お酒









…………なんだこれ。










「んー…あー…むぅー……」


なんだこれ、ってなんだこれ。いやいや、これ本当になんだこれ。


「せんぱい、だいじょう「うるっせぇ!さわむらぁあー」


あぁ…ダメだこの人。
完全に酔ってる…。



高校を卒業して俺は大学2年になった。
もう少ししたら忙しくなるし、今日の練習試合の反省やらなんやらを兼ねて、野球部で反省会と言う名の飲み会が開かれた。
俺はまだはたちになってないから、食事会気分で参加だ。
もちろんそこには大学3年になる倉持先輩もいるわけだが。


かなり酔ってる…!いや、酔い潰れてる…!!


てなわけで、さっきから抱きつかれているんですが…。











緊張して死にそうです!!




酔ってるからたぶん無意識なんだろうけど、俺の肩口に顔を埋めてくるのがもうなんとも言えない。眠いのか酒なのか、すごく体温が高い。

こんな先輩はめったにないから正直嬉しいし、できれば動画に納めてやりたい。けど、こんなに近いの初めてで……どうしたらいいんでしょうか!?
いや、どうしよう?


俺らは先輩後輩の付き合いは5年目ぐらいになる。けど、恋人としての付き合いはまだ1年にも満たない。

告白は俺からだった。
先輩が卒業してからしばらくはどうにも吹っ切れなかった。きっと同じ大学を選んだのも無意識に追いかけていたからだと思う。
大学受かってからは、部活を通じてまた絡むようになった。だから前に感じてた寂しさはなくなってた。
けど、ある日女の人と歩いてる先輩を見て、前みたいな寂しさによくわからないもやもやがまざって、どうにもできなくなった。
それがなんなのかわからなくて、考えすぎて知恵熱も出た。
もう一杯いっぱいで、なんとか、なんとかこの気持ちを伝えた。

「え、なにそれ告白みてぇだな」

「こく、はく…?」

「だってそれってやきもちだろ?俺のことが好きって言ってるように聞こえんだけど」

「………!」

顔が熱くなるのがわかった。と同時に納得した。


そうか俺、倉持先輩のことが好きなのか。


そっからはもう堰が切れたみたいに告白しまくった。

「せんぱい、すきっす!あの、えっと、すきっす!だから、好きだから、えっと、えーと…」


「ひゃは!なんだよお前」

「えーと、だから、


俺のことも好きになって欲しいっす!」


「………いいぜ」


「えぇ!?まじで!?」


まさかの返事に驚きが隠せない。ちなみに自分が今言ったこともよく理解できない。
好きになってくれって言って、良いってことは、


それはつまり、先輩も俺のことが好きってこと…なのか?


「ひゃはは、驚きすぎだっつの」


「だって!き、気持ち悪いとか、思わねぇんすか」

「そう思ってないからいいっつったんだろーが、アホか」

「うっ、アホとは失敬な!」

「はいタメ語ー」


「いだっ!!」


久々のチョップに見せかけた瓦割に頭を押さえる。さすがお兄さん直伝。


「せんぱい、」

「あ?」

「あの、いいってことは、俺と、その、こここ、恋人になってくれるという…」

「ひゃはは!お前どもりすぎ!」

「………」


「なってやるよ」


「!ほんとに!?やった!」

あれ、でもあの人は?

「どした?」


「あの、いつも一緒にいる女の人は、いいんですか?」

「?……あーあれか。いいんだよ、てか付き合ってねぇし。」

「え、じゃあなんで手とか繋いでたんすか」


「あ?それは勝手にあっちがしただけだし。」


「じゃああの人は先輩の何?」

「セフレ?」


「セフ…えぇ!?」


セフレってあのセフレだよな?セックスフレンドの…。

「沢村!?」

「はい?」

「何泣いてんだよ」

「え…」



ほんとだ、泣いてる。何でだろう、なんで泣いてんだろう。なんで…。


「せんぱい、その人といろいろしたんすよね?」

「まぁ、そりゃなぁ」

「俺、それいやだ。なんか、なんか先に先輩を知られたみたいで、嫌だ…」


「っ、おまえなぁ…」

「先輩、ほんとにその人のこと好きじゃない?その人も先輩のこと好きじゃない?」


「あたりまえだろ」


「もうその人とそーゆうことしない?」


「しねぇよ。そのへんの常識はあるつもりだ」


そういって頭を撫でてくれた。いや叩いてくれた?ぽんぽんって。







それっきり、特に何もないまま現在に至る。




「先輩、重いっす!」

「あー?うるせぇさわむらー。てめぇは俺のまくらだろーが」


そう言うとさらにのし掛かってきてほんと重い。
酔ってる人は遠慮がない。

「先輩、倉持先輩。もう帰りましょう。俺送ります」

「んーまだのみたい…」

「アホか!」


「タメ語すぱーりんぐぅう!!!」


「ぐぇっ!」


変な声が出てしまった。てかなんでこんなときだけ正気に戻るんだこの人。
そしていつも通り遠慮がない。


するり。


また首に抱きついてきた。さっきの技の時と違って、頼りなげで、優しく抱きついてくる感じに体の熱があがった。


「せんぱ「沢村、」



「―――。」



「………!!」




思わず俺も先輩の肩口に顔をうずめてしまった。









「あれー?あいつら抱き合って寝ちまってんぞ」

「身体痛くなるぞー」

「写メれ写メれ!」












(こんな顔みせれねぇ…)








end



泥酔もっち。
明日には全部忘れてっけど、沢村は覚えてるので1週間くらい挙動不審になる予定。




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