俺のなんで
*沢村がモブに襲われています 大丈夫な方のみどうぞ
暗い路地。
埃臭いそこに四人の人影。
「っ、やめろ…!さわんなっ!」
「大人しくしてろって」
薄汚い男共がせせら笑う。いやらしく歪められた口許は、あいつのとは似ても似つかない。
どんなに暴れようにも3対1では当然勝てない。腕をベルトで縛られ一人に押さえつけられている間に、もう一人が服を脱がしていく。
胸元のボタンをはだけさせられて汚ならしい手が皮膚の上を這った。
「い、やだ…!はなせよ、糞野郎!!」
バシンと音がして顔を叩かれたのだと気づく。鉄の味がしたから口が切れたようだ。
「大人しくしてろって言ったろー?気持ちヨクしてやっからよー」
ゲせた笑いが路地に響いた。思わず耳を塞ぎたくなるような笑いに胸がムカつく。その間にも汚い手は身体中を這いまわっていて、胸の突起を弄られる。気持ち悪さに吐き気がして目に涙が滲んだ。
何を勘違いしたのか感じていると思った男が満足げに笑う。
「…う、っ」
「そんなにキモチイイ?」
そんなわけがない。あいつ以外にそんなやついない。口端をつり上げる男が顔を近づけてきたので思わず男の顔めがけて唾を吐いてしまった。
「っ、てめぇ!」
鈍い音が頭に響く。
もうどうでもいい。こんなことをされるくらいなら、殴られた方がマシだ。
抵抗していたときに散々殴られたが、こんな汚い手で犯されるくらいなら。
(御幸……)
せめて自分を見失わないように、必死であいつの顔を思い浮かべる。それだけで守られているような気分になれる。
けれどやっぱり無理なようで、あっさりと下着を取り払われて、秘部に受け入れたくもない指を無理矢理にねじ込まれた。
「っい、やめっ…!」
無理矢理にねじ込まれた指は当然ながら少しの痛みを伴った。いくらしたことがあっても、排泄器官であるところに指を突っ込まれたら痛い。しかもあいつはいつもいつも、こちらが焦れったくなるくらいに大切に優しく解してくれる。
こんなところで改めて優しさを感じるなんて最悪だ。声をあげて泣きたくなる。と同時に今自分を犯そうとしている奴にひどく殺意が沸いた。
(みゆき、たすけて)
声をあげて叫びたいのに、なぜか喉が張り付いて声が出せない。
「、も…やめてくれ」
「は、そんな良さそうな顔してるくせに、なにいってんの?」
「てか、それよりさぁ」
汚い声の中に、聞きなれた好きな声。憎たらしい声だけど、俺を救ってくれる声が混じって、固く閉じていた眼を見開いた。
「人のもんに手ぇ出すとか、ダメだと思うんすよねぇ」
途端に目の前の男が吹っ飛んで、俺を押さえていた男も顔面を殴られて気絶した。
「なんだてめぇ!」
「…あ?」
もう一人の男が声をあげたが、見たこともない、御幸の冷めた眼と声に背筋がゾクリとする。
男も同じなようで後ろに少し下がった。
「悪いけどさ、
死んで?」
言い終わるよりも早く御幸が男の急所を蹴り飛ばし、倒れこもうとする体をまた蹴り飛ばした。意識は飛んだようで、ぐったりと地べたに寝そべっている。
「みゆき、」
「………」
そのまま無表情で動こうとしない御幸に、なんだか胸騒ぎがする。
早く抱き締めてほしい、そう思うのに御幸は動かないままで。
「みゆき、あり」
「沢村、」
「な、なに」
「こいつらさ、
殺してもいいよな?」
そう言って横に寝そべっていた、俺を犯しかけた男の胸倉をつかんで殴り始めた。
鈍い音が響く。男はすでに気を失っているにも関わらず、御幸の攻撃は止まらない。ひどく冷めた眼に、怖くなった。
「御幸!もうやめろ!」
ただただ無表情に、無情に殴り続ける。
「御幸…!死んじまうって!」
それでも御幸は止まらない。思わずその腕をつかんで止めていた。
「はなせよ沢村」
「いやだ、」
「お前こいつらにヤられたんだろ?やり返せよ、ほら」
そう言って男を差し出してくる御幸の顔は、なにも写していなかった。
「みゆき、もう帰ろ…?」
「こいつら殺してからな?」
不敵に笑う顔はいつもの憎たらしい笑みじゃない。その違いに、涙が出そうだった。
耐えきれなくて抱きつくと、正気に戻ったのか男をその辺に放って強く、強く強く抱き締め返してくれた。
「みゆき、」
「ごめん沢村」
本当は怖くて仕方がなかった。助けてほしくて、早く来てほしくて、こうやって抱き締めてほしかった。会えた瞬間声をあげて泣きそうになった。
「もっと注意するべきだった…。こんなことになるとか聞いてねぇ…。最悪…っ!!」
ぎゅうぎゅう抱き締められて苦しいのに、安心と嬉しさが一緒に来てついに涙がこぼれた。一旦決壊したらなかなか止まりそうにもなくて、嗚咽も混じってひどいことになった。
「み、ゆきっ…ぅっえ、みゆき…!」
「沢村、ごめんな。もっと早く見つけれてたら」
「みゆき、ありがと…っ、きて、くれて…俺、」
怖かった、そう伝えるとさらに御幸が苦しそうに顔をしかめたけど、もう自分に嘘はつけなかった。 怖かったんだ、本当に。御幸じゃない奴等に身体を触られるのが。逃げたくても逃げれない怖さに。
けれど、来てくれた。
「御幸、帰りたい」
「うん、そうだな」
「…帰ったら、二人でゆっくりしたい」
御幸が優しく笑ったから、俺のお願いは了承されたようだ。
二人で路地をあとにすると、不意に御幸が口を開いた。
「沢村、」
「ん?」
「監禁していい?あとできれば帰ったらすぐにでも上書きしたいんだけど、だめ?」。
「監禁とか普通に考えてダメだろ。てか上書きってなんだよ」
「あのゲス野郎共が触ったところきれいに洗って俺が触って浄化したい。つか監禁したい。監禁したらもうこんなこと起きないし」
かなり突っ走って危ない方へ思考が逝っている御幸をだまれといって軽く蹴飛ばす。
「なんで蹴るんだよひどい」
「うるせぇ変態眼鏡」
「でも俺の沢村に触ったのはマジ許せねぇ」
めんどくさいからシカトしたが未だにブツブツ言っている御幸に呆れつつも、これは愛されていると言うことなんだろうとも思う。
「なぁ御幸」
「…だから監禁したら、…ん、なに?」
「俺さ、やっぱ御幸が好きだからさ」
普段伝えたくても恥が先出て伝えれないことを、今はなぜか正直に伝えたい。
御幸が自分を大切にしてくれているのが伝わるみたいに、自分の愛情も伝わればいい。
「俺、ずっと一緒にいたい。御幸と」
最後はやっぱり恥ずかしくて眼を反らしてしまったけど、繋いでいる手をさっきより強く握ってくれたから。
「嫌がったって離さねーよ」
(とりあえず勃ったからここで襲うな?)
(………本当残念なイケメンだよな)
end
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