あだ名は皿割り沢村

客×店員








パリーン


(………またか)


ここはどこにでもあるファミレス。仕事帰りに会った同僚の倉持と晩飯を兼ねて寄ってみた。
店の雰囲気は落ち着いていて、ゆっくり話ができる。はずだったんだけど…。



「沢村ぁ!お前また皿割っただろ!隠すなコラっ」
「すいやせんっ皿が勝手に滑って!」
「んなわけあるかっ!」



アルバイトの沢村とか言う奴がずっと皿割っててうるさい。いい加減店長も我慢の限界だったのか声も抑えないで叱り始めた。まぁ当然だな。


パリーン


「沢村ぁあ!!もうてめぇここうろつくな!注文とってこい!」
「はいぃっ!!」



あいつほんとに大丈夫かよ。ありゃ今日限りでクビだな。
倉持は楽しそうに笑ってっけど、あいつのせいで飯がなかなか届かねぇ。


「ヒャハハ!ありゃクビだな」
「どーでもいいけど飯ー」
「30分近く待ってっしなー」


皿割り沢村はわたわたと注文をとっている。声がデカイから誰が何を注文してるのかわかってしまう。恥ずかしい奴だな。客もかわいそうだ。


そうこうしてるうちに他の店員が料理を運んできた。腹の虫がなる。


「長らくお待たせしてすいません。唐揚げ定食大です」
「あざーっす」



食い終わると一息つきながら仕事のことやらなんやらを話す。入社したばかりで忙しかったので、部署は同じはずなのに倉持とはまともに話せていなかった。
たまたま帰りが一緒だからと飯に誘った。特別仲が良いわけではないが、腐れ縁ゆえ一緒に居ても気を使わない。
倉持はまだお腹が空いてるのか、メニュー表を眺め始めた。


「なんか頼むのか?」
「んー甘いもん食いたくなった」
「お前見かけによらず甘党だよな」
「お前は見かけによらず辛党だよな」
「そう?てか俺もなんか頼もうかな」


倉持は白玉アイス、俺はコーヒーゼリーを頼んだ。


あ、皿割り沢村。


「おまたせしやした、白玉アイスの方ー」

倉持が軽く手を上げると、皿割り沢村は一瞬止まってそれから。


「人は見かけによらないもんっすね!」


何て言うから思わずツボってしまった。
俺が爆笑してる前で倉持がメンチを切っていて、それがさらに笑いを誘った。


「はっはっは!最高だわ沢村!」
「てめ御幸わらってんじゃねぇ!」
「落ち着いてお客さん!」
「てめぇのせいだよ!」
「はっはっは!」


出来の悪い店員だと思っていた沢村が、ここまで俺の笑いを誘うとは。
仕事のストレスが一気にはれた。


「コーヒーゼリーの方ー」
「はい」
「ごゆっくりどうぞ」
「なぁ、また来てやるからさ、クビになんなよ?」


こんな面白い奴がいるなら来ないわけにはいかない。なりませんよ!何て言いながら沢村は行ってしまった。


たまに来てからかうのもいいな、なんて思ってたら倉持にまたいらんこと企んでるってほんとお前よく見てんなと感心して、少し苦くて甘いゼリーを口に運んだ。




end




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