金曜日

 決戦は金曜日……ってなんだっけ。ああ、ドリカムだ。
 呑気にくだらない事を考えを巡らせていた講義が終わってから、私はすぐに黒銀へと急いだ。
 隼人みたいな生徒が居そうな校舎はやっぱりちょっと怖いので迂回して、人に道を聞きながら職員室にようやくたどり着いた。
 だけどいきなり声を掛ける勇気はなくて、入り口でこっそりどれがヤンクミだろうとそっと職員室を覗き込んでいた。
「あの……どちら様でしょうか?」
 不意に肩を叩かれ、びくっとしながら振り返ると、赤いジャージの女の人が居た。
 多分ここの先生だと思うけど、中にいるピンクの服の先生とはある意味真逆だ。
 ダサダサなジャージを大して気にした様子で着てるなんて、まるで昔の私を見ているようだよ。
「えっと、3Dの担任の山口先生を探してるんですけど……」
「あ、それ私です」
 少しの驚きと、誰だろうって視線が混ざり合った視線に私は目を瞬かせた。
 なんだか緊張していたのが嘘みたいに私は落ち着いてその視線を受けていた。
 多分山口先生が思った以上に親しみやすい雰囲気を持っていたからだと思う。
 私、山口先生ってもっと怖い先生を想像してたよ。
「生徒の保護者ですか?……にしては若い気がするけど」
「あ、私、山口先生に会ってみたかっただけで……その……えっと……」
 語尾が段々弱くなっていく。
 特に理由も、話したいことも考えていなかった私は言葉に詰まってオロオロするしかなかった。
 ああもう誰か助けて!
「やーんくみ……って、あれ?真菜姉ちゃん?」
 ああ神様!って言うか啓太くん!!
「何で居るの?」
「なんだ、武田。お前の姉ちゃんか?」
「いや、違うよ。真菜姉ちゃんは隼人の従兄弟。俺らの二個上」
 じっと啓太は私を頭から足先までじろじろと観察するように見た。
「学校帰りと見た。あ、もしかして偵察?」
「そ、そう言うつもりはないのよ!ただちょっとヤンクミってどういう先生なのかなって……」
「なんだやっぱり偵察じゃん。昨日も言ったけど心配ないって」
「だからそうじゃなくて……」
「偵察って何の話です?あ、もしかして矢吹の事で何か?」
「ヤンクミ、そうじゃないって。真菜姉ちゃんが心配してるのは真菜姉ちゃんの所に居候して、もがっ」
 私は慌てて啓太君の口を両手で塞いだ。
「な、なな、なんでもないんですっ。それじゃあ山口先生、ごきげんようですっ」
 啓太くんを無理やり引っ張って私は職員室から逃げ出した。

「……なんなんだったんだ?」
 一人残された山口先生がぽつりと私達が去って言った廊下を見て呟いた。



⇒あとがき
 また慎が居ないですね……でも次はちゃんと慎出ますから!
20050320 カズイ
20110430 加筆修正
res

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