姉妹の闇-Light-
※『姉妹の闇-Dark-』の途中から内容が変わったバージョン発掘。
※この話のナナリーは多分白属性だと思われます。自信ないorz
「ゼロが、女の子?」
思わずはっとしてゼロを背に庇う。
「いい、カレン」
ゼロは私の肩を掴んで、前へ出た。
「私を殺すか?枢木スザク」
「僕は……」
「残念だな。今の私はお前に殺されるつもりはない」
「……ゼロ?」
「憎めと言ったが、訂正するよ。君はナナリーのお陰で生きる希望を見つけてくれた。それならば彼女を泣かせるマネを君はしないだろう」
「どういう……?」
「まだ判らないのか?出会い頭にいきなり私を殴った俺様スザクくん」
ぴちぴちと自分の頬を軽く叩くゼロ。
「……へ?」
随分と間抜けな声と共に、スザクは間抜け面になった。
何だというの?一体―――
「おっと、名を呼ばないでくれよ、スザク。私はその名は私を示してはいないのだから」
「うええぇぇぇぇ!?」
「実に素敵な反応を有難う、スザク」
にっこりと笑い、ゼロは藤堂さんに歩み寄った。
「その調子で君のご主人様のところに案内してくれるとありがたいなぁ」
「ちょっ、待って……え?……だって、胸なかった、よね?」
「いつの話だ。いつの」
「……見たのか?スザクくん」
「む、昔の話ですよ!!それに見たんじゃなくて偶然触っちゃっただけで……あ」
スザクは顔を真っ赤にして慌てて否定した。
その顔は最後青くなっていたけど。
「場所を変えましょう。クラブハウスなんていかがです?あ、シュナイゼル陛下とコーネリア殿下とロイド伯爵の三人はとっとと帰りやがってくださいv」
「……いけずぅ」
「後で会いに行きます」
「約束ですよぉ!」
嬉しそうにロイドは帰った。
「私のところには?」
「はいはい。行きますよ」
「わ、私も」
「行きますつってんだからさっさと帰れ!」
ハウス!とでも言うような雰囲気でゼロは言った。
「さ、行きましょうか」
なんて切り替えが激しいの?
ゼロって、こんな人だったっけ?
* * *
ナナリーちゃんを加え、クラブハウスには生徒会役員がほぼ勢ぞろいした。
学園祭は通常通り機能し、実行委員とニーナに半ば押し付ける形ではあるが、一時的に全員が休憩を取ることにした。
ニーナは慣れてきたとはいえ藤堂さんが怖いらしい。
「久しぶり、ナナリー。また一段と可愛くなったな」
「この声は……ありがとうございます、お姉さま」
ナナリーちゃんは嬉しそうにはにかんだ笑みを浮かべた。
「うえぇ!?」
リヴァルが一番驚きを示していた。
だけど全員が驚いていた。
だって、お姉ちゃんって……
「ルルーシュとナナリーちゃんのお姉ちゃんがゼロぉ!?」
「どうなってるの!?」
リヴァルとシャーリーは混乱しているようだ。
ゼロはふふと笑うと、帽子を取った。
中から現れたのは深い深い紫の胸元までの長い髪。
そして外されたサングラスから現れたのは紫色の瞳。
「うわ、ルルーシュそっくり」
「やばっ……」
ミレイさんが目に浮かんだ涙をそっとぬぐった。
「お久しぶりですね、皆さん」
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?
「「「「おひさしぶり?」」」」
見事に声が被った。
「ルルーシュそっくりなんじゃなくて」
「お姉さまがルルーシュですわ」
スザクとナナリーちゃんの言葉に思わず固まった。
「残念ながら今は"ゼロ"として生きていますが、私がルルーシュですよ」
笑顔で言ってのける自称ルルーシュ。
いや、自称じゃないのよね。
「女……」
「ルルーシュは戸籍操作していたんだ。日本にくるずっと前から」
「死んだんじゃ……」
「そうしなきゃゼロとして行動できないし、何よりスザクを友達殺しにしたくなかったから先に殺した」
「死体は?」
「始めからないな」
「目撃者」
「グルだ」
「ナナリーちゃん?」
「始めから気づいていましたわ。お姉さまがゼロだってことは後からですけど」
笑顔で……
「ルルちゃんひっどーい!!」
「アッシュフォード家に迷惑は掛けられませんから」
「それにお姉さま、あの頃既に自分の妊娠に気づいていらしたのでしょう?」
ゼロは無言になった。
「そうなのか?」
藤堂の言葉に、渋々だが頷いた。
「言ったら鏡志朗は困るだろう」
「……否めないな」
「だから言わなかったんだ」
嗚呼、ゼロ。
幸せそうで嬉しいのですが、私たちが居ることを忘れないで下さい!!!
「ルルーシュがゼロで、カレンが赤いののディバイサーだったとはね……」
「赤いのじゃなくて紅蓮弐式だよ」
「うえ!?スザク知ってたの!?」
敵同士だろ!?とリヴァルは私とスザクを見比べる。
「まぁ、色々あったし……」
「今は同僚なのよ。私が元テロリストだって言えないから黙ってたけど」
「もう驚きすぎてなにがなんだか……」
「罪は罪だ。贖うよ」
「お姉さま」
「黒の騎士団の罪は私の罪。……カレンは安心して生活しろ。その辺はシュナイゼルを脅してでも守らせるさ」
「お姉さま……行ってしまわれるのですか?」
「ああ。もう、時間がないんだ」
「契約の所為ですか?」
「……本当なら一年前に居なくなるつもりだった。だけどユフィがいたから」
愛しげに抱きしめる赤子。
無邪気に母の頬を撫でる無垢なる手。
「この子を連れてはいけなかった。だからもう一つの契約も交わした」
「契約って、何?行くってどこへ?」
「さあ」
ゼロはただ微笑み、そして立ち上がった。
「ミレイ、リヴァル、シャーリー。ルルーシュに幸せをくれて有難う。ナナリー、スザク、ずっと黙っていてゴメン。カレン、置いていくことを許してくれ。私は一人で行く」
「藤堂さんも置いていくの?」
「ああ。二人でちゃんと話した。だからほんの少しでも一緒に居たくて、居た証を残したくて結婚した」
「みんな、有難う。そしてさようなら」
ゼロは藤堂さんと一緒に帰っていった。
「ルルーシュ!」
「スザクさん、追わないであげてください」
ずっと開かなかった瞳を開いて、ナナリーちゃんは泣いていた。
「お姉さまは決めたんです。だから……」
一番辛いのはナナリーちゃんだ。
私も泣いた。
皆も泣いた。
これが本当の別れだったから。
⇒あとがき
完全尻切れトンボのダークと違い、ライトは一応区切りはついた感じ。←尻切れトンボに変わりはない
20071220 カズイ