畏怖されるゼロ

 今から大体一ヶ月ほど。それが藤堂将軍がいなくなってからの日数だ。
 藤堂将軍は私たち四聖剣にすら何も言わずにいなくなった。
 だが口にせずとも皆わかっていた。藤堂将軍はゼロに会いに、ゼロを探しに休暇を取ったのだと。
 ゼロを妙に慕っていた皇代表が許可を出したのだからその可能性が高い。
 それに月下の整備もあって再会したラクシャータの言葉から、藤堂将軍はヒントを得ていた。
 私はそれでまず間違いないと思った。多分朝比奈も、卜部大尉も、仙波少佐も……他のみんなも。
 だが誰もそれを口にすることはなかった。言ってはいけない気がしていたからだ。


 私たち四聖剣は今、サイタマに任務で来ている。
 このサイタマにコーネリア・リ・ブリタニアが極秘で来日し、皇代表と会食をするからだという。
 何故ブリタニアの上に立つ人間が極秘で来日するのか、何故その場所がサイタマなのかは正直謎だが、私はこの二人の間にゼロが関係しているのではないだろうかと感じていた。
 だがそれは所詮根拠のない直感だ。誰にも言っていない。
 ……言ってはないが朝比奈は感づいていそうだ。

「千葉さーん、俺たち別任務〜♪」
 へらんとした笑みを浮かべながら、朝比奈が走ってきた。
「別任務?」
 私たちは警護増加のために呼ばれたはずだ。
 どうして別の任務が与えられる。
「詳しい話は後で。さ、急ぎましょう!」
「なぜ張り切っているんだお前は!!」
 手を取られると、強く引かれ、今にも走りそうな早足で朝比奈は廊下を歩く。
 どこかの部屋につくと、SPの格好をした女性が振り返り、ぺこりと頭を下げた。
「こんにちは、皇代表のSPをしています日向です」
「あ、ああ。四聖剣の千葉です」
 咄嗟に返すと、彼女はどうぞと紺色のスーツ一式を私に手渡した。
「これに着替えてください」
「は?」
「サイズは大丈夫だと思いますよ」
「いや、そうではなく……」
「詳しい話は私もあまり詳しくはないんですけど、要人護送任務だそうなので」
 こちらもどうぞと銃器等の一式も渡される。
「使い慣れていないものもあるかもしれないですけど、お二人が呼んだ大切な客人なので、どうぞお気をつけて」
「……了解」

 彼女も詳しくは知らないようだが、なんとなくわかったことはある。
 別任務とはコーネリア殿下でも皇代表でもなく、その二人が呼んだ客人の護送任務であるということ。
 そしてその人物は随分危険な立場だということ。
 軍服を着るなと言うことはそれ相応に危険な場所、または軍服を着ていくと不味い場所。
 ……場所は朝比奈が知っているだろう。
 詳しい話は後ですると言っていたのだから、当然任務のことは知ってるはずだ。

  *  *  *

「行き先はサイタマ孤児院。アラカワ過ぎたゲットーの辺りですね。そこに休暇中の藤堂さんがいるから話は藤堂さんに聞いてください、だそうです」
「……お前、それだけで出てきたのか?」
「もちろん♪」
「威張って言うことじゃないだろう!」
 相手は運転中だというのに、思わず頭を叩いてしまった。
 だが朝比奈はハンドルを誤ることなく、ただ「痛〜い」と文句を口にした。
「ん?……待て、朝比奈。"藤堂さんがいる"と言ったな?」
「はい」
「それは……」
「あははー……俺も同じこと考えましたよ」
 カラカラと笑ったものの、後半のトーンは流石に落ちた。
「……ゼロ、か」
 きっと彼は仮面は被っていないだろう。
 藤堂将軍しか知らない素顔のゼロ―――いや、ルルーシュと言っていたか。
 紅月のクラスメートで、枢木スザクの親友。
 それは死んだはずの人間の名。
 だがゼロは生きている。藤堂将軍が探しに行ったのだから生きているんだろう。
 少なくともルルーシュという人物が死んだという時、ゼロは生きていた。
 導き出される答えは、ゼロは自分を死んだように見せかけて殺したということだ。

―――自分自身の存在を

「……なんだか怖いな」
「何か言いました?」
「いや、別に」
 窓の外の景色が流れていく。
 ちらりとナビを見ると、目的地まで後僅かだと告げていた。
 ゼロとの再会まで後僅か……



⇒あとがき
 別路編07の序章って感じ?
 ぶっちゃけボツになった部分を切り離しただけです。←ちょw
20071218 カズイ
20080904 加筆修正
res

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