▼ やっぱり君じゃなきゃダメなんだ
【遊莉】切甘
やっぱり君じゃなきゃダメなんだ
「好きです」
人生始めての告白だった。震える手を握りしめながら彼に告げれば彼はただ、笑って俺も好きと顔を赤くして答えてくれたのを今でも覚えてる。
「あのころは、幸せだったなぁー…なんでだろ。こうなっちゃったの」
涙を拭っても拭っても止まることを知らない。
そう、昨日ーーー
遊兎が他の可愛い女の子とキスしているところを莉兎はたまたま目撃してしまったのだ。
見たくて見てしまったわけじゃない。でも、莉兎は遊兎から言われると信じて一週間は変わらずきゃんきゃん騒いだりと日々を過ごしていた。しかし遊兎からは何も言われない。逆に、態度がよそくなるだけ
「や、ぱ…莉兎がダメなのかなぁ?」
泣いても解決しないなんて知ってる。けど、どうやって涙を止めればいい?今の私にはわからない。
ただ、昨日彼に借りたパーカーを抱き締めて泣きじゃくるだけ。
「う、ふ…っ、…馬鹿」
あの頃は好きだった。単純に、好きって言えば満足していたのに。
いつからこんなに私は欲深くなったの
遊兎のパーカーを抱き締めれば仄かにまだ彼の香りを残しているパーカーに縋り莉兎はただ泣いている。
そんな最中、莉兎の部屋の扉が空き茶色い髪とピンをしたパーカーの所有者が入ってきたのと同時に莉兎は目を見開いた。
「…ゆ、と…くん…」
「なんで、泣いて…」
「や、やだ…泣いて、ない!!」
涙をふくのすそで拭えば無理やり笑顔を作った。でも、彼にはお見通しの様だったーー
ずかずかと莉兎に寄れば遊兎はすかさずしゃがみこみ頭を撫でながらも問いかけ
「どうしたんだ?泣いて」
「うっさ、い!」
「言わなきゃわかんないだろ?」
だから、聞かせて?そんなに優しく聞かれたら、言いたくなっちゃう
「わたしだけにキスしてればいいの」
なんて言えっこない。遊兎の気持ちまで決めつけて強請るなんて…
でも
「…遊兎くんに嫉妬したの!!キスしちゃやだっ」
告げた瞬間に再び涙がどばっと溢れ出て我慢出来ず彼に縋り寄れば涙でぐしゃぐしゃの顔で口付けた。
あの頃のキスしただけで真っ赤になる彼は居ない。 変わりに嬉しそうに笑ってキスを受け入れてくれる彼がいた
「馬鹿だなぁ…俺は莉兎だけだよ」
「嘘だっ キス、してたっ」
目をきょとんとさせる彼にに莉兎は涙を拭きながらもぐずぐずと花をすすり
「あれは、ごみをとってあげてたんだ。勘違いさせたなら、ごめんな?」
「ば、か…へたれっ」
彼に手を伸ばし抱きつけば思いもよらない真相に目を見開きつつもよかったと眉を下げる莉兎。
それを見た遊兎は困った様に笑えば一番愛してるのは莉兎と史上最高の告白を送る。そして
「…莉兎にしか心は惹かれないんだよ。気づけ」
「!ーー、遊兎く、ん!」
抱きつけば今度は遊兎から口付ける。唇の隙間から舌をねじ込めば怖気る彼女の舌と絡めながらも強く抱きしめるのに莉兎はしあわせそうだった。
「愛してる」
きっとずっと永遠の愛を誓えるだろう。
fin.
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