05.秘密主義のゼロ

 第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアが率いる母艦・アヴァロン。
 それはすでに彼のものであって、彼のものではなかった。
「シュナイゼル殿下もゼロも二人ともやる事が派手だよねぇ〜」
 からからと笑う特派の技術主任ロイド・アスプルンド伯爵。
 嗚呼、本当に一体誰が想像できたというのだろう。

「私は昔からゼロに甘いからね。ただそれだけだよ」
 笑顔のシュナイゼルは楽しそうにゼロの身体を抱きしめている。
「離せ、馬鹿野郎」
「会わない間に随分と口が悪くなってしまって残念だよ」
「お戯れが過ぎますよ、シュナイゼル殿下。何をなされるのですか。……これで満足か」
「ああ、つれない君も大好きだよ」
 棒読みで言ったゼロを愛しそうに抱きしめるシュナイゼルに、藤堂は仮面の中の青筋が見えた気がした。

「兄上?」

 困惑した表情で囚われたままの妹皇女コーネリアは出来愛していた同腹の妹の敵と義母兄を見比べる。
「ああ、お前は最初から気づいていなかったね。愚かなユーフェミアは気づいたと言うのに」
 ぴくっとゼロの身体が震えたのにシュナイゼルは気づかない振りをした。
「ユフィが?……ユフィを殺したこの男が何者だと言うのです!」
 批難するコーネリアの瞳は憎しみに燃えていた。
 期待される眼差しと対のそれに、ゼロはそれと気づかれぬよう藤堂を見た。
 それだけで少し落ち着いた。
「ねぇ我が君、ガウェインはどうですぅ?」
 若干拗ねたような仕草をしていたロイドが思い出したように問い掛けた。
「重宝させてもらっているよ。ラクシャータがお前との思わぬ共同作業に"きもちわる〜い"等と言っていたがな」
「あっはぁ〜今の彼女の真似ですか?」
 愉快そうにロイドは笑う。
「そんなに面白いか?"プリン伯爵"」
「それやめてくださいよぉ。昔みたいにちゃんとロイドって呼んで下さいよぉ」
 口調は普段とは変わらないが、枢木スザクの騎士受勲式のような、いやそれよりも流麗な動作でゼロに接するロイドに思わず見惚れていたセシルがはっとして声を発した。
「あなたは一体誰なんです、ゼロは、彼はユーフェミア様を……」
 言外にスザクのことを含んだ言葉に、ゼロは笑った。
「知る必要などない。私はただの"ゼロ"だ」
「成長したお顔を拝見したいなぁって思うんですけどぉ……」
「愚問だな」
「やっぱりぃ〜?」
 ゼロはロイドの願いをあっさりと切り捨てた。

「残念なことに僕のランス、パーツがゼロを拒否してるんですけどどぉします〜?」
「あれは一騎当千の剣。あればが幸いだが、あちらになければ十分だ」
「じゃあガウェインの調整しますねぇ♪セシルくんはどうする〜?」
「私は……」
「セシル・クルーミ。君の出身は知っている。断ったとしても悪いようにはしないさ」
「っ」
 セシルは言葉に詰まった。
 何故と目が訴えてくる。
「君だけではないさ。定期的にロイドから連絡があったからな。……まぁ、あの日偶然再会しなければ違う出会いをしていたかもしれないがな」
「再会した途端後ろ回し蹴りって酷くないですかぁ?」
「いざという時にC.C.に習っておいて正解だったよ」
 楽しそうに言うゼロ。
 仮面の下は恐らく笑っているのだろう。

 桐原の時といい、ゼロは一体何者なのだろう。
 カレンはコーネリアに銃を向けながら思った。

「さあ、流石にそろそろ離せシュナイゼル」
「はぁ……仕方が無いね。君に嫌われては生きていけないからね」
 ちゅっとゼロの手を取り、シュナイゼルはそこにキスを落とした。
 騎士よりは対等な口付け。
 だがそれは騎士のようでもあった。
「シュナイゼル、すぐに隊を編成しなおせ。王を討たねば日本はまた奪われるからな」
「ここはどうするんだい?」
「策は渡してある。油断しているうちに日本に返還させてもらうさ」
 ゼロは歩き出す。
 それにカレンがまずついていき、藤堂とディートハルトも続いた。
「ゼロ」
 シュナイゼルがゼロを呼び止めた。
「……君は変わったね」
「守りたいものが増えただけさ」
 ふふっと笑うゼロ。


 ゼロの守りたいもの。
 それを本当の意味で知る者は誰も居なかった。



⇒あとがき
 や、ちゃんと捏造っぽくこういうのも書いておかなきゃいけないかなぁっと。
 藤堂×ゼロらしからぬ話が一本くらいあってもいいよね。
 ロイドが我が君とかゼロのことを呼んでいますが、『黒の皇子』とは関係有りませんのであしからず。
20070416 カズイ
20080902 加筆修正
res

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