05.奇跡と孤独
※銃殺シーン有
「チェックメイトですよ。ブリタニア皇帝」
ゼロの登場に眉一つ動かさず、王座に座ったままのブリタニア皇帝―――シャルル・ジィ・ブリタニア。
日本の仇敵であり、ゼロをゼロになさしめた張本人。
「やはりシュナイゼルが裏切ったか」
そう言ってゼロの後ろにいるシュナイゼルに視線を動かす。
ゼロなどさして興味はないと言うようである。
俺は改めてゼロ……いや、ルルーシュと皇帝の関係を知ったような気がした。
「ぶぁっはっはっはっは!アスプルンド伯爵までグルか。……さすがの私もここまでは読めなかったなぁ」
同じように居るロイドに視線を向けて笑った。
皇帝が視線を向けたのはシュナイゼル、コーネリア、ロイドの三人だけだ。
他はまるで興味がないとばかりに一瞥して終わりだった。
「あなたのシナリオ通りは楽しくなかったので、脚色させていただきましたよ。ラストまでしっかりとね」
銃口を向けられようと、皇帝はただ愉快そうにこちらを見下ろしているだけだった。
「あの女を選んで正解だったな」
「あなたなどに目をつけられて母上は大迷惑ですよ」
「だぁがそのお陰で高い地位を手に入れた」
「だが自由が奪われた。箱庭での永遠を強要され、テロリストと言う名のあなたの私兵に殺された」
傍にいる扇と紅月が息を飲むのがわかった。
俺は知っていたが、シュナイゼルとロイド以外は知らない事実だ。
眉間に皺を寄せるコーネリアはまだゼロ=ルルーシュだとは気付いていないらしい。
「復讐か?」
「いいえ。私の大切な思い出の地を守るための制裁ですよ」
「兄殺しの次は父殺しかぁ?罪な子を持ぉったものだぁ」
一切感情の起伏を感じさせない物言いではあったが、その事実には扇と紅月が驚きの声を上げる。
ディートハルトは楽しそうに口角を上げるのみで、コーネリアとその騎士はようやく気付いたのか驚愕に目を見開いている。
「私はあなたのような男を父に持った覚えはない。何故なら私は"ゼロ"なのだから!」
「ゼロかぁ。……よほどあの言葉が堪えたか?」
くつくつと笑う皇帝をゼロはただ静かに見据えていた。
妙に穏やかで逆に心配になってくる。
「ゼロ、俺が―――」
「いや。大丈夫だ」
前に出ようとした俺をゼロが止めた。
「さようなら、残虐なるブリタニア皇帝」
静かな声とともに銃声がやけに長く響いた。
ゼロが放った弾丸はブリタニア皇帝の脳天を綺麗に打ち抜き、身体が前に倒れる。
だが肘掛に手を置いたために地面に崩れ落ちることはない。
男は死ぬまでブリタニア皇帝だったと言うことだ。
「……終わったな」
ゼロは天井を仰ぎ見て呟いた。
「ああ、変わっていない」
そう言って銃を持っている手を下した。
その言葉がいつと比べての言葉かはわからない。
本国にいたころだろうとは思うが、本国に居た時の話など妹姫やユーフェミアやクロヴィス、他の皇族たちの話をぽつりぽつりと語っていた程度だ。
俺はゼロのことを意外に知らないのだと今更ながら気づいた。
いや、それでも……皇帝ほどではないだろう。
彼はゼロを、ルルーシュを知らなさすぎた。
その視界にさえ写さなかった理由、それは本当にルルーシュを生きていないものと思っていたからなのだろうか?
最初にゼロを見た時の皇帝は、映像で見知っていた姿よりもどうも穏やかで、わずかに驚いていたようにも思う。
気のせいかもしれないが……
だとしたら、王は孤独だったのかもしれない。
ふと、そう思った。
⇒あとがき
えー、一応これで終わりです。
でもタイトルリプライズでやりたくなりました。←おいw
まぁそれは気が向いたらってことで!
20080512 カズイ
20080903 加筆修正