学生戦争 | ナノ


▼ ジューンブライド3




「あいつまた電話出ねぇし。ほんともう知らねぇ」


何度か電話をかければ出ずに、少し苛立ちながらも携帯をポケットにしまい込んだ。

凛が電話に出ないのは仕方ないことだって頭では理解してる。でも、たまには会いたい時だってある。


「家に帰ろ」



はあ、と帝は少し大きなため息を零しながらもズレかけた眼帯を直しながらも帰路へと向かった。


「真琴は行くとキレるし、郁は長期任務でいないほんとやることねぇなあ…」



白軍に行けば苦手な弟に鉢合わせするリスクがかなり高くなるから行きたくないし…



っと、ぶつぶつ考えながらも気が付けばもう自宅前までついてしまった。
ポケットにいれていた鍵を使い開ければ中に行った。

いつも、思う。ただ、布団と冷蔵庫しか置いていない殺風景な部屋に。


「なんにもねぇ、部屋だよな。ほんと」


家具を増やす気にはなれない。
パーカーを脱いではそこらへんに投げ捨てて、ワイシャツからTシャツに着替えては布団に寝転んだ。


「寝れば、なんとかなんだろ」



首のチェーンにつけていた指輪を眺めつつも小さくため息をこぼす。
あの時、もらった時は嬉しかったけど俺なんかがもらっていいのか、とも思った。

考えても切りがない。ねる。









□□□□□□□□



「あれ、帝電話に出ないし」


首をかしげつつも、携帯をしまい込んだ。
帝から着信が二件来ていたものだから急用だったのかな?とも思ったけど、折り返しかけ直してみれば出なかったのでそこまで用事はなかったんだろう


暫く会えなかったから、会いに行こう


ふふ、と凛は笑いなが らあとの任務のことは仲間に頼み、自分ひとりみんなとは違う方へと歩いていった。


今日はちょうど六月の半ば。
すこしじめっとした気温が嫌だなぁ、と思う季節。
または、女子にとってはいいジューンブライド、てやつなのかも


ふふ、ちょっとした考えが僕にはある。





ーーーーーーー





ガチャガチャ。

「あれ、あいて、る?」




帝の家の前までついて、ドアノブを回してみれば空いてしまった。
中を覗いてみると、いつも帝が履いているスニーカーがあったから中にいるんだとはわかる、でも…


「鍵かけないのは不用心すぎだよ」




そこもまた彼らしいのかも、と小さく笑いながら靴を脱ぎ中に入れば、部屋の片隅で布団を敷いて寝ている帝を見つけた。


「あ、眼帯してない」



珍しい、とまっすぐに切りそろえられた前髪に触れながら小さく笑いを綻んだ。



「帝、起きて」


すこし肩揺らして起こしてみるもそれは無意味なのか眉に皺を寄せてはん、うるせぇとぼそぼそ言うだけであまり意味は無いみたいだった。



「なら、僕も寝ようかな」




寝やすいようにと上着を脱いでは持ってきていた荷物のそばに置いては少し空いたスペースに潜り込んだ。
帝のことだ。起きればなんでいるんだ!って怒られそうだけど、ちょっとだけなら、いいよね。




凛は小さく笑いながら、空いたスペースに入り込んでは少し涎を垂らし滅多に見せないアホ面で寝ている帝を抱きしめては、目を閉じて眠る。















あれ、なんか、あたたけぇ?
でもなんか、いい。
俺の一番、好きなにおいする。




それに擦り寄りながらもまだ眠い、とうとうとしながら小さく目を開けば最初寝ていた時とは全く別の風景があった。


不貞腐れて、もう嫌いだとか寝る前にぶつぶつ文句をぶつけていた相手が今目の前で、寝ている


帝は夢でも見てるのかはたまた俺の頭がおかしくなった?と少しのプチパニックをおこしていた



「り、ん?」

ほっぺを触ってみれば柔らかい


「本物か?」


頭を触れば、くせっ毛で触り心地がとてもいい



「やべ、こいつ起きる前に目隠したい…」



寝る前どこに吹っ飛ばしたっけ、と眼帯を探そうと布団から出ようすれば、ぐっとなにかに引き寄せられた


まあ、言わずともがな、なんだけどよ




「おい、凛」
「おはよ、帝」

「はなせ。邪魔だ」

「なんで?」

「まだしてないから」



家族以外に片目を見せるのを極端に帝は嫌う。
凛がなんで?と聞いてもありもしないことではぐらかされ、かわされる。

凛は帝のことを抱き締めながらもすこしうたた寝を繰り返す




「つーか、なんでいるんだよ。」



帝はなんとか眼帯を見つけて片目につけながらも少しイラついていた原因の相手に話し掛ける


凛はん、とか眠い、しか言わないのにじれったく感じるが、



「さりげなく乳首触んな」

「あ、バレた?」

アホか、と乱された服を直しながらも彼の手から逃れ体を起こしてはぐーっと背伸びをした



「帝に言いたいこと、あってきたんだ」

「言いたいこと?」

「うん」



にこっと、笑う凛に帝は疑わしげに見ながらも、左手出して?と言われてしまえは渋々と手を出す



「ほら、六月でしょ?今」

「あー、そうだったな」

「六月はなにがあるかわかる?」



六月?と考えてみれば昨日、司と会ったときにお兄ちゃん、ジューンブライドだよ!!とわめき散らかしていたのを思い出した。

女はそーゆうイベントは大好きだからなぁ…と、思いつつも彼の方をちらりと見据えた


「ジューンブライド、だろ?」

「正解だよ。帝が知ってるとは思わなかった」

「つか、じゃなくて妹が言ってたんだよ」



凛は小さく笑いながらポケットに忍ばせていた小さな赤いリボンを取り出しては帝の左薬指に巻き付けた



「ほら、これで帝は僕のものだね」


「あ?」




帝の結びつけたリボンに小さく口付けて、小さく笑いながらも

ただの、遊びごとかもしれない
ただの、口約束かもしれない


それでも、約束することに意味があるんだ、と思う





「お前には、俺じゃなくても、可愛い女の方がいい」

「帝」

「俺は、尻軽いし、性格わりーし」




手を引こうとするもがっちり凛に握られていて無理だった



俺だってずっと一緒にいたいと思うけどきっといつか壊れるに決まってる


俺から壊す前にいっそ離れた方が凛にとっていいし、



なによりもあいつは子供が好きだ
俺は生んでやれないから




「子供、産めねぇしな。だから、別れ」

「僕は帝が好きだから言ったんだよ。そんなの気にしない」


ぐっと抱き寄せては顔を寄せ、ちゅっ、と唇に口付けては小さく言葉を紡いだ

伊達に長いあいだ付き合ってたんだ
帝の嘘ついてる顔はなんとなく見抜けるようになった





「帝、僕じゃないと満足出来ないくせに」
「それはおめーが!!…ってうるせぇよ!」


真っ赤になりながら睨むもそれは全く効果なし。むしろ煽ってるようにしか見えない



笑いながら、凛はそっと布団に帝のことを押し倒しながらも
見上げる帝の目尻がすこし涙で滲みつつあるのを見ては小さく笑った



「気にしないしないから、僕と結婚して?」

「アホか。仕方ねぇから結婚しやるけど、家事はやらねぇからな」


「うそつき。料理がんばったんでしょ?」



前は使われた形跡ぜろだったキッチンが今は使われた形跡があったし


なによりもの証拠は手に絆創膏が指先だけに巻きついてるのを見ては一目瞭然だ。


手を引き寄せてはちゅ、と手先に口付けた




「幸せにするね」


「しなかったら離婚だから」




ふん!と顔を背きながらも顔は髪で隠れて見えなかったけど、耳が真っ赤になってるのが見えてつい笑ってしまった




「おい、どこ触ってんだよ」

「胸?」

「ふざけんな!おい、やめっ」


ふふ、と笑いながら触りながらもうるさい口に口付けては触れるだけの啄むようなキスを何度か繰り返した。




「帝、ありがとう」






「うっせーよ、ジジイになって別れるいったって別れてやんねぇから覚悟してろ、ばーか」






fin



(椎名兄妹おまけ)
瞬「なにあれ。は?なに。帝は俺のなんだけど。腹立つあいつ」

司「いいじゃない、やっと帝が幸せになれたんだから!たまには祝いなさいよ」

瞬「やだ。あいつが俺よりも幸せになるとか許さないし」

司「はぁ…(歪んだ愛情ね)いいから帰るわよ。あんた任務さぼってると殺されるわよ」

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