恋人×恋人=バカップル

これは「片想い×片想い=両想い」の続きです。単体でも読めます。








今日はいい日だ。なぜなら沢村がうちに来ているからだ。と言っても一昨日も来たしその前の前も来たしその前の前の前も……つまりほぼ毎日来ている。それでもやはり嬉しいものだ。


「言っとくけどあんたが無理矢理連れ込んでんだからな」

「連れ込んでるとは失敬な。きっちり飯食ってくくせに」

「………」


沢村は飯で釣れる。沢村も一大学生、一食でもタダ飯が食いたいようだ。いつも料理はめんどくさいのでしないが、どうやら恋人の心を掴むためなら苦手な煮物でさえにやにやしながら作ってしまう、と言うことに最近気がついた。もちろん沢村限定だ。
今も目の前には味噌汁と焼鮭、それと沢村のリクエスト、肉じゃが。


「うまいか?」

「うん」

「明日も作ってやろうか?」

「……うん、御幸が忙しくねぇなら……お願いします」


申し訳なさそうにしながらも、顔が赤い。俺と居られることが嬉しいのか、はたまた飯にありつけることが嬉しいのか。どちらもか。

「沢村、」

「んー?」

「すきー」


がたんっ!沢村が足をぶつける。これももはや当たり前の光景になってきた。経験値の低い沢村はこれしきのことで動揺する。そこがまたいいんだが。


「あんたはなんでいつもいきなり言うんだよ!」

「えーじゃあなに、今から沢村にすきって言いますすきーて言えばいいわけ?」

「そ、ゆことじゃなくてっ」

「てか沢村からは言ってくんないの?俺まだ一回しか聞いてないんだけど」

「、!…っ、」


おーおー慌ててる。これだから止められない。
沢村と一緒に居るのは本当に楽しい。


「…この、肉じゃがすき…」

「俺肉じゃがかよ!?」

「………い、」



肉じゃがとおんなじくらいすきだ。


ノックアウトだ、仕方がない。だってこんなの予想もしてなかった。
もくもくまた食事を再開した沢村は目を合わせてくれないけど。


「沢村、飯終わったらぎゅー、な?」

「………うん」


こういったことに関してなかなか素直になれない沢村だが、どうやら今日はうまくいったみたい。
もぐもぐ口一杯に詰め込んだそのほっぺたが、ハムスターみたいで可愛い。なんて言ったら怒るから言わないけど。

(待てねぇなこりゃ)


どうしてもうずうずしてしまって、向かいにいた沢村のとなりにいく。
肩を揺らして不安げに怪しげに俺を見つめてきたけど、気づかないふりをして抱きついた。


「ぎゃあ!」

「色気ねー」

「いきなりなんだよ!?飯終わってからだろ!?」

「フライングしちゃった」

「失格!!」


はっはっは!
大袈裟に笑ってやると、ムキになった沢村が俺をひっぺがそうと奮闘する。


「離れろ!まだ飯食ってんだから!」

「いやー」

「わがまま言うなっ」


尚も剥がそうとするから、ほんの思い付きで、そのほっぺたにキスをした。






今思えば、これが俺と沢村との初キスだったりする。






(…カウントしてもいいのか)





end

沢村くん硬直

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