運命
思い起こせば3年前。
あの運命の出会いがすべての始まりだった。
「ねぇ、お兄さん」
「あ?」
くんくんと服を引っ張られ、俺は振り返る。
そこに居たのはふわふわとした可愛らしい服を着た美少女だった。
青く長い髪を赤い紐らしきもので結んでいる。
「お兄さん、FIRE BOMBER好き?」
「は?」
「私も好きなんだよ」
ふふっと笑いながら、美少女は俺の横に並んでFIRE BOMBERのCDを手に取る。
依然、その反対の手は俺の服の裾をつかんだままだ。
「……ところでお兄さん、ちょっと今からお暇?」
性質の悪いナンパかと思わず宙を仰いだ。
どう見ても美少女はランカと同じくらいの年齢だ。
一応まだ23とは言え犯罪だぞ?
「安心して、ナンパはしてるつもりだしお兄さんに興味はあるけど恋愛の意味じゃ欠片もないから」
「じゃあなんだよ」
「そうね……言うなら演出?」
「は?」
「それじゃあ行きましょう」
「俺は暇だなんて言った覚えはないぜ?」
「あら、暇じゃなきゃここで時間つぶしのように長々と入りびたないでしょ?」
見てたのか、こいつ。
「さ、時間がないわ。行きましょう。ちなみに反論した場合この場で泣き叫んでお兄さんを変態痴漢男に仕立て上げます」
語尾にハートマークが付きそうなほどの満面の笑みで美少女はのたまった。
「それじゃあ行きましょうか」
服から手を放し、俺の腕を取ると、彼女は店を後にすべく歩き出した。
「ってどこに行くつもりだ」
「畑は違うけど、いいもの見たくない?」
「畑?」
「『桜姫東文章』―――濡れ場たっぷりの歌舞伎よ」
……おいおい、美少女台無しな意地の悪いにやり顔はやめようぜ。
⇒あとがき
web拍手で結構長い期間公開してました。
姉主とオズマのファーストコンタクト……超楽しかった。
20090120 カズイ