のらりくらりと進もうか






沢村はいまだに慣れない。
キスしようとしたら条件反射で逃げようとするし、冗談でも服に手を突っ込んだら顔面に拳を食らいそうになった。
俺のことが嫌なのかとも思うけどそうではなく、単に恥ずかしいらしい。


まぁ、んなこた俺に関係ないけど。


「ちょ、せんぱい待って!まじで、落ち着いてって…!うぁっ」


服の裾から手を入れて腹をくすぐる。程よく筋肉がついてるけど、まだまだ華奢だ。
上にいこうとする手を沢村が必死に押さえる。

「邪魔」

「こ、これ以上は…!」

「これって…。そんなに嫌かよ。」

「ち、ちがいます!恥ずかしくて…!」

身じろぎする沢村は確かに恥ずかしそうだ。
耳まで染めてる。

「恥ずかしくても俺のこと好きなら我慢できんだろ」

卑怯だとは思うが、こっちだって我慢してやってんだ。たまにはいいだろ。



さっきので幾分おとなしくなった沢村をそのまま押し倒す。

「せんぱい、」

「…泣くほど嫌かよ」

「嫌じゃなくてっ、こ、こわ、い…から、」

「から?」

「ゆ、ゆっくり…してください…」


そう言うと、いつものように沢村が腕をのばして絡めてきた。俺の首に。

ぎゅぅっと抱きつかれる。少し手が震えてる。


期待と、不安に。



「沢村、それじゃできねぇよ。」

少し無理矢理に腕を外して顔をのぞく。

泣き顔も好きだけど、どうせなくなら気持ちよくて泣いてほしい。

まぁ、こいつはそれを怖がってるみたいだけど。
自分が快感によって自分らしく無くなりそうになるのが怖いらしく、気持ちよすぎて辛いときはいつも「もうやめて、」って切な気な声でなく。


頬に手をあててしっかりと目を合わせる。

「せんぱい…?」

「沢村、気持ちよくなんの、そんなに怖いか」

「…怖いっす」

「俺はお前と気持ちよくなりたいんだけど」


言いながら顔中にキスをしてやる。いちいち跳ねる肩がおもしろい。


「…俺だって…先輩に喜んでもらいたいし、ほんと言うと、き、キキキスだって!もっとしたいし!したいって思った時に自分からできるぐらいになりたい、けど!」

「お、おう…?」


「恥ずかしくて死にそうになるし!無意識に突っ張っちまうし!自分でも情けないって!女々しいって、おも…!っく、うぅ…!」


………なんだこいつ、ちゃんと俺としたいって思ってたのか。意外だ。





つか、反則。


「わりぃ沢村、今のキタ」


「…?、ひゃあっ…!」


べろ、て耳を舐めたら沢村が変な声を出した。


「まままって!心の準備が!って、んぅ…!」


いつまでも往生際が悪い口を舌をねじ込んで塞ぐ。 歯列をなぞって上顎をくすぐると、沢村の腰が跳ねた。

「ふ…ん、んん!」

ぎゅっと目をつぶって耐える姿がどうしようもなくそそる。

ちゅ、と下唇に吸い付いて離すと、沢村が肩上下させて酸素を取り込んだ。


「沢村、触っていいか?」

「…俺に拒否権なんか無いくせに」

「ひゃは!お前よくわかってんじゃねーか!」


がしがしと乱雑に頭を撫でてやると、いたいっす!なんて言いながらも嬉しそうにするもんだから、こっちまでなんだか嬉しくなってしまった。


「倉持先輩、」

「なんだよ」

「好き、です」


言ったあとで俺の肩に顔を埋める。


「ひゃはは、俺もだ」


ひゃははって沢村が笑った。


どちらからともなくキスをした。






end





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