臆病な恋と日常。
※悲恋のはず
胡座をかいて猫背でゲームをしている先輩は日常的に見る。学校の廊下で会ったらからかってくるし、それに対して反発したら技を決めてくるのも日常。
けど今日たった一つだけ違うこと。非日常。それは別に先輩にとったらなんてないことなんだろうけど、俺としては衝撃的で。
ひどくショックだった。
「先輩、彼女出来たって本当っすか」
「あ?うん」
「…好きなんすか」
「好きじゃなきゃ付き合わねぇだろ」
それはそうかと納得してなにも言えなくなった。
黙りこんだ俺を不審に思ったのか倉持先輩がゲームを中断して振り向く。
「…どうかしたかよ?」
「………」
なにも言えない。なんでもないと伝えたいのに、喉の奥からせり上がってくるものを抑えるのに必死で、俯いて耐える。
奥歯を食いしばって眼に力を込める。
「沢村?大丈夫か」
(あぁもうやめてくれ。優しくされると本当にだめだ。)
先輩の手が頭に伸びてきて、俯いて垂れていた俺の前髪をかき揚げた。
それが、その手つきが乱暴なのにどうしようもなく先輩の優しさを感じて、ついに涙腺が崩壊した。
「っ、ふ…うぅ」
「おいどした!?」
止まらない。迷惑かけてるのはわかるのに全然止まらなくて、情けない自分にまた泣けてきてしまった。
「大丈夫か沢村…」
先輩もどうしていいのかわからないようで。
次々出てくる涙をティッシュでぬぐってくれる。
「先輩、」
(好きです)
心の中で呟いた。言いたくてもずっといえなかった言葉。これからも言うことはない。
言ったらきっと困らせて、でも叶わないから。
(結局は自分が傷つくのが嫌なだけなんだな)
とりあえずずっと拭いてくれている手を止めて、大丈夫と伝えた。
「ちょっと増子先輩のこととか思い出しちゃって…」
「?そうか…」
納得してくれたかどうかはわからないが、安心してくれたようだった。
「まぁ増子さんは学校で会えっから」
「そうっすよね…」
「うじうじしてんじゃねぇよ沢村ぁ!」
思いきり背中を叩かれてむせたが、笑った顔はいつも見る日常だった。
「ヒャハハ!元気出せって!」
この恋は叶わない。
わかっていた。自分の男気の無さに自己嫌悪にもなった。好きにならなかったらよかったと何度思ったことか。諦めよう忘れようと思うことを何度諦めたことか。
いつまでも好きで、きっとそれは変わらない。
この人が俺の気持ちに気づく日もきっと来ない。
それが、日常。
(どうかずっとこのままで)
臆病な俺を許して
end
悲恋を書いてみたがハッピーエンドにしたいなやっぱり
希望あれば書こうかな続き
うーん、(´・ω・`)
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