04.孤独なゼロ

 左目が酷く痛む気がする。
「ルルーシュ」
 C.C.がぽつりと名を呼ぶ。
「王は孤独な存在だ。だが、私はお前の傍に居る」
「うん」
 子どものような返事に、C.C.はため息をついた。
「少し出てくる。少し待っていろ」
 C.C.が部屋を出ると、ルルーシュは左目を押さえたままソファに身体を横たえた。

 憧れだった。
 母の髪のようにふわふわした髪を靡かせるピンクのお姫様。
 初めて彼女を見たとき、他の皇女を見たときには思わなかった感動を覚えた。
 ナナリーと一緒になって俺に懐いた可愛い子。
 この左目が、彼女を、彼女の心の一番の誇りを―――汚した。


「入るぞ、ゼロ」
「ああ……早かったな」
 気の無い返事を返し、ほんの少し身体をずらす。
 酷い倦怠感だ。
 今だけは何もしたくない。
「ゼロ?」
 C.C.ではない声に咄嗟にマントで顔を隠した。
「丁度会ったからな。連れて来たぞ」
「……余計なことを」
「何も話さずとも今は傍に居てもらえ。今のお前には私よりもこの男の方が必要だろう」
 歩み寄ったC.C.はそっと髪にキスをしてそう言った。
 断定されたその言葉に何も言えずに居ると、その内出て行ったのか扉の開閉音がもう一度届いた。

「何故顔を隠す。俺は君を知っていると言うのに」
 それもそうだ。
 だがギアスが……
「……ああ、藤堂はそうだったな」
「なにがだ?」
 マントを剥ぎ、左目から手を離した。
「なっ」
 藤堂が左目をじっと見る。
 紫でなくなってしまった赤。
「ギアス。これがゼロの力だ。安心しろ、お前には効かない」
「何故?」
「私のギアスは対象者一人に対し一度しか使えない。お前にはすでに一度使っている。もっとも、覚えていないだろうがな」
「いつだ?」
「いつだったかな……死ぬならお前の手で死にたいと言った日だな」
 "お前は生きろ"と。
 そう言えばスザクにも同じギアスを使ったな。

「俺は冗談のつもりだったんだ」

 "例えば日本人を皆殺しにしろとか"
 何気ない会話の途中だった。

「けど、制御が出来なくなっていて……」

 "日本人は全員皆殺しです"
 彼女は笑顔で宣言してしまった。
 場に相応しい彼女の正装のドレスを血で染め上げて……

「俺が殺す理由を作って殺した!」
「もういい、ルルーシュ」
 布の擦れる音。
 身体を包み込む温もり。
 俺の身体も血に塗れている。
 むせ返るような血の―――
「もういいから」
 背を撫でる手も血に塗れている。
 それが俺を少し落ち着かせる。
「藤堂、俺を求めろ」
「今すぐにか?」
 大真面目に聞く藤堂に思わず力が抜けた。
「……空気を読め。馬鹿」
「ふむ。そうだな」
 「そうだな」じゃないだろうがっ。
 大体なんで俺ばっかり求めてるんだ。
 腹が立つ。

「ならば君も空気を読め」

「は?」
「俺の名は"鏡志朗"だ」
 ほらと、淡々とした表情で呟く。
 なんでもない顔をして。
「……一度きりしか言わない」
 これ以上の情を覚えては、いざという時に死ねない。

「鏡志朗、私を求めろ」

 そして、既に逝く決意をした私を許して下さい。



⇒あとがき
 スザクのごとくボケる藤堂さんが書きたかったんです!
 ユフィのことで弱ったゼロも良いけど、それよりもボケる藤堂!!!
 あー、家事やりながらも妄想が迸って料理失敗した。気づかれなかったけど。
20070406 カズイ
20080902 加筆修正
res

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