いつもと違う温度で眠ろう






「さーわーむーらー」
「…な、なんでしょう」
「ひゃはははは」
「ひぃいい!」



どうしたんだろうか。倉持先輩が怖い、機嫌よすぎて。
あ、あれか。ちょっと早いが熱中症にかかったのか。うんそうだ絶対そうだ!
そういい聞かせてみるものの、怖いことにかわりはない。


「せんぱい?どうしたんですか…?」
「んーなにがだー?」
「えっ、いや何でも…」
「そうかー」
「…………」



ほんと、これなに?
設定弄るのはどうかと思う!

どっか悪いんじゃ…。
あ、もしや降谷の豪速球を諸に受けたとか?
あーありえる。あいつコントロールよくねぇし、力加減も出来ないからな!
うんそうだ降谷のせいだ!

そう思い込んで倉持の頭をペタペタさわってみるが、特に外傷はない。
というより、普段ならこんなことをした時点で、技の一つや二つ掛けられていることだろう。

それが、

「どしたーさわむらー」


背筋を悪寒が駆け抜ける。さぶいぼがこれでもかと言うくらい立った。

腕をさすりながら、もう一度頭を見てみる。
これはかなりヤバイと思ったのだ。

傷ばかり探していたせいで一番初めに見るべきところを見忘れていた。
そっとそれに触れてみる。






なにこれすげぇ熱いんですけど。




慌てて体温計を探しだして倉持の脇に挟む。

しばらくするとピピッと音がして、示された数字を見てみると、



(38.9……)


「先輩、寒くないっすか」
「さみぃのかなー?」
「頭痛は?」
「んーするかなー?」


完璧に熱だなこりゃ。
そういえば2、3日前から少ししんどそうにしていた気がする。
何で気づかなかったんだろう。
とりあえず、体温下げないと。

思い立ったら即行動の沢村。慣れはしないが、昔自分がたまにやってもらった看病と言うものをしてみる。

「先輩、俺の布団でいいんで、横になって!」
「あーてめータメ語ー」
「いいから!」


今はそれどころじゃない。倉持がここまでなるということは、相当我慢していたんだろう。
今はまだそこまでじゃないが、このままほっといたら更に熱が上がるにちがいない。


洗面所に行って水を汲み、タオルを濡らしておでこに置くと、一瞬顔をしかめたものの、そのあとは気持ち良さそうに眼をつむっている。


(風邪薬ー風邪薬はどこだー?)


棚を漁ってみるが、普段使わないのでどこにあるのかわからない。
もしかしたらここにはないのか?


(仕方ないな、春っちに聞いてみよう)


「先輩、そのまま寝ててくださいよ。すぐ戻るんで!」


返事も待たずに部屋を飛び出した。











春市の部屋につくと、ノックもそこそこに部屋を開けたせいで前園に怒られた。

「すいやせん!急いでてつい…」
「あー?急ぎてなにがや」
「あ、いや倉持先輩が熱だして…」
「ほんまかそれ!薬は!?飲ませたんか!?」
「まだっす。薬の場所わかんなくて…」

そういうと、棚をごそごそしていた春市が箱を差し出してきた。

「これ、風邪とか熱に効くから」
「おぉ!さんきゅー春っち!」
「2粒飲むんだよ」
「なんか腹に入れとかんでええんか?」
「それは大丈夫みたいです」「ほぉか」


前園と春市に礼を言って今来た道を戻る。走って。




「沢村栄純、ただいまもどりました!」
「おかえりー」
「(ひぃい、気持ち悪いっ!)」



なんとか薬を飲ませる。
そこでやっと一息ついた自分に、かなり慌てていたんだと気づく。


「さわむらー寒い」
「あ、毛布いりやすか?」
「寒いから、こっちこい」

そういって隣をぼふぼふ叩く倉持に、ようやっと意味が理解されて顔が赤くなる。

沢村が照れていつまでも動かないでいると、倉持に無理やり腕を引っ張られた。

「はやく!」
「は、はいっ!」


もぞもぞと布団にはいると、熱のせいか温かい。正直暑い。

本当に寒いのか、倉持が沢村に擦り寄る。


(うわっめずらしい!)


いつもより大人しい恋人兼先輩に、すこし違和感はあるけれど、いつもより近い距離に嬉しくなった。


「先輩、次からはちゃんと言ってくださいね」
「んーなにをー?」
「しんどいって」
「んーがんばる…」


そういったきり、眠ってしまった。


規則正しい寝息が聞こえたので、もう少し、もう少しだけ。
このいつもより幼い寝顔を見て、目に焼き付けてから。







俺も一緒に眠ろうか。



end



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