火曜日
昨日と違い、今日の朝は早かった。
隣で眠ったままの慎を起こさないように私は朝食の準備をしてから大学へと向かった。
いつも通りの講義の間、なんだかそわそわして早く帰らなくちゃなんて思った瞬間にはたと気づいた。
なんで私が慎の世話をしてるんだろうって。
私と慎の関係は慎が転校した時に終わってるし、実際慎が転校してから私は慎に会うことはなかった。
卒業して、慎が海外へ旅立った後、偶然慎の友達だったクマと会うことがあってそれで慎が海外に行ったことを知ったくらいだ。
クマも私が慎の元カノって事は知ってるみたいだけど、どうして別れたんだとかそう言う事は知らないからあまり深く話をしたことはない。
私はとぼとぼと大学の帰り道を一人で歩きながら思わずため息を零した。
「よお、真菜。溜息なんか吐いてどうした?」
背後から声を掛けられ、私は足を止めて振り返った。
後ろから近付いてきていたらしい自転車がゆっくりと私の横に止まる。
止まった自転車に跨っているのはクマだ。
「溜息だって吐きたくなるわよ。クマも知ってるでしょ?」
「?……何かあったか?」
わかんねぇなぁと首を傾げるクマは本当に分かっていないようで、私は眉根を寄せた。
「何かって……もしかして慎、クマの所にまだ行ってないの!?」
「え!?慎、帰ってきてるのか!?」
「もうあいつなんのために日本に帰ってきたのよ」
思わずまた溜息を零せば、クマもまた首を傾げた。
「慎の奴、真菜の所に居るのか?」
「そう。一週間休み貰ったから先生とか友達の所行くって言ってたんだけど……クマの所に行ってないんじゃどこにも行ってないんでしょうね」
折角合鍵渡したってのに出かけてないんじゃ意味がないじゃない。
誰が留守番をしろと言ったよ。誰が!
「くそぉ。なんで俺ん家こねぇんんだ?遠慮してんのか?」
「安心して、今週中に慎引きずってでも食べに行くよ。早ければ今晩ね」
「わりぃな、金使わねぇようにしてるのに」
「いいのよ。クマのとこのラーメンが週に一度の私の楽しみなんだから」
お金は飛んでいくけどクマの所のラーメンは楽しみで仕方ないからどうしてもお財布の紐を週に一回緩めちゃうのよね。
って言うかそうなると今週は二回行けるわね。
慎って言う言い訳が居る事だし、うん、二回行こう!
「あ、引き留めてごめんね?お仕事がんばって」
「おう」
クマは再び店の方に向かって自転車を走らせた。
ああ、クマのとこのラーメンが恋しくなってきた。
こうなったら本気で慎を口説き落とそう。
美味しいラーメンを食べるためにもね!
⇒あとがき
慎が出てこない\(^o^)/
でもクマを書けたので満足です。
20050318 カズイ
20110430 加筆修正
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