Frisk
さらさら。
「先輩、」
よしよし。
「先輩、そろそろ止めません?」
先輩が頭を撫でる。
「んーまだ」
風呂からでて髪もそのままにいたらきちんと乾かせと言われた。世話焼きな先輩はしてやると言ってくれて、ドライヤー片手に俺の髪を乾かしてくれた。
それから、ずっと。
ずっと頭を撫でられている。
手つきは優しいし、別に嫌って訳でもない。どちらかと言えば、珍しく先輩が寄ってきてくれたので嬉しくて仕方がない。つまりどうしていいかわからないしそろそろこっ恥ずかしいので止めてくれませんか!
「先輩、もう眠いから」
「ふーん…」
「………」
先輩は二人きりの時、話を聞かない。付き合ったばかりの頃はそれがひどく寂しかったし、嫌われているからだと思っていた。
けど最近、それが気を許しているからだとわかった。だから俺といるときは気ままに過ごしていて、いつもの活発な先輩じゃない。のんびりしてる。
でもべたべたはしない。
だから珍しいのだ、これは。対応に困る。
「先輩、ゲームしやすか?」
「飽きた。お前弱ぇし」
また髪をなでなで。
男の髪を撫でてなにがいいのか。きっとこれはスキンシップなんだろうけど。
「沢村、―――」
「………え?」
先輩がなにかしゃべった。ものすごく珍しいことを。
「せんぱ」
「寝る!」
「え、なんでっすか!?」
「眠いからだろ」
もっともな事を言うと、先輩は俺の話に気づかないふりをしてそそくさと梯子を上ってしまった。
「先輩、さっきの」
「早く寝ろ馬鹿」
「俺も、」
気ままなあなた。
end
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