01.愛しのゼロ

「ゼロ。お前に協力しよう。―――だが、俺は正体も見せない相手と手を組む気はない」
 その言葉をある程度予想していたのだろう。
 ゼロは笑った。
「そうだな、お前はそう言う男だ」
 実に楽しそうに、ゼロは立ち上がると部屋の扉に鍵を掛けた。
「一応先に約束をしてくれるかな」
 振り返り、ゼロは仮面に手を掛けた。
「名を口に乗せないでくれ」
 シュンッという音がしてゼロの黒い仮面が外れる。
 見えたのは深い深い紫。
 その色はどこか黒にも見える。
「この姿では久しいな、藤堂」
 両手で外された仮面から現れるのは日本人ではありえない色の白い肌。
 二つの双眸はじっと藤堂を見つめ、桜色の唇は楽しそうに弓を描いている。

「る……」
「ゼロだ」

 仮面に変声期でも仕込まれていたのだろうか、先ほどとは違う少しトーンの高い声。
 他と比べれば低くいかもしれないが、明らかに覚えのある声と変わらなかった。
「ゼロは君だったのか」
 先ほどまでは大きく見えていた彼―――いや、彼女が随分と小さく見える。
「というか……君は、その……」
 藤堂は言葉に困る。
「生物学上はそうだな」
 にっこりと微笑み、藤堂が紡ごうとした言葉を肯定した。

 君は女性だったのか?と。
 答えは是。

「本国で生き辛いと分かっていたからな。だから髪を切ってより分かりやすいよう男装を続けていた。あの年頃の性別は酷く曖昧だからわからなかっただろう?」
「あ、ああ」
 藤堂は未だ戸惑う。
 彼の中にあるこの少女は少年だったのだ。無理は無い。
 ゼロは仮面を元に戻そうとして手を止めた。
「ゼロ?」

「藤堂、お前は私の傍にいてくれるか?」

 一瞬その言葉の意味がわからなかった。
「なぁ……藤堂。頼む……答えてくれっ」
 泣きそうな声にはっと気づいた。
 さっきまで戦っていた相手は誰だ。
 彼女の友達であった少年ではないか!
「ゼロ」
 藤堂は小さな身体を抱きしめた。
―――カランッ
 ゼロの証である仮面が床に落ちた。
 それすらかまわず、ゼロは藤堂に縋りついた。
 そして溢れる涙を堪えきれずに泣き出したのだった。
「ナナリ、のっ騎士に、頼もうと思ったのにっ……あいつが……あいつが」
「ゼロ、俺が傍にいる」
 だから少しでも休め。
 世界はお前に残酷だ。
 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 いや、ゼロ。
「お前が望むなら永遠に傍にいよう」
 愛しき少女・ゼロ。



⇒あとがき
 はいすいません。嵌りすぎて自家発電してしまいました。
 えへv←キモッ!!
20070415 カズイ
20080902 加筆修正
res

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