雨も好きなんです
ぽつり、ぽつり。
5月に入った。地球温暖化などと言っておきながら、梅雨は通常運転。
ここ3日、いつまでたってもグラウンドで練習出来ないことに、青道野球部一同は苛立っていた。
特に沢村が。
ついさっきも、無理にグラウンドへ行こうとしたところをクリスに注意されてふてくされている。そこを御幸と倉持に見られ、二人は当然の事ながら爆笑した。
「投手なんだから肩冷やす真似すんなよ」
御幸にも注意されてさらにふくれる。
「つかお前溜まってるからってオーバーワーク気味だぞ」
倉持の指摘にうっ、と声を詰まらせる沢村は自覚があるようで。
目を泳がせて俯いた。
「……グラウンドで…練習してぇ…」
ぽつり、ぽつり。
沢村がこぼす。皆を代弁して。
「んなこたぁ皆思ってんだよ。てめぇだけ勝手なことすんな」
倉持の厳しい指摘にさらに顔を俯かせた。
自覚があることを指摘されるのはキツい。自分がいかに勝手で子供かを痛感する。
(駄々こねるとか…)
気づいてさらに落ち込む沢村に、倉持の救いのような、戒めのような。
「お前はうちの大事な戦力なんだからよ」
もっと自分を大事にしろ、そうダメ押しされると、もうなにも言えなかった。
「倉持は相変わらず過保護だねぇ」
「あー今すげぇ眼鏡とか割りたい気分」
御幸と倉持が冗談ともとれない言葉を交わす。
ぽん、と肩を叩かれて顔をあげると、クリスがなんとも言えない穏やかな表情で言う。
「あんま心配かけるなよ。御幸はともかく、倉持はああ見えて心配症なんだから」
はい、そう返す沢村に、クリスが穏やかに笑って。
「恋人に心配かけたらだめだろう?」
そう言って歩き出した。
返す言葉を見つけられないまま立ち尽くす。姿が見えなくなって顔が火照っていることに気づいた。
「おい沢村!練習戻るぞ」
呼ばれて反射的に振り返ると、倉持とばちりと目があって思わずたじろぐ。
「あ、あれ。御幸せんぱいは?」
「逃げた」
「そっすか…」
二人ほぼ同時に歩き出して屋内練習場に向かう。
なんとも沈黙に耐えれなかった沢村が口を開く。
「あの、すいやせん。俺わがままいって…」
何となく立ち止まった沢村に合わせて倉持も足を止めた。訝しげに沢村を見つめる。
「今さら?」
「え、」
「お前いっつも自分勝手じゃん。わがままじゃなくて、自分勝手」
意味がわからずに首をかしげると、倉持が仕方がないとでも言うように喋り出す。
「人の悩み事増やすなってんだよ。部活でも学校でも」
ますます意味がわからないと言った様子の沢村がに痺れを切らした。
(ったく、こーゆうとこ)
「ほんと鈍い」
言った途端に沢村の右手をひっぱって走り出した。
目指すは人のいない物陰。倉持が選んだのは割と近くにあった用具庫。
無理矢理に押し込まれて沢村が慌てる。
「ちょ、なんすか!誘拐っすか!?犯罪っすよ!!」
「うっせぇ!いいから入れよ!!」
しぶしぶと言ったようすで沢村が中にはいった。
途端に抱き締められて心臓がはねあがる。
倉持のスキンシップはいきなりだ。本能のままに、抱きつきたいときに、キスしたいときに、したいときにする。
今も。
「せんぱい…?」
「お前はいろいろ鈍いんだよ!俺の許可なしに誰彼構わず触らすなってんだ!てめぇは俺のもんだろうが!」
倉持の思いもよらない言葉に思考がついていかない。
(これは、あれか?嫉妬…か?)
こそばいような感覚が沢村をおそう。と同時に嬉しさで顔がにやけそうになるのを、口を引き結んで耐えた。
「…へへっ」
耐えきれずに沢村が声を漏らすと、すかさず足のすねに倉持が蹴りを入れた。ちゃんと手加減がしてある。
「わかってんのかよ」
「はい…」
「…すきだ」
「…あの、言うときは予告してもらわないと心構えができてないので、あの、……………うれしい、です」
「ひゃは!そうかよ」
そう言って沢村も倉持の背中に腕を回した。
「先輩、明日は晴れますかね?」
「わかんねー。晴れるといいけど、まぁ」
「屋内練習もよくね?」
end
いやー中途半端な…すいません。
なんか無理でしたよはい。とりあえず倉沢が好きです∠(`・ω・´)キリッ
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