてシュナイゼルに調べさせたことだ。
 まぁ、大体予想はしていたがな。
「復讐かぁ?」
「いいえ。私の大切な思い出の地を守るための制裁ですよ」
「兄殺しの次は父殺しかぁ?罪な子を持ぉったものだぁ」

「「父!?」」
 扇とカレンが驚きの声を上げる。
 ディートハルトは楽しそうに口角を上げるのみだ。

「私はあなたのような男を父に持った覚えはない。何故なら私は"ゼロ"なのだから!」
「ゼロかぁ。……よほどあの言葉が堪えたか?」
 くつくつと笑う皇帝をただ静かに見つめた。
 昔の俺ならば、きっと「黙れ!」と叫んでいたことだろう。
 だが妙に心が穏やかだ。
「ゼロ、俺が―――」
「いや。大丈夫だ」
 前に出ようとした藤堂を止めた。

「さようなら、残虐なるブリタニア皇帝」


 銃声がやけに静かに、長く響いた。


「……終わったな」
 仰ぎ見た天井。それは8年ぶりのもの。
「ああ、変わっていない」
 そう言って銃を持っていた手を下ろした。

 母上。この男の死だけは貴女が望んだこの男のシナリオ通り、私の手で殺しました。

「シュナイゼル」
「何かな?」
「エリア全域を今すぐ解放しろとは言わない。だがある程度の自治権を持たせろ。後いいたいことはすべてこのディスクの中だ」
 シュナイゼルにディスクを投げ渡し、ディートハルトを見る。
「報道は好きにしろ。だが私のことは」
「わかっています。私の胸に秘めましょう」
「扇」
「あ、ああ」
 扇はまだ戸惑っているようだ。
 隣に居るカレンは押さえ込んでいるようだが。
 やはり扇はリーダーに向いていないな。
「神楽耶を助けてやってくれ。彼女はただの象徴ではないが、それでもまだ幼い少女なのだから」
「わかった」
「カレン、お前はちゃんと学校に行け。そして母を待ってやれ」
「ゼロ、は……?」
「私か?」
 心配そうにカレンは俺を見上げる。
「……"処刑してくれ"」
「我が君!」
「最後まで聞け。そう言うつもりだっただけだ」
 左目を仮面越しに触れる。
「もう言わない」
「ゼロ……」
「だが魔女との契約には代償が必要だ」

「そうだな」

 第三者の介入。
 誰もがその声の元を探す。
「―――ゼロ、共に行こう。それで契約完了だ」
 浅葱色の髪を靡かせ、奇妙な服を身に纏った少女が手を差し伸べる。
「C.C.。契約を違える事になるかもしれない。だが一つだけ願わせてくれ」
「本当にお前は我が儘だな」
「ああ、我が儘なんだ。一年だけでいい。待ってはもらえないか?」
「ダメだ」
「いいじゃないC.C.」
 もう一人、少年が隣にいた。
 C.C.に似た格好をした、小さな少年だった。
「V.V.」
 C.C.は嫌そうに少年の名を呼んだ。
「契約は契約だ」
「なら僕と新たに契約すれば問題ないでしょう?」
 V.V.と呼ばれた少年は俺の元へととことことやって来た。
「始めまして、ゼロ。僕はV.V.。C.C.と同じで違う存在」
「V.V.、お前の願いは?」
「C.C.と同じだよ。君が願いをかなえるまで、契約を重ねることで左目の力を押さえることもできると思う。どう?」
「……いいだろう」
 子どもらしくない口調で言ったV.V.は俺に手を差し伸べた。
「結ぼう、その契約」
「ゼロ!!」
 誰の声だったか。
 V.V.の手を取った瞬間、C.C.の時と同じ感覚が襲った。



⇒あとがき
 中途半端でシャキーンッ!!!
 さてさて、お次でラストですかもよ?(何故に変な疑問形?)
20070417 カズイ
20080902 加筆修正
res

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