学生戦争 | ナノ


▼ おめでとう

【凛帝】

「そうだ、今日僕誕生日なんだよね」
「そうか」
「それだけ?」

いきなり凛から電話がかかってきたのに吃驚しつつもいきなり告げられた彼の誕生日。
ーーなにかしてやりたい。でも、素直じゃない俺はあいつに「おめでとう」の一言も言ってやれない。

「任務終わったら、そっちいってもいい?」
「…別にいいけど。少し出かけるから鍵は開けておく」
「どこに行くの?」

凛は必ず俺が出かける時は内容を聞いてこようとする。
昔はよく、浮気もしたし他の奴と寝ようともした。でも、凛が悉く邪魔をしてきたために実現はしなかった。し、今はもう凛しか俺は眼中にないーー

「黒軍の知り合いのところに行ってくるだけだ」
「そう?じゃあ、部屋で待ってるね〜」

電源を切ればさっそく立ち上がりパーカーを羽織り部屋を出た。
もう街は夏も過ぎ去り、秋も半ばで冬が刻々と迫っているのかパーカー一枚では足りなかったようだ。

手をすり合わせ寒さを誤魔化しながらも街中のショップを見て回り、せっかくあいつの誕生日だ。何か、贈りたい

「…凛に、合うもの…」

ガラス張り越しに見る商品はどれも桁外れに高いし、学生の身である帝には手が届かない品物だーー

「…り、んに…」

幾ら見て回ってもやはり高価なものばかりで到底手も届かない。 街の中を見ればカップルも居るわけで仲睦まじ気に手をつなぎ歩くカップル。 別にこうして凛と歩きたいわけじゃない。
たまに、不憫に感じてるんじゃないかと思うときがある。男同士だから祝福なんてされるわけない。

「…指輪は、あるし。あとは何を…」

首のチェーンに揺れる指輪を見ながらもため息をついた。 自分からやれるのなんて無いんじゃないかと思い始めたーー

凛の喜ぶものとは…?

いや、わからない。

「…適当に買うか」
雑貨店に入りながらもまだふつふつと帝は考えていた。どんなものを贈ればあいつは喜び笑顔を見せてくれるのか、を。

「…これに、しよう」

手に収まる物に決めては薄く笑いながらもそれは対になるもので、店員にラッピングを頼みながらも嬉しみを感じながら店を出た。

きっとこれならーー…


早く早く、凛に会いたいと思いながら早歩きで自分の部屋へと戻れば其処には凛がいた。

「…寝てんのか」

靴を脱ぎながらもソファの上でうたた寝をする彼に気がついては薄く笑いながらも近寄る。
任務で疲れてるのに、自分に会いに来てくれる彼が、愛おしい。
余り、自分からは言わないし、言おうともしない。 いうのが余り、好きではないからだ。

「…凛」

肩を揺らし起こそうとするも起きない凛に呆れながらも笑い、自分の愛用している赤いパーカーを彼に掛けてやる。 せめても風邪は引くな、と。

「…いつ渡そうかな」

ぶつぶつと独りごちりながらも手の中にいるプレゼントを持て余す。
ぶつぶつと独り言を零す帝を凛は抱き寄せた。

「帝〜。おかえり」
「…ちっ、起きてたなら言えよ」
「起きてなかったよ。さっき起きたの」

眉間にしわを寄せて、不機嫌オーラ全開にした帝に凛は微動だにせず首に擦り寄る。
そんな凛に帝は呆れのため息を吐きながらも許してしまう。これも、惚れた弱みか。

「ん、凛」
「…なにこれ?」
「お前誕生日だろ。プレゼント」
「い、いいの?!」

手に収まる物とは、対になるピアスだ。彼はピアスを好んでいるらしにく耳にはたくさんのピアスが付いている為にこれがいいのでは…?と帝なりに試行錯誤した結果だ。

「でも、帝はピアス空いてないんじゃなかったの?」
「さっき開けてきた」

そう、さっきーー
トイレでピアッサーで開けてきたのだ。左耳を見せれば初めて開けた為に赤く仄かに腫れ上がる耳朶に凛は薄く笑う

「僕のため?」
「…あんたとお揃いに、したかったんだよ。言わせるな」

今度は帝から擦り寄る。ぽつりぽつりと話す彼に凛は笑いながらもこれ以上の幸せな誕生日はないと思った。

「…好きだよ、帝」
「俺も、好きだ」

目を閉じて、帝の唇に噛み付く様にキスをした。一番の愛を込めた口づけを。

「ん…っ、ん!…ふ、っ」

目を閉じてる帝だったがひとつの違和感に気がついた。 服の隙間から手が侵入し、身体を撫でているのだ。

「お、い!」
「ほら、久々だし、ね?」

にこにこと笑う凛に帝はため息を吐きながらも首に腕を巻き付けては笑いながら

「愛せよ」

と呟いた。きっと、彼はやっと至福と思える、そんな相手が見つかったのだろうーー




fin.
【後日談】
「なんで僕に言わないで開けたの?」
「言うも何にもねーだろ」
「帝の初めて見たかったー!」
「俺の初めてなんてねーよ!…まあ、前も後ろも初めてじゃ」
「それは言わないでよ!僕の初めては帝が(もごもご)」
「今がいいんだから、もういいだろ」




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