02.残酷なゼロ

※温いエロシーン有

 何よりも身体を熱くさせる。
 限界が近付いた掠れた声で、私の耳元に囁かれる。
 捨てることの出来なかった本当の名前。

 あなたこそ残酷だ。



「っは……藤堂」
「ゼロっ」
 戦闘の後は特に興奮する。
 自分がこんな人間だったなんて、一体誰が知っているというのだ。
 蜜壷に宛がわれた熱の塊に腰を揺らす。

 なんて淫らなリーダーだ。
 こんな姿、誰にも見せられないな。

 そんな下らない会話など当の昔の出来事だ。
「藤堂、もっと……んっ」
 重ねられる唇は優しいものなどではなく、少し乱暴な獣の貪りあい。
 そのぐらいが丁度いい。
「ひぁ!」
 一番いいところに当たった。
 思わず背中を仰け反って、快楽に悶える。
「だめ……藤ど、ぅく……イく、イっちゃう」
 快楽に泣きじゃくり、広い背に爪を立てる。
 長くもない爪が肉に食い込んでいるのが分かる。
 だけど、そうでもしなければ意識が飛んでいってしまいそうだった。
「―――」
 イく直前、耳元に囁かれる本当の名。
 この男はいつも卑怯だ。
「ひあぁぁぁあ」
 何度も身体に教え込まれた快楽が堰を切った。

 強張った筋肉がぴくぴくと痙攣をし、元々体力のない俺は荒い息を必死に整えようと息を吸った。
 だがまだナカにある藤堂に身体が反応して小さく喘ぎ声が漏れる。
「ゼロ」
「んぅ」
 口付けを受けながら目を細める。
 幼い頃に出逢ったこの男が自分を抱いている。
 あの冷めた眼差しが不思議なくらい、情熱的なキスだ。
 むっつりだったんだな、藤堂。

「……藤堂?」
 急にはっとした様子で唇を離した藤堂に俺は首を傾げた。
「すまないゼロ」
 何故か謝る藤堂。
 だが、すぐに思い出した。
「抜くぞ」
「ん」
 ずるりと抜け落ちると余計に感じる。
 藤堂が吐きだしたそれがナカから溢れ出すのを。

「前にもあっただろう」
「ああ」
「あれから避妊薬を飲むようにしている」
 手に入れるのは苦労したと言うと、藤堂は目を丸くした。
「忘れたのか?表の顔も男だぞ?」
「そ、そうだったな」
 忘れていたのか。
 呆れてモノが言えない。
「お前だけだ。お前だけが焼き付けろ。ありのままの私がいたと言うことを」
「ゼロ……お前は……」
「全てが終われば何らかの形で俺は消えるだろう。それが死か生かはまだわからないがな」
 藤堂は悲しげな眼差しで俺を見る。
 哀れまれるのも、藤堂ならば悪くない。
「死ぬならお前の手で死にたい」
「……残酷だな」
「お前も充分残酷だ」
「何か言ったか??」
「いや。……藤堂、私は言っただろう?私はゼロだと」

「俺は生まれた時から生きてなどいない。生きている振りをしていたんだ」

「始まりにして、終わりのゼロ。私はそれでいい」
 だから、お前は生きろ。
 左目が藤堂を捕らえた。



⇒あとがき
 あれ?これもしかして『愛しきゼロ』と繋がった?(※元は『愛しきゼロ』は短編でした)
 そして続く?……もういっか。
 眠くて頭が可笑しくなってるんだよ。ひゃほー!
20070416 カズイ
20080902 加筆修正
res

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