04.お手玉
あれから数日がたち、私はグローシアたち兄弟に言葉を教えてもらっている。
グローシアたちからすれば妹が出来たみたいで楽しいらしいんだけど……私、遊ばれてる?
可愛がってもらってるのは確かなんだけど、年齢よりも下に見られてるのかな?なんて思ったりもちょっとしている。
ロンタルナとコーリキもグローシアにするような女の子扱いしてくれないし、その……あたまぐしゃぐしゃとかよしよしとか……恥ずかしくてはっきりと文句も言えないのが悔しいくらい子ども扱いされる。
気がするって言うか、多分そう思っちゃうって事は、そうなんだろうけど……うう。
とりあえずこの数日で分かったことは、ここが推測した通り、本当にザーゴの国だったってこと。
そして最初に助けてくれたあの人がパーナダムだったってこと。
疲れて眠った私を運んでくれたのがアレフだってこと。
この二人の名前を聞き、実際に会うことになった時の私の驚きを誰か信じてほしい。
そして今、典子さんたちはジーナハースの言葉によって既にこちらに向かっていると言う事を聞いた。
だから私はジェイダ左大公の所でお世話になっている。
そのおかげでグローシアたちと仲良くできるんだけど。
「ナナエ、何してるんだ?」
「お手玉」
「おてだま?なんだそれ」
グローシアに頼んでもらった端切れと小豆で作って暇つぶしにと遊んでいたんだけど、どうやらコーリキがそれに興味を示したらしい。
「遊ぶ、道具」
ぽすぽすと間抜けな音を立てながら三つのお手玉をくるくると廻せば、コーリキがおお!と感嘆の声を上げる。
コーリキは子どもっぽくてなんだか可愛い人だと思う。
とても年上には見えない気さくな感じで……と言うか、私はこの中で一番年下であってるのかな?
そう言えば彼らの年齢を聞いたことは一度もない。典子さんも年齢に関する記述はなかったし……どうなんだろう。
「俺にもやらせてくれよ」
「うん」
余分に作ったし問題ないと、私はこくりと頷いて見せた。
コーリキは私が持っていたお手玉をむんずと掴むと、三つを廻しだす。
「よ、っと、わっ」
だけど当然と言うか、コーリキはお手玉をぼすぼすと地面に落とした。
私はその様子をじっと見つめた後、くすくすと笑った。
「なんだよ、笑うなよな」
口を尖らせながら落ちたお手玉を拾い上げるコーリキにますます笑みが深まってしまう。
「二つ」
「?」
「二つ、楽」
三つでいきなりしようと思っても中々出来ないんだよね。
だから二つからが良い。
私はコーリキの手から一つお手玉を掴みとり、余っていたもう一つと合わせて二つをくるくると廻す。
それを見てコーリキも二つのお手玉をくるくると廻してみる。
「おおっ、出来た出来た」
コーリキは嬉しそうに笑いながらくるくると廻す。
私も嬉しくなって笑った。
「何してるんだ?ナナエ、コーリキ」
「おてだま、だってさ」
「おてだま?」
首を傾げながらロンタルナがこちらに歩み寄ってくる。
「俺はまだ二つしか出来ないんだ。ナナエ、やってくれよ」
そう言ってコーリキは私の手の上にお手玉を三つ乗せる。
私はこくりと頷いて三つのお手玉を順に放り上げ、くるくると廻す。
お手玉遊びは永遠の追いかけっこだ。
終わらない追いかけっこも私が手を止めればあっさりと終わってしまうんだけどね。
「ロンタルナ、遊ぶ?」
手を止めてロンタルナにも差し出せば、ロンタルナは目をぱちくりと瞬きさせた後、にこりと笑った。
「ああ」
ロンタルナがお手玉を受け取り、私はまた二つのお手玉を使ってロンタルナにお手玉の遊び方を教えた。
短いけれど、それは楽しいひと時。
⇒あとがき
兄弟とお手玉してみました!
何して遊ぼうかなーと思ったら不意に思いついたんです。
20060318 カズイ
20110507 加筆修正