▼ 初心者向け料理本
初 心 者 向 け 料 理 本
「真琴、なにこれ?」
「なにって、卵焼き?」
「凄いまずいんだけど」
「そう?俺は美味しいと思うよ?」
今日は真琴の料理当番の日で、しかし目の前に置かれた真琴特製の料理は見た目は完璧な卵焼きで、プラス味噌汁と焼き魚、白米と至って普通ではあるが一番問題は味だ。
なにこれ。すごい塩味するし後味がなんか、よくわからないし。
「なにいれたの?」
「塩」
「は?」
なに?と言わんばかりに食べている真琴に綾は少しにらみながらも、真琴の様子を見てははあ、とおおきなため息をつくしかない。
今の真琴になんやかんや言ったところで通じないだろうと思った綾は卵焼きを食べるのを諦めては魚に手をつけようとしたら、箸が刺さらない。
普通焼き魚は焼いてるし、柔らかくなってるはずだからこんなに箸が刺さらない事はないはず。
ぶす、ぶす。
...何この魚...
真琴、どうやったら箸が刺さらない焼き魚なんか作れるの?
パッと見完璧なのにもしかして料理できないの?
「真琴、魚」
「美味しいでしょ?俺の自信作だよ」
「でも箸が刺さらない」
おかしいなぁ?と笑ながら真琴は魚を突っつくも真琴の魚もやはり箸が刺さらない。
もしかしたら味噌汁も?と薄々気づいた真琴の料理音痴に知らぬふりをしながらもお椀を持っては口に寄せながら味噌汁を飲んでみればやはり。予想的中
「...味、薄すぎ」
「濃すぎると、体に悪いか...」
「これは薄すぎるんだよ!!」
ダン!と机に置いてはきっと真琴のことを睨む綾だったも、起こったところで意味が無いとまたため息を零しては真琴から呑気に「ため息つくと幸せ逃げるよ」の言葉が聞こえてしまえば更にぶち、と血管だ切れた気がした。いや切れたよ、絶対。
「ごめん、ヘタクソで」
「...大丈夫」
「優奈に教えてもらうから、今度は少しましになると思うから、ね」
優奈?誰そいつ?
渋々とご飯を食べていればいつの間にか食べ終えながらも突然真琴の口から出てきた優奈と言う俺の知らない人の名前に思考を巡らせ、誰だっけと考えるもわからなかった。
でも、なんか、聞きづらいし...
悶々と考えているうちに食べていた食器の後片付けを終えていた真琴はソファに座りながらのんびりお茶を飲みながらテレビを見ていた。
ジジイかよ...
むっすりとしながら綾は真琴の隣に座りながらいつ優奈って誰?と聞こう。チャンスを伺うも全くチャンスがない。
「そう言えば、明日優奈と一緒の任務だけど綾もくる?明日フリーでしょ?」
「...優奈て、誰だ..」
綾は視線を伏せながらもモヤモヤとした気持ちが押し込めず小さく零すように真琴に問い掛けてはそっと、真琴のことを見上げた。
そいつ、誰?と、綾は真琴にきく。
小さく笑った真琴は携帯を出しながらなにやら画面をスライドし何かを探しつつも話を紡いだ。
「優奈は俺の妹。ほら、似てるでしょ?確か、綾と同い年だしどっかで会ったことあるんじゃない?」
「あ、妹か...。会ったことないし」
「俺、女は嫌いだし」
妹はずっと一緒だからね、と小さく笑ながら話しては項垂れてるように見えた綾をぐっと抱き寄せながらも、好きなのは綾だけと囁いた。
明らかにしょげてるし、綾。
意地悪もしたくなるけど、意地悪してへそ曲げられたらたまったもんじゃないしなあ...
髪の毛をゆるく触りながら同じシャンプーの香りに少し優越感を感じる。
頬に口づけを落としながらも、今日こそはと押し倒そうとしてみれば
「真琴、これ」
「なにこれ?」
「俺の料理本貸すからもう少しマシになって」
「...あ、うん」
渡された本を捲りながらも今日は無理かぁ...と少し落胆しては、本を持ちながら部屋に戻ろうと踵を返した。
くい、
服の裾を引っ張られるのに気がついては振り向けば俯きながら引っ張る綾の姿に俺は目を見開いてしまった
いつもは何も言わないでおやすみだけなのに、と。
「た、たまにならいいけど」
「じゃあ、俺の部屋に行こう」
ほんと、素直じゃないなぁ
笑をこらえきれずに笑いながらも綾の手をつかんでは自室へと連れていきつつもきっと今日は寝かせてあげれないなぁ、と思いつつも声には出さず。
「綾、今度は美味しいの作るよ」
「期待しないでおく」
「なんか夫婦みたいだ...いで!」
「早く連れてけよ」
あ、すごい耳真っ赤だし...
(俺の恋人は分かりにくいけど優しい子)
fin
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