文化祭 倉沢の場合
「いらっしゃいませー」
「倉持顔怖いから。子供ビビってるから」
「…っち、うるせぇ御幸黙れくそ眼鏡」
「ひっ、ふぇえっおがぁあざぁああん!!!」
「あーあーほら、言わんこっちゃない。仕方ねぇから慰めてきてやるよ」
「………」
なんでだ、なんでこんなに下手なんだ接客。
HRの時間にボーッとしてたら御幸が勝手に俺を接客係にしやがってた。俺が人見知りと知っておきながらあのくそ眼鏡腹立つ。
前途多難ながらもカフェはわりと繁盛している。
「倉持せんぱーい!沢村さまがきやしたよー。おもてなししてくださいよー」
「あ?調子のんなや沢村!」
「な、お客様に対してなんて態度!そんなんだから子供が泣くんすよ!」
「て、めぇ…御幸だな?」
あとでシめるあの野郎…。
「先輩、俺白玉抹茶パフェがいい!白玉いっぱい!」
「おめぇなんざコーンだけで十分だっての!」
「倉持くん、後ろの子が怖がってるから!」
「ぶっ………!!」
「………」
沢村め、あとでシめる…!
やっと店番が終わった…。なんでこんなに疲れるんだ…。
最後の方は沢村に子供が群がって幼稚園みたいになってたし。和ましかったけど、なぜか傷つく。いやもともと目付きは悪いけど!初対面にはガン飛ばす癖あるけど!
「先輩、お腹すいた!」
「おー…」
あほは元気だなー。
「先輩、疲れた?」
「んーもう俺接客とか二度とやらねぇわ。客来なくなる…」
「へへっ、それがいいっすね!」
「なんでそんな嬉しそうなんだよばか」
「えーだってさぁ…」
そう言ったきりなぜかうつむいて黙り込んでしまった。顔を覗き込んだら真っ赤で、こっちまで面喰らう。
「……?おい、」
「先輩、あんまり笑っちゃダメっすよ」
「は?なにそれどーゆう」
「なんでもない!カレー買ってきやす!!」
引き留める間もなく走っていってしまった。
だから俺もカレー食うんだっつの。
走ったら追い付けるけど、どうせ会うし、人多いし、疲れたからのんびり進む。それにあの様子だときっとあいつは言わない。
あれ、戻ってきた。
「どした?」
「…やっぱ一緒にいく」
「なんだそれ」
戻ってきた沢村はまだ顔が赤くて、けどなんか不満げだ。
「なにすねてんだ」
「すねてねぇし」
「タメ語」
「すいやせん」
「ちゃんと言わねぇとわかんねぇよ」
二人なんだか微妙な空気になったまま、席についてカレーを食べる。
「…先輩って影でモテてるのしってます?」
「は?」
カレーを二口食ったところで黙りを決め込んでた沢村が口を開いた。
「見た目怖いけど運動できるし実は優しいところにギャップ萌え!らしいっす」
あぁやっぱり見た目怖いと思われてんのか。
「はぁ…で?それがどうかしたのかよ」
「…いやっす」
「なにが」
「先輩がモテるの、いや」
眉根を寄せて口いっぱいに沢村がカレーを詰め込む。
これはもしやヤキモチ?と思うとにやけが止まらなくて。沢村が下を向いていて良かった。
「そんな自覚はねぇけど」
「写真撮られてた!」
「え、まじ?」
「まじ!そんなん嫌じゃないっすか!笑ったらもっとファン増える!」
勢いよく顔をあげた沢村は、少し泣きそうな不安そうな顔をしてこちらを恨めしげに見てくる。
「あんたなに笑ってんだ!です!」
「ごまかしても駄目だ」
「いひゃい」
あーぁ、バレたか。まぁいいけど。
鼻をつまんでひっぱると、沢村が寄り目がちに抗議する。
「なぁ沢村、ヤキモチやいてんのお前だけじゃねぇから」
「ふぇ?」
「俺なんてしょっちゅうだからな。だからたまにはお前も妬けばいいんだよばーか」
俺の言葉に思いっきり不満ですとでも言いたげな沢村。けど事実だ。こいつは老若男女に人気がある。俺が目を離した隙に変なおっさんに連れていかれそうになったことも。俺はそれなりに苦労してると思う。
「まぁでもなんだ、今日は帰ったらいっぱい甘やかしてやるから、」
「から?」
「せっかくのイベントだし、拗ねてる場合じゃねぇだろ」
きょとんとしたあと、いつもみたいに元気に笑って、それもそうっすね!と言った沢村が可愛かった。
から、福神漬けをやった。
「先輩、嫌いだからってさりげなく福神漬け置かないでくださいよ」
「嫌いじゃねぇよ苦手なんだよ。俺からの愛だと思え」
「絶対違う!」
end
無駄に長く…orz
まったくいつも文が安定しない…
倉持はこっそりひっそりモテてそう(希望)
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