可愛そうなゼロ
決して寝心地がいいとは言えない己の腕を枕にして眠っている少女を藤堂は見つめた。
気持ち良さそうに背を丸めて擦り寄る姿は、どこか猫のようにも見えて思わず頬を緩ませる。
まだまだあどけなさを残す白磁の肌の中の桜色の唇を指でつっと撫でる。
すると小さく声をあげ、少女は身をよじる。だが目覚める様子はない。
やはり疲れているのだろう。無理もさせてしまったことだ、ギリギリまで寝かせてやろうと、藤堂はその手をはずした。
彼女の名はルルーシュ。
この黒の騎士団ではゼロと言うテロリストのリーダー。
外ではルルーシュ・ランペルージと言う名のブリタニアの男子学生。
かつての名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと言うブリタニアの今は亡き皇子。
そんな彼女が少女に戻れるのはこの小さな空間でのみ。
それも自分といるかC.C.と言うよくわからないがルルーシュが唯一気を許しているというか許されている女と一緒にいるときだけだ。
他に誰かがいるのならルルーシュはゼロの仮面かルルーシュ・ランペルージの仮面を被るのだ。
できるのなら彼女に安らげる世界を与えてやりたいものだが、それをするには藤堂自身は意外と小さな存在なのだと思い知らされる。
だが彼女は自身でそれを為すことができる。
ただし彼女は自分自身のためではなく、最愛の妹のためだけにそれを為すのだ。
可哀そうだ、とも思う。
自分自身のために望むことなど彼女にはほぼありえない。
彼女が彼女であること自体も少ない。
せめて自分が傍にいるときだけはありのままでいてほしい。
こんな風に猫のようにすがる少女の姿を一体黒の騎士団のだれが、同じ学校の誰が、世界中の誰が想像するというのだ。
可哀そうなゼロ。
自分を"ゼロ"だというルルーシュ。
抱きしめてやるだけではきっと足りないだろう。
それでもそれ以上を自分の何かが歯止めさせている。
きっとそれはいずれ自分自身後悔することだろう。
それでも藤堂は目を伏せ、気づかない振りをした。
⇒あとがき
なんだろう、ラブラブだけどシリアス?
一応時期としてはルルちゃん妊娠発覚前です。
『ゼロの少女』の中での藤堂って望まない人なので、書くのがとっても大変です。
藤堂が望んだことってあれでしょ?名前を呼べって言ったことくらい。
いつもルルちゃんが望んでばっかり。
その裏には藤堂なりの葛藤があることをちょっと書いてみたかったのですが、己にそれを表現する力が足りない……orz
ちょっと出直してきます。
20071011 カズイ
20080903 加筆修正